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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第三章 王都の伝説と最高位魔術師

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第三十八話 最高位魔術師の弟子

 翌日、放課後。


 俺とクルピアちゃんは、コレディッカ先生の研究室に呼び出されていた。


 クルピアちゃんには勿論、ヒーロースーツを着ているように見える変身と変声効果を付与したままだが、こうして二人、公の場で活躍する魔術師の前に姿を現すのは初めてのことだった。


「いやいやァ。驚きましたよォ。まさかプラティエ君が、クルピア先生の愛弟子だったとはァ」


「本当ですね。まあ、お二人が知り合いだったおかげで、連携が上手くいったと思えば、御の字でしょうか」


「そうじゃな。プラティエには助けられたわい」


「えへへ、照れるなあ。そう言えばクルピアちゃんが本気で戦うの、初めて見たかも。めっちゃ強かったです」


「ま、最高位魔術師じゃからのう」


 俺とクルピアちゃんの間には、真理への部分的な到達やら、イロハ・テレジアとしての存在やら、色々と隠すことはある。


 特に「イロハ・テレジア」については、表向きには魔術界を追放されているクルピアちゃんが、魔術界と大っぴらに触れ合うことができるツールであるため、バレる訳にはいかなかった。


 故に、俺は今もクルピアちゃんの姿を隠し、声も変えているのである。


 今まさに呼び出され、これ以上何か隠していることはないかと探られまいかと不安ではあったが、早い話、これが俺とクルピアちゃんのことについては、師弟関係についてのみがバレる、という形に落ち着いた。


 イロハ・テレジアの話は出ることさえ無かったため、その辺りについては心配しなくても良さそうである。


「クルピア・イロア先生ェ。時に、プラティエ君とはどのように知り合ったのですかなァ?」


「ま、同じ地域でたまたま知り合ってのぅ」


「出会った時はかなり圧を感じました」


「アレは……久々の人前じゃったからのう」


「アレを前に、普通に対応するのは難しかったですよ。よく頑張ったと思いませんか?俺」


「うむうむ。アレを乗り越えられた からこそ、今の強い其方が……って、そうもいかんよなあ」


「死ぬかと思いました」


「最高位魔術師に迫られる経ぃ験……得難いものですねェェェ」


「オススメしませんよ、マジで」


 あの時に感じた、クルピアちゃんの圧力。


 あれは間違いなく、最高位魔術師のソレだった。


 しかし、それは絶対に、他人へ勧められるものでは無い。


 アレは、いつもの可愛いクルピアちゃんとは違う。


 最高位魔術師としてのクルピア・イロアは、おそらく《《あちら》》なのだろう。


 そしてまた、俺はクルピアちゃんの本気を見た。


 姿と声を隠しはしたが、あれは間違いなく、最高位魔術師のクルピア・イロアだった。


「それで、クルピア先生。僕のショットガン……見てくれませんか」


「すまぬ、妾は少し現代の魔導具が苦手でのう。ほれより……妾は探究で忙しくてのう。早く帰らせてはくれぬか」


「あァ、すみませェん。……そういえば、彼らには最高位魔術師の一覧を見せる約束をしていたのですがねェ、折角ですし、今見せてもよろしいですかァ?最高位魔術師が立ち会った方が、より《《安全》》だと思いましてェ」


「そうじゃったのか。分かった、プラティエのためじゃ。それが終わったら、帰らせてもらうぞ」


「ありがとうございますゥ」


 それから、俺達はコレディッカ先生の端末を見せてもらい、最高位魔術師の一覧に目を通した。


 そこには名の知れた魔術師から、聞いたことさえない魔術師まで、多くの名前が並んでおり、その中には当然、クルピアちゃんの名前も並んでいた。


 しかし、そのデータベースに記された情報は、作為的に乱されていた。


 正直なところ、クルピアちゃんに関する情報でさえ、どこまでが本当か分からないというのが、俺の抱いた感想である。


 正しい情報が漏れることを危惧してのものだろうが、これではまるで訳がわからない。


 結局、最高位魔術師の一覧にクルピアちゃんの名前が並んでいたということ以外に収穫は無かった。


 ……ただ一つを除いて。


「それじゃ、俺も帰ります。ちょっと一息つきたいので」


「それでは、僕もこれで失礼します」


「えェ、お疲れ様でしたァ。ワタクシも、包帯を巻き直さなければならないのでェ。これにて、お開きとしましょォうかァ」


 それからの俺達が解放されるまでは、思ったよりも早かった。


 俺はクルピアちゃんを寮の部屋へ連れ込み、「(ピカリィ)」と「(ランラン)」を解く。


 それと同時に、クルピアちゃんは自身に「変身(ドドロン)」をかけ、イロハ・テレジアの姿へ変わった。


「いやあ、何とか半分はバレずに済んだのう」


「あの吸血鬼、いらんこと言いやがって……」


「そうじゃな……まさか返信しててもバレるとは。妾の術故、かのう」


「ま、アレほどの魔術を使えるのはクルピアちゃん以外に数少ないでしょうし。《《魔術バレ》》もしようというものじゃないですか」


「そうかのう。ふふん。……そういえば、プラティエよ」


「何ですか?」


「ナルカと戦っていた時……其方は妾に『(ピカリィ)』と『(ランラン)』をかけながら、『(モエーロ)』も放っておったな」


「はい。……それが何か?」


「気になったんじゃよ。無理はしておらんかったか?」


「ええ、特に大丈夫ですよ」


「そうか。……いやなに、魔術師の中でも、三つ同時に魔術を使える奴は多くないからのう、其方はやはり、一年生にしては破格の実力だと思っただけじゃ」


「へー、そうなんですか」


 言われてみれば、自動魔術も基本的に二つまでしか同時に使えないようになっている。


「やはり師が良いんじゃろうな」


「間違いないですね」


「そこはツッコむとこじゃぞ」


「えー、だってそうなんですもん」


 俺はクルピアちゃんの頭を撫でながら、そのまま布団へ潜り込む。


「……む、今日はやけに積極的じゃな」


「へへ……。クルピアちゃんが無事で良かったなって、思いまして」


「そうか。……今日は一緒に寝るか?」


「そうさせてください」


 そしてこの日は、そのまま二人、同じベッドで眠るのであった。

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