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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第三章 王都の伝説と最高位魔術師

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第三十七話 地獄の魔術師

「【血壁(ブラッダ)】」


「【海地獄(ヘルグド)】!」


 クルピアちゃんは詠唱を省略し、小規模な魔術を細かく使う。


 これも手動魔術の使い手らしい、自由な魔術の使い方である。


「今でェす、【編み編み(ウィッカー)……!」


「【血の武器庫(ブラッダ)】。ちょっと静かにしていて頂戴ね」


「ぐおっ!」


「コレディッカ先生!」


 ゴーレムを次々に召喚して応戦しようとしていたコレディッカ先生だったが、血液で作られた槍を右肩に受けてしまい、そのまま後ろへ下がってしまった。


 あっという間に二人が動けなくなってしまい、残されたのは俺とクルピアちゃんのみ。


 さらに、俺はクルピアちゃんの変装に力を注いでいるため、満足に動けるのは実質クルピアちゃん一人となってしまった。


「な、情けない、でェすねェ……高位魔術師ともあろう、ワタクシが……。ここまで力の差が開いているとは……ゴフッ」


「ちょっと黙ってて下さい!怪我してるんですから!後は俺とクルピアちゃ……先生に任せて!」


「そ、そうさせて、もらいますゥ」


 こんなことなら、本人はキャンパス内に控えていてもらって、ゴーレムだけ出してくれれば良かったかもしれない。


 そうすれば、コレディッカ先生の魔力が続く限りは戦ってもらえていたというのに。


「クルピア先生!」


「何じゃ!プラティエとやら!」


「右後ろに血溜まりがあります!あそこから棘が出てくるかもしれないので、気をつけて!」


「おお、そうじゃな……助言、感謝!」


「あら、バレちゃったぁ。冷静なのね。プラティエちゃん、だったかしら?吸血鬼になる気はない?」


「結構です」


 超自然的な寿命をもつ存在からのスカウトなら、もう締め切っているのである。


「そう?残念。お師匠様は幸せ者ね」


「ちょっと黙っててくれませんかねえ」


「あら、何で?クルピアちゃんとプラティエちゃん、師弟関係か何かなんでしょう?」


「ちょ、やめろバカ!」


 大きな声で俺とクルピアちゃんの関係を喋るのはやめて頂きたい。


 しかも、コレディッカ先生とバルディオの前で。


「な、なん、でェすと……プラティエ君は……なるほど、道理で」


「そ、そうだったんですか……やっと分かりましたよ、強さの理由が」


 ほら見たことか。


「……そうじゃ。プラティエは妾の弟子でのう。以前、二人で此奴に会ったこともある」


「そんなことが……。な、何で隠していたのですか、クルピアさん!プラティエも、どうして!」


「いやあ……てっきりクルピアちゃんって、ガチ追放されてるものだと思ってたから……バレたら面倒になるだろうし、そもそも話したとて、何の新しい情報も無かったから。話す必要が無かったってだけ」


「そ、そうだったんですね……それにしても『ちゃん』付け、ですか」


「いやあ、割と仲良いもんで」


「ちょっとぉ?私を無視しないでくれるかしら?殺しちゃうわよぉ?【血槍(ブラッダ)】!」


 話に割り込んで、ナルカが血の槍を飛ばしてくる。


「【(モエーロ)】!勿論、無視はしてませんよ。クルピアちゃん、こっちは準備オーケーだよ」


 俺は一点に範囲を絞った炎でそれを受け流し、クルピアちゃんに合図を送る。


「あい分かった!地獄よ、人ならざる者に、正しき死を!生ける者に仇なす邪悪へ、正しき罰を与えよ!【血の池地獄(ヘルグド)】!」


 俺の合図に合わせてクルピアちゃんが杖を振ると、大量に湧き出す血が、波打ちながらナルカを襲った。


「はぁ。やれやれね。久しぶりだから忘れちゃったかしら?私が吸血鬼だってこと」


「……む?」


「このくらいの血、全部飲み干してあげるわ!んぐっ!んぐっ!」


 しかし、クルピアちゃんが魔力から生み出した大量の血は、みるみるナルカの胃袋へと流れ込んだ。


 血を飲むたび、ナルカの全身はみるみる艶を増し、血管が浮き出た、より健康的で、よりパワフルな姿へと変わっていく。


「……これ、逆効果だったりします?」


「なぁに、狙い通りじゃ」


「何が狙い通りだって言うの?今の私はフルパワーよ?吸血鬼に血を与えたらこうなるって、気付かなかったのかしら?」


「いや?妾はそれを見越して今、こうしてソナタに血を飲ませたのじゃ。其方は今、どれくらいの血を飲んだか覚えておるか?一リットルか?二リットルか?そんなものではなかろう、血の池地獄は文字通り、池一つ分じゃ」


「それが何だって言うの?」


「其方こそ、気付いておるのか?腹がパンパンどころではない程に膨れて、動けなくなっていることに」


「なっ!!?」


 ナルカは、人間ではなく吸血鬼である。


 故に、その腹がどこまで膨れるか、それも人間の範疇を超えているのである。


 今、ナルカの腹は、それこそ血を吸った後の蚊のように膨れ上がり、まともに動くことさえ難しい程に、その重量は増していた。


「さらばじゃ。地獄よ、人ならざる者に、正しき死を!生ける者に仇なす邪悪へ、正しき罰を与えよ!」


「ち、血の武器を……何か出さないと……!【血の武(ブラッ)……」


「【針地獄(ヘルグド)】!」


 刹那。


 ドス黒い無数の針が、ナルカの全身を貫いた。


「ギャァァァァァァァァァァァァ!」


 それは脳天を貫き、血が溜まった腹部を破裂させる。


 紛れもない、最高位魔術師クルピア・イロアの本気であった。


「ふぅ、これで良いかのぅ。はぁ、はぁ」


「キキッ、キキキ……!」


 しかし背後からやってきた大きなコウモリが、針に貫かれたナルカの心臓を持って、逃げていこうとする。


「ま、待てっ!」


「【(シビルク)】……!クソッ、届かんか!地獄よ……!」


 クルピアちゃんが杖を向けている間にも、どんどんコウモリとの距離は離れていく。


「僕に任せなさい!【祓魔弾・武装強化付与エンチャント・エクソリス】!【銀の弾丸(シルバーバレット)】!」


「ギャッ!キキッ、キ……」


 しかし、そのコウモリを撃ち抜いたのは、俺やクルピアちゃんの魔術ではなく、またコレディッカ先生のゴーレムではなく。


 バルディオが撃った、ショットガンの弾丸であった。

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