八歳で死ぬと予言されたそうで。7
これが切っ掛けになったのか、ロディはどんどん学習面での意欲が湧いた。それは教育係も目を見張るものがあり、執事はテネシスをロディに近づけたことは正解だったと胸を撫で下ろした。あと、本気でテネシスのことを見直すと同時に、自分の行いを猛省した。テネシスの専属を見習い三人から、一人前の者たちに変更しようとしたらテネシスに反発を食らった。
「しつじっ! みならいをつけたのは、しつじなんだからしつじが三人をみならいじゃないようにするんだよ!」
ご尤もである。自分が旦那様たち家族に見放されているテネシスのことを無意識に見下し、専属は見習いでいいや、と付けたのだ。いくら猛省したからと言って見習い三人を一人前になれるように指導することを怠って、既に一人前の者たちに変更するなど、使用人たちを導く立場でありながら傲慢であった。
ここでも自分の驕りに気づいた執事は、見習い三人を一人前にするべく育て上げることを己に課す。ついでに腐っても公爵家の使用人たち。執事の姿を見て自分たちもお嬢様を蔑ろにしてきたことを猛省し、お嬢様付きの見習い三人を執事と共に育てることを誓う。
あと、自分たちもお嬢様を蔑ろにしてきたことを謝った。
まだ三歳のテネシスだから「いーよ」で済ませられたが、あと二年くらい経っていたら「いーよ」どころか、使用人が主人を蔑ろにするなんて、と責められてもおかしくない事だった、と今さらながらに気づいた。
執事がそうだから、自分たちも蔑ろにして良い、などと集団心理を負の方へ働かせるものじゃないのだが、まぁ気づいただけマシなのかもしれない。
さて。
学習面が伸びたロディだが、テネシスが生まれた時のことを思い出し、それを忘れていた自分を反省して、テネシスと遊んだりご飯を食べたり勉強を共にしたりマナーを学んだり……と、兎に角可愛がった。
テネシスがロディの罪悪感込みの可愛がりに気づいているから良かったが、気づいていなかったら。急に自分を可愛がるようになった兄の豹変を、気持ち悪いとドン引きするか、兄は自分の言いなりだと我儘傲慢な性格になった可能性が高い。
実際?
実際は、ロディが自分を構うようになってもアグレッシブさは変わらず、いや、益々勢いを増し、兄に見せようと張り切って階段の一番上から飛び降りようとして、兄から猛然と引き止められるようになりつつあった。
執事はおかしい……と内心で項垂れた。
ロディの教育係からの報告で頭の良いお嬢様だと分かったために、ロディと共に勉強させていて、知識をスルスルと吸収しているし、マナー教育の厳しい夫人をお招きして淑女教育も始めたが、嫌がることなく好奇心いっぱいに覚えていき、三歳にしては上達が早い方だ。と夫人が喜んで教え甲斐がある、とウキウキしながら褒められるようなテネシスなのに。
実際、その成果をお披露目されれば三歳にしては、という注釈付きだがマナーが身に付きつつあるのに、アグレッシブな性格が直らない。
まだ矯正の効く年頃のはずだから、と執事はテネシスにやんわりと注意するが、その度に、自分は八歳で死ぬと予言されたのなら、それまで好きにしても許されるはずだ、と主張される。
その主張をされてしまえば、執事も罪悪感から言葉に詰まるし、実際に八歳まで生きられなかったとしたら、好きなことをさせてあげるべきなのか、と悩んでしまうから余計にそれ以上言えなくなってしまった。
こうしてテネシスは、甘やかされているわけではないが、予言を盾にして好き勝手に今日も過ごしている。
そんなテネシス。
この日、兄と使用人たちからお祝いされて誕生日を迎え、五歳になった。
ーーでも、アグレッシブな性格は変わらないままだったけれど。
執事が止めることをやめてしまい、侍女長以下、この度、見習いから晴れてテネシスの専属使用人になった三人でさえ、テネシスの好きにさせてあげたい、と見守る体制に入ってしまっている。
なんだったら、その筆頭が兄のロディである。危ないことは止めるが基本、庭で走り回ろうが、護衛に体力を付けたいから、と言って運動の指導をしてもらおうが、ついでに護身術も少しずつ習おうが、妹バカの兄・ロディが止めないのだから、テネシスのアグレッシブさに益々磨きが掛かっても仕方ない。というのがテネシス五歳の現状だった。
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