八歳で死ぬと予言されたそうで。6
さて、アグレッシブなテネシスに巻き込まれたように自室にて教育係と妹と共に勉強を始めたロディ。
「では、ロディ様。前回の復習です。ロディ様のお家は公爵家。その公爵家の領地では主に何を作っていらっしゃいますか」
教育係は初めて見るテネシスのことを気にして、チラチラと見ていたが、執事からテネシスも一緒に勉強させて欲しいと言われてしまえば断れるはずもなく、テネシスのことは気にしないように務めた。
「ええと、公爵家の領地では小麦畑と野菜畑があってそれぞれを作ってます」
「そうですね。小麦は小麦のみを作ると土に栄養が無くなるので肥料を上げたり他の穀物を作ったりしますが、基本的には小麦です。野菜畑の方はそれこそ様々な野菜を作っていますね」
ロディは当たっていたことにホッとしていただけだったが、教育係が補足している内容を何となくしか聞いていなかった。だが。
「お兄ちゃま。すごい! あたった!」
テネシスが満面の笑みでロディを褒めるものだから、釣られて笑顔になる。教育係に褒められるよりも妹に褒められたことの方がなぜか嬉しい気持ちが強かったので、ロディはさらに褒められたい、と勉強に身を入れることになった。
褒められただけでなく、妹に尊敬されたことがロディのやる気に火をつけた、というだけのことだ。
「お嬢様、お兄様は凄いですよね」
教育係はロディのやる気がアップしたことを敏感にキャッチし、テネシスにもっとロディを褒めさせることにした。あと、そっと執事にテネシスが居ることは結果オーライだ、と心の中で感謝した。
「うん、すごぉい。ねぇねぇお兄ちゃま、ほかのおべんきょうは?」
もっともっと、と強請るテネシスに急かされ、ロディは教育係を見る。領地についての勉強をさらに進めていき、ついでにロディが苦手な計算問題も入れてみることにした。
「では、ロディ様。続いてですが。領地で出来る野菜の一つ。ジャガイモがロディ様の前に十個あるとしましょう。そこから私に三個。お嬢様に二個あげたら、ロディ様の前には何個ありますか」
答えは五個。
教育係は即答とまではいかなくても、三歳から数字を教え、去年から計算問題を始めた以上、サッと答えて欲しい問題なのだが、中々そう上手くいかないらしく、ロディはいつも指を使う。
「ええと十個あった。教育係に三個。シスに二個あげるから、分かった! 五個だ!」
正解です、と頷きつつ教育係は指の本数を超える計算になったらどうしようか、と悩む。
「お兄ちゃま、すごい! またあたった! でもお兄ちゃま。ゆびより大きいときはどうするの?」
教育係がここのところ悩んでいたことを、テネシスがあっさりと見抜いて尋ねる。教育係はテネシスの本質を見抜いた質問に驚いた。なぜ、そんなことが分かっているのか、と。
テネシス本人も無意識で分かっていないが、前世の記憶の片鱗が見えているだけのことである。彼女は前世の記憶がときどき蘇るのだが、テネシス本人にその自覚は無いので、無意識に口にしてもそのまま忘れてしまう。さておき。
「数がゆびより大きい数のとき……」
ロディはテネシスの指摘に愕然とした表情を見せる。その可能性があるなんて全く思いもよらなかった、というところであった。
とはいえ、その可能性があることを知ってしまったからには、なんとかしなくてはならない。テネシスから褒められなくなってしまう、と危機を抱く。
「どうしよう……」
途方に暮れるロディ。教育係はロディにそっと大きい数の計算方法を、今だとばかりに教えることにした。これまでは、ロディが指以上の数字の計算をするときはどうするのか、という疑問が思い浮かばなかったことで、教えると混乱してしまう、と懸念していたので教えることを躊躇していたに過ぎない。
教育係はテネシスの指摘で、さらに一歩前進したことに安心し、テネシスに感謝した。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




