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八歳で死ぬと予言されたそうで。32

「伯爵様。牢屋へのお泊まり会は取り敢えず諦めるとして」


 デフティールは呼ばれてテネシスを見たら、そんなことを言い出したので耳を傾ける。というか、取り敢えず、という言葉は聞かなかったことにしておく。


「うん」


「例えば、ですけど。ノラン様は私に興味を持っているみたいなので、公爵家で一緒に暮らすとかなら、ノラン様の心は治りますかね?」


「それは専門家じゃないから分からないけど、ルワンさんの方が分かるんじゃないかな」


 確かにそれもそうである。

 何しろルワンはもう一人のノランなのだから。

 テネシスがルワンを見ると、首を傾げた。


「ノランが興味を持った人ってあまり居ないから可能性はあるかもしれないけれど、私という人格が無くなるのかは分からないわ。私も分からないし、それにノランは私という存在を知らないのだから」


 自覚してないのに、治るかどうかなど分かるわけがない、とルワンが言う。でもルワンという人格を消すことを話しているのにルワンはまるで他人事。本人すらも分からないことだからなのだろう。


「ノラン様がルワンの存在を知って、ルワンを受け入れたのなら、治るかも、しれない?」


「そうね。でも、それ以前の問題で。私が消えても消えなくても、私はもう予言者として皆の前には現れないわ。八つ当たりしても良いことないもの。予言者にはならない。でも私は元々予言者として存在したわけじゃないから、私は消えないかもね」


 ふむ。それもそうである。

 国王はどう考えているのだろう、とデフティール・テネシス・ルワンが国王を見た。


「ノランのもう一人のルワンという存在よ。この目で見てもまだ受け入れかねてはいる。理解が追いつかない。だが、ジョシュを少なからず傷つけたことは表沙汰には出来なくても罰を与える必要がある。ルワンとやらが簡単に消えるのか、それも分からぬゆえ、叔父上にそなたの存在を知らせることを罰とする」


 国王の決定にデフティールが顔色を変える。口に出さないが「そんな酷な」と顔色が語っていて、口にしていないから不敬にならないといったところか。

 ルワンも顔が青褪めている。だが、こちらは「承りました」と頭を下げた。


「なるほど。ノラン様のお父様にルワンさんのことを知らせるという荒療治方法であると同時に、ノラン様のお父様にノラン様を抑圧してきた結果を見せつけるわけなんですね。国王陛下、意外と悪魔な」


 テネシスは国王の思惑をガッツリ見通している。何度も言うが五歳児である。なぜそんな思惑まで見通せるのか、という疑問は今さらなのでさておき。

 悪魔とか言っちゃって、それ不敬にならない? 大丈夫? と心配になる発言。きちんと聞いていた国王は、テネシスにも確りと罰を与えた。


「牢の中で一晩一人で泊まっていくといい」


「本当ですか? わーい」


 国王は、あ、と思った。つい罰のつもりで発言したが、テネシスにとっては罰ではなく、ご褒美だった。今さら訂正することも出来ず、テネシスがウキウキとして。


「一旦帰ってお泊まりセット持ってきます!」


 完全に友人とのお泊まり会に参加する女の子のノリで宣言した。国王は罰にならない罰なんて意味がないと内心気落ちしたが仕方ない。

 そんなわけでテネシスは、このあと公爵家に帰り、兄・ロディや使用人たちに国王陛下の命令で牢屋にお泊まりすることになったよ、と満面の笑みでドヤって報告する。


 併しそれより前に。


「ルワンさん、ノラン様のお父様ってルワンさんのことを知ったら病気が悪化するとか、そういうことは無いんですか」


 またまた気になることを尋ねた。


「あー。病気で寝込んでるって言っても、寝たり起きたりの繰り返しだし、一気に悪くなることは無いと思う。もう何年も病気でそんな状態だけどね。徐々に悪くなっているけれどそれは仕方ないから」


 そういうものか、とテネシスは納得した。


 さて、それから。


 ルワンもといノランはデフティールと共に国王の命令だよ、という一筆を持って父親の元に戻り、ルワンがノランの心情などを説明した、らしい。

 簡単に受け入れられるものでは無いものの、亡き妻の、ノランへの態度の強さへの苦言を思い出したこともあり、ノランの父親はノランへの叱責を減らすことから始めたのだとか。


 ノランとルワンがどうなっていくのか、父親との確執がどうなっていくのか。それは当人たちでも分からないことかもしれない。ノランの父親の余命も長くは無いこともあるから余計に。

 けれど、デフティールが間に入って、ノランと父親に少し距離をつけて程良い距離感というものを覚えさせている、らしい。少しでも良い方向に向かうのを祈るくらいだろう。


 国王一家ですら、手出し口出し出来ない問題なのだから。


 さて。一方テネシスは。

 嬉々としてお泊まりセットである自分のパジャマにフカフカ寝具を持ち込んで牢屋に一晩泊まり、やはり牢屋に寝具があると良いことを主張した、らしい。

 罪人が居なかったのは幸いだっただろう。居たらどんなことになっていたことやら。

 次の日、牢屋に泊まった感想を兄と使用人たちに嬉々として報告し、フカフカお布団のお陰でスヤスヤと寝たので、牢屋に寝具は必要だと熱く語ったとか。

 ちなみに牢屋に泊まるテネシスを心配していた兄・ロディを含めた何人もの人間の胃に穴を開けかけたらしい。

 是非とも公爵家使用人たちには給金アップ。ロディには癒しの時間を与えて欲しいものである。


 ジョシュ殿下は、自分が十五歳で死なないことが分かってホッとし、いつも通り元気いっぱいに過ごしている、らしい。


 テネシスは八歳で死なないことを残念だ、と嘆いたが、そのあとも勉強などやるべきことをこなしつつ、変わらずアグレッシブに過ごしているらしい。


 無事に八歳を迎えた上に、九歳の誕生日を迎えた時には、実は八歳で死ぬのではないか、と密かにワクワクしていたのだけれど、何事もなく九歳を迎えてしまい、密かに落胆した、らしい。

 ロディと使用人たちが涙を流してテネシスが生きていることを感謝している姿を見てしまったので、ちょっぴり反省しているとか、いないとか。


 ついでに、自分が長生きすると分かったからといって、親と仲良くしようとも思っていない。

 レッセルとテレーザの二人は、自分たちのやらかしを全く許さないテネシスとの距離感に悩まされている、らしい。


 だが、まぁテネシスは九歳を迎えたのだから、そのあたりのことは、さぁそれこそこれからである。




(了)

お読みいただきまして、ありがとうございました。


本編は終了ですが、明日オマケ話を更新します。

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