八歳で死ぬと予言されたそうで。26
「陛下から君は賢いと聞いていたけれど、本当だね」
デフティールはテネシスを率直に褒めてから、ノランが心の病を患っていると思う根拠を説明した。
「陛下、ノラン様は自分が病であることも分かってないことを念頭に置いて聞いてください」
前置きしたデフティールに国王は頷く。
「私がノラン様の病、いえ、違和感に気づいたのは、陛下の叔父にあたられるノラン様の父君が病に倒れた一年後のことでした。かの方は八年前に病に罹りましたから、違和感に気づいたのは七年前ですね。当初は気づいたわけではなく違和感の積み重ねでした」
切り出した話では、細かい内容は伏せる、とした上で約束したことを忘れていたり、話を聞いてないと言ったり、ということがその頃少しずつ有った。最初のうちは父親が倒れたことで忙しく、曖昧になっているのだろうと思っていたし、大したことないものだったからデフティールも気にしなかった。
「気にするようになったのは、五年前。テネシス嬢が予言者から予言された、と言われている年のこと。そのこと自体は、昨日陛下から話を伺うまでは知らなかったのですが。私や他の友人と会う約束をしていた日に、彼は現れなかった。そこで友人たちと彼を訪ねたのですが、ノラン様はそんな約束はしていない、と言い切ったのです。私だけなら記憶違いもありますが、他の友人たちも約束したというのに、彼は知らないと突っぱねた。ノラン様は王族として生まれ育ったことで、他者と余計な揉め事を起こさないように常に自分を律していらっしゃった。けれど、そのときは突っぱねたのです。断固たる姿勢。あのような彼を私たちは見たことが無かった」
デフティールは、そこまで一気に話して、疲れたように息を吐き出す。
そこにはずっと抱えてきたものを吐き出したような気持ちもあるのかもしれない。
もう一度息を吸い込み続ける。
「見たことが無いノラン様を見て、それまでの違和感も考慮すると、もしや、病を患っているのではないか、と私は思いました。私や他の友人たちが彼を説得しようと試みたものの、彼は自分が健康であると言って医師に診てもらう機会を持たなかった。ノラン様の父君を診ている医師にこっそりノラン様のことを尋ねても、医師も健康だと思うから心配無いと言う。友人たちはノラン様のことを心配しても、突っぱねられた記憶で遠ざかった。それで私は思いました。身体が健康でも心が病なのではないか、と」
それで自分の職務が図書室の管理人であったことを利用して、心の病に関する本を探してみた、と。
だが、この国ではそのような病を医師でさえ、聞いたことが無いことが分かるように、そういった本も無いに等しい。
行き詰まったときに、ふと他国の生活や風俗などについて記した本を読んだことを思い出し、藁にもすがる思いで、他国の本を入手してみることにした、という。
「管理人としての権限でも他国からの本はあまり入手出来ませんから、毎年少しずつ物語や詩集と一緒に専門的な本も他国から仕入れていました。今年、入手した本に、もしかしたら……と思うものがありました。ただ、このことを誰に話せば良いのか分からなかったのです。ノラン様は王族です。私は友人とはいえ伯爵ですから、身分差は大きい。その私が王族の彼が病だと言うのは咎めを受けるだろう、と。罰を与えられるのは構わない。ですが、信じてもらえないとしたら、誰も彼を助けてくれない。そう、思って言い出せなかったのです。ですが、陛下が側近を通じて、他国の生活について記した本のことを尋ねていらしたとき、もしかしたら。そう思ってもおりました。今、こうして全てを打ち明けることが出来て、肩の荷が下りた気持ちです」
全てを打ち明けたデフティールの顔は、とてもスッキリしていた。友のことを心配していたからこその葛藤を抱え、相談したくても迂闊に出来ない重圧から解き放たれたようだった。
対して、国王は相談してもらったことは良かったと思うものの、ノランが心の病だと仮定して、だからといって予言者の問題は片付いてないことだし、というか、さらに問題が出てきたことに頭を抱えることになった。
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