八歳で死ぬと予言されたそうで。24
衝撃的な発言を満面の笑みと共にドヤったテネシスは、二年間そのアグレッシブぶりに翻弄され耐性のついた兄が即座に我に返り、両親を正気に戻して国王一家が我に返るより早く辞去の挨拶をして公爵家に帰還した。
テネシス的には、どうせなら牢屋に一晩寝てみたかったのだが、仮にも公爵令嬢にそんな真似はさせられないんだよ、とロディが説得したので、渋々ながら公爵家に帰還することを納得したのは余談である。
その後、国王一家は無事に我に返ったようで、翌日レッセル宛にテネシスの奮闘で第二王子・ジョシュが予言者に何を言われたのか分かったこと、ノランの様子が分かったことに感謝する、と書かれた国王の親書が届けられた。ついでにテネシスを王妃にする気はないか、再度の打診も記されていたが、レッセルはその件について丁重にお断りした。
テネシスの意思を蔑ろにしたら自分たち親への情がゼロからマイナスに振り切れることくらい、レッセルも分かっていたからだ。
つくづく八歳で死ぬだけの娘、と雑に冷たく扱うのでは無かった……とテレーザ共々後悔している。
尚、ノランと会っても予言者に関する手掛かりがまるで無いどころか、何をおかしなことを言い出したのだ、と嫌悪の表情を浮かべたことで予言者については右も左も不明な状況に陥った。
……と言いたいところだったが。
さすが国王と言うべきか。
テネシスの他国の暮らしについて記述されている本の話を聞き、城にもあるかもしれない、と側近を城の図書室の管理人に遣わせた。側近がその本のことを尋ねると管理人は不自然なほどに動揺を見せたという。
そこから管理人の話を聞くに、どうやらノランの学園時代の同期生だということが分かり、最近のノランの様子を見て思うことがあるか尋ねると、また動揺を見せた。
ということで、その管理人との話し合いにテネシスを連れて来るように国王から直々に親書をもらったレッセルは、テネシスに尋ねた。快諾されたので、今度はレッセルとテネシスだけで王城を訪れた。
前回訪れてから僅か四日後のことだった。
今回は王族は国王のみ。あとは見知らぬ男がその場に居て、状況から察するに図書室の管理人であろう。国王にレッセル共々挨拶をしたあと、国王から管理人だと紹介され、互いに挨拶を交わす。管理人はノランのことを知っているらしい人物のはずだけれど、妙にテネシスのことを気にしているようであった。いや、完全に気にしている。何しろずっとテネシスから視線を外さないのだから。
「伯爵さま」
ノランの同期生で図書室の管理人は、若くして伯爵位を継いだ文官だという。政を担う文官を政務官と言うが、それ以外の雑務や事務を担う文官を事務官と城では言う。彼はその事務官の方だ。領地を持たない城で働いて稼ぐ貴族で、その多くは男爵か子爵の位持ちなのだが、担当部署の長を担う者は伯爵の位持ちである。宰相や時に国王と直々に顔を合わせる立場になるので、身分が高くないと合わせることが出来ないからだった。
そんなわけで図書室の管理人ことデフティールは、伯爵位を継いでいるのでテネシスは伯爵さま、と呼んだのである。
「はい、はじめまして、ビアス公爵令嬢」
全くテネシスから視線を外さないデフティール。くりくりの大きな若葉色の目は、好奇心一杯、と語っている。ここまであからさまに興味を示されると、テネシスはなんだか面白く思った。
「伯爵さま、はじめまして。私のことがそんなに気になりますか」
「ええ、とても。陛下から五歳とは思えないほどに賢い少女だと聞き及んでおります。なによりあの本をその歳で読んでいることが素晴らしい」
あの本とはテネシスが国王に進言した内容を記した本のことである。五歳児が読むような本では無いのは確かだろう。子ども向けに優しく書かれた本ではなかったのだから。
「お褒めくださりありがとうございます。伯爵さまもあの本を読んだことがあるのですね」
「私は学園に通うちょっと前でしたけれどね」
読んだ年齢を答える。つまり十代に入ってからということだ。テネシスはなるほど、と頷いてからデフティールにさらに尋ねた。
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