表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/33

八歳で死ぬと予言されたそうで。23

 ノランが去ってから室内はまだ静まり返っていた。国王と王妃は難しい顔をしてテネシスを見ていて、アッシュとジョシュの王子兄弟はテネシスの質問の意図を理解出来ず、テネシスを見るだけ。公爵夫妻であるテネシスの両親は娘の考えが全く分からず困惑し、兄であるロディは、ここでテネシスの真意を尋ねるのは自分の役目なのだろうか、と悩む。


「テネシス、と申したな」


 ロディの悩みに気づいたのかはさておき、国王が静かにテネシスに声を掛ける。五歳の少女に掛ける声音ではなく、とても重たい声音をしていた。


「はい」


 テネシスはそれに気づいているのかいないのか。

 快活に返事をすると、国王は深呼吸を一度してからテネシスに尋ねた。


「先程の質問の意図を尋ねても良いか。最初の質問はおそらくノランではなく叔父上の友人が予言者かと疑ったものなのだろうが」


 国王から直々に問われたことも特に気負うことはなく、テネシスは首を傾げて答えた。


「いいえ、別に疑ってません。可能性を尋ねただけです。ノラン様のお父様のご友人がそうだ、と信じて尋ねたわけではなく、そういうこともあるのか知りたかっただけです」


 国王はそうか、と頷く。疑うほどの確証は無く、可能性の一つとして考えただけ、というテネシスの言葉を受け入れその先を促した。


「二つ目の質問について、ですよね。公爵家の図書室にある本で、他国の生活や風俗(ふぞく)について記したものがあります」


 テネシスの説明によると、興味を持った本の中に他国の生活や風俗(ふぞく)(仕来りや習慣や昔からの習わしの意味)が書かれた本があった。

 そこには、他国では子どもが幼くして死ぬ病が流行したことを憂えて、ある程度の年齢に育つまで男ならば女の格好をさせ、女なら男の格好をさせて育てた、という記述や、男女問わずドレスを着て舞踏会を開催する祭或いは男女問わずトラウザーズを履いて舞踏会を開催する祭もあるという記述があった。


「公爵家にそのような本があるのだから他家にもあるかもしれません。それを読んだ男性が自分もドレスを着てみたい、と思うことだってあるかもしれない。そう思って尋ねました。ノラン様とノラン様のお父様のご友人の女性方がお二人を訪ねていないのなら、男性が女性の格好をして訪ねた可能性を考えたからです。

知らない、とは仰られましたが、本当に知らないかもしれないし、実際にそのような方が訪ねて来ても知らないと言うだろうなぁとも思いましたけれど」


 国王は五歳にしてはとても賢い質問をしていた、と感心する。


「最後の質問は、ノラン様のお人柄を知りたかっただけです。余命宣告を受けた人に対して嘲笑うような人なのか同情する人なのか無関心なのか他人事なのか。分かったことは本当にお優しい方なのだな、ということでしたが」


 最後の質問の意図を話したテネシスに国王は、優しい人だと思った理由を尋ねた。


「なぜ、そのように思った」


「優しい方だと思いますよ。人を嘲笑うのは論外ですが、余命宣告を受けた人に可哀想、とか、言われた本人じゃないのに嘆き悲しんでいる、とか。同情してくれる心が嘘だとは思わないけれど、同情して欲しいわけじゃなかったら嫌でしょう。無関心や他人事も優しいとは思わないですよね。掛ける言葉が浮かばない、という一言が優しいと私は思った。それだけです」


 テネシスの説明に国王も王妃も頷く。

 二人共にテネシスのノランへの質問内容が五歳にしては賢い、という部類ではないことに気づいていた。それが難しい顔の理由であった。

 説明を聞けば尚のこと。

 このような子に王妃になってもらいたい、と思うので、王妃はテネシスにストレートに尋ねた。こういう子に迂遠な物言いは逆に警戒心を与える、と思ってのこと。


「テネシス嬢。あなたアッシュと婚約して王妃になってみる気はない?」


 国王もそのことは考えていたが、ちょっとストレート過ぎないか、と王妃に思う。アッシュとジョシュは困惑し、公爵夫妻とロディは思ってもみなかった、という顔をしている。

 打診されたテネシスは。


「王妃になる気も無いですし、それに無理です」


 キッパリと断った。

 ストレートな返答である。

 アッシュは告白もしていないのに、自分が振られたような気持ちになったが王妃は断りなんて何のその、とばかりになぜ、とさらに粘る。


「王妃という大変な立場に着けるとは思っていないこともありますが、私、八歳で死ぬと予言されたそうです! だから八歳で死ぬので無理です!」


 誰があっけらかんと自分が死ぬことを発表すると思うだろうか。さすがに国王も王妃もアッシュもジョシュも呆気に取られて二の句が告げない。

 胸を張って堂々とした宣言は、まるでどうだすごいでしょう、と自慢しているようにも見えて、自分たちは一体何を聞かされたのか、と王族は揃って耳の聞こえがおかしくなったのか不安に思った。


 だが、公爵夫妻も兄のロディも何も言わないことから、どうやらテネシスの予言は嘘では無いらしいことを理解する。


 理解して、えっ、と王族揃ってまたも絶句した。


 八歳で死ぬと予言された割には、随分と脳天気もといのほほんとしている、と信じられない気持ちだ。

 特に十五歳で死ぬという予言を受けたジョシュなどは悲壮感満載であったというのに、それよりももっと早く死ぬと言われたはずのテネシスが、こんなドヤ顔で予言を打ち明けてきたので、自分の悲壮感はなんだったのか、とちょっと恥ずかしく思った。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ