八歳で死ぬと予言されたそうで。21
「先日、ジョシュがそなたの住まう区域に立ち入ったことがあっただろう?」
国王が水を向けるがノランは記憶に全く無いように首を捻る。
「第二王子殿下が? まさか。第二王子殿下にお会いしたのは二年前以来です」
はっきりと否定するノランに、国王も一瞬言葉を失う。嘘を吐いているのであればあまりにも堂々とし過ぎている。
いくら従兄弟とはいえ、国王に嘘を吐いて良いはずがないのに。混乱する国王を他所にジョシュが口を挟む。
「ノラン様。先日ノラン様の住まう区域に入りました。ノラン様にはお会いしませんでしたが、女性にお会いしました。令嬢というか夫人というか、いえ、どちらとも分からないようなお方でしたが、そのお方はノラン様のご友人でしょうか」
父親の従兄弟という関係なので、アッシュもジョシュもノランをノラン様、と呼ぶ。少々緊張しながら尋ねたジョシュにもノランは首を傾げた。
「令嬢? 夫人? つまり、未婚か既婚か分からない女性ということか。いや、私には女性の友人は居ないから心当たりが無いのだけれど。第二王子殿下、その方は私の住まう区域にいた、と?」
暗に記憶違いか勘違いではないのか、とでも言うようなノランの雰囲気。併しジョシュは否定する。全く意味が分からないが確かにノランが住まう区域で女性に会った。護衛や侍従も、ジョシュがそこに立ち入ったことは証言している。
「はい。ノラン様とお父君様の住まう区域でした。私がそこに立ち入ったことは護衛たちも知っています」
ノランはジョシュがそこまでハッキリ言うのであれば間違いないのかもしれないが、とも思うが、自身に覚えはない。父を訪ねに女性が来ることも無いはずで不思議なことだと思う。
そういった旨を国王に告げるノランは嘘を吐いているようには全く見えない。
そこで今度はレッセルがノランに尋ねた。
「ノラン様、妻が体調不良で陛下主催の夜会や妃殿下主催の茶会に辛うじて出席していることをご存知のようでございますが」
国王にノランへの問いかけの許可を得てからノランにそんな前置きをする。
「ええ。私も父共々陛下主催の夜会には参加しますから、色々と耳にはしております。挨拶をしても夫人はやつれたように見受けられますし。本日は出て来られるくらい回復されたようでなによりです」
ノランが頷き卒ない返事をする。
「ありがとうございます。それで、なのですが。ここにいる娘が生まれた頃にノラン様がご紹介して下さった予言者の女性と会い、娘が予言されたことを覚えておいででしょうか」
つい先日ノランのところでジョシュが予言者の女性に会ったことを知らない、と言うノランだ。その時はノランに紹介されたわけでは無かったから知らない、と言えるだろう。
だが、五年前、娘が生まれた報告を国王に済ませた帰りにノランと会い、ノランにも娘が生まれたことを話した流れで、レッセルに予言者を紹介したことも知らないと言うのだろうか。
あの時、ノランから紹介されたのだが。
「予言者? 紹介? なんです、今度は公爵までそのようなことを仰るとは……。確かに公爵から二人目の子が生まれたことは聞きましたが、祝いの言葉を述べて、それから私は去ったはずですが」
レッセルからも予言者のことを口にされ、ノランは眉間に皺を寄せて不快な表情を顔に浮かび上がらせる。
王族を不快にさせたことで、咎めがあってもおかしくないが、レッセルも予言者のことについては後に引けない。
「いえ、確かに一度は去って行かれました。その後ろ姿を見送りましたが、ノラン様のお姿が見えなくなったところで公爵家に帰ろうとした私に、急いで戻ってきたように声を掛けられて、有名な予言者を紹介しよう。その娘の将来でも予言してもらったらどうか、と仰られましたよね。後ほど予言者を公爵家へ向かわせる、と。
だから私は公爵家に来た方を迎え入れて、公爵家の未来などではなく、言われた通りに娘の未来を予言してもらったのですが」
レッセルの説明に、ノランはさらに不快な表情を浮かばせるが、その説明でようやくロディとテネシスの兄と妹は、テネシスだけが予言された理由を知った。
なるほど、そんな助言があったから言われた通りにテネシスの予言だけを受けたのか。
その謎は解けたが、テネシスは思う。
言われたからって何の疑いも持たずに鵜呑みにするって、本当にコレで公爵なの? こんなんで当主とかきちんとやれているの? 騙されて金を奪われているなんてこと、ないのかな。
シリアスな場面だが、テネシスはどこまでいってもテネシスであった。
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