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八歳で死ぬと予言されたそうで。17

「第二王子殿下、テネシスと申します。私も殿下と同じ予言者から予言を受けた身です。殿下はどのような予言を受けたのでしょうか」


 他所行き用の仮面を被るどころか特大の猫を五匹程被ったようなテネシスは、見事に小さきけれど淑女と言いきれる素晴らしき令嬢として王族に接する。

 公爵家に招いた淑女教育の先生の賜物である。


 ジョシュに声を掛けるべくそちらに視線を向け、ややジョシュに近づいて(立って挨拶していたからである)併しながら適度な距離を保って尋ねた。

 ジョシュの方は自分より年下の少女から声を掛けられたことは理解していても返事をする気になれず俯いたまま。


 これは余程のことを言われたのか、と誰しもが思う。


 となればここで引くのが普通の対応なのだが、何を言われたのだろう、と好奇心を刺激されたテネシスは当然引かなかった。


「もしや、婚約者が出来ずに一生独身だという予言でしょうか?」


 そう、予言当てゲームを勝手に始めたのである。

 ジョシュは俯いたまま首を振ったのでどうやら聞こえてはいるらしい。そして左右に首を振ったということは否定の意味だとテネシスは判断する。


 併し、予言当てゲームで早速、そんなある意味チャレンジャーな発言をしている辺りがテネシスである。婚約者が出来ないとか、一生独身だとか、物凄くデリケートな発言だというのに。


 レッセルが慌ててテネシスの言葉を封じるべく、呼びかけようとしたが、それを手で制したのは王妃だった。何しろ、親や兄である自分たちにすら何も言わずに俯いたままのジョシュが、反応を示したのだから、理由が分かるかと希望を持ったのである。


「えっ違う? じゃあ兄である第一王子殿下を排除して自分が王太子の位に着こうと画策しているのを予言された?」


 お嬢様、あなた様は思考までそんなアグレッシブでしたか……。


 執事がこの場に居ないのに、ロディの耳にはそんな幻聴が聞こえてきた辺り、執事プラス使用人たちの嘆きや動揺をこの二年で間近に感じ取ってきた証拠かもしれない。

 いや、今はそんな幻聴に惑わされている場合ではない。何気に恐ろしい上にとんでもない不敬なことを口にしている。

 チラリとレッセルとテレーザを見たら顔面蒼白どころか土気色になっていた。


 ……ああ、アグレッシブぶりを知らないから目の当たりにするとこうなるんだなぁ。


 なんて呑気に観察している場合じゃない。大概、ロディも現実逃避を仕掛けているのだ。

 ロディがテネシスを止めるより早く。


「な、何を言うっ! そなた、私どころか兄上を馬鹿にしておるのかっ! 我が兄上は誰よりも王太子に相応しいお方だぞ! 我が国や他国のことも含めた勉学に励み語学に励み己を鍛え民を思いやる、そんな方が国王になるのは当然だっ!」


 ジョシュは顔を上げ、キッとテネシスを睨み付けて怒鳴るように甲高い声で兄を褒め称える。

 アッシュは弟の目に自分がそのように映っていると知って感動したし、久しぶりに見た弟の顔が泣き腫らしているのを見て衝撃を受けた。

 一体弟に何があったのか。

 それは国王と王妃の両親も同じである。

 聞き出したいが今はテネシスに任せてみよう、と国王も思い、アッシュも口を噤む。


「あ、違うんだ。そして第二王子殿下は第一王子殿下が大好きなんだねー。私もお兄様のこと大好きだから自慢するの分かるよー」


 怒鳴られたテネシスは、のほほんとした口調でそんなことを言う。毒気を抜かれたような顔をしたジョシュは、ポカンと大きく口を開けて怒鳴ったはずの相手を見た。


 なんなんだ、この子は。


 テネシス以外の全員がジョシュのそんな心の声を聞いた気がした。

 でも、ロディは妹が王子にも兄が大好きだ、と言ってくれたことが嬉しくて内心でニマニマとしていた。顔に出すわけにはいかないから顔は口を一文字に結んだままだが。


「な、なんなんだおまえ」


「えっ、テネシスだよ」


 ジョシュの発言にテネシスは自己紹介したのに名前を聞いてなかったの? とばかりに再び名乗る。


 違う。そうじゃない。


 執事の嘆きの幻聴が再び聞こえてきたロディ。

 だが、ここは幻の執事には黙っていてもらい、様子を見ることにする。

 きっと、いや絶対、テネシスは不敬罪に問われて牢屋に入ることなど恐れていないので、思ったことを口にしているのだろう、とロディは確信していた。


 どうやらこの場に居ない執事の代わりに、ロディがヤキモキする立場を与えられているようである。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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