八歳で死ぬと予言されたそうで。12
「いや、お兄様、私のことは本当に放っておいて欲しいんだよね。今さらどのツラ下げて構って来るの。って思っているし、あと三年で私は死ぬって言うのなら好き勝手にしていたいから今さら構われたくないし」
頭を撫で回すロディにテネシスは冷静に却下する。彼女は本当に両親に構われたいとは思っていない。
「でもシス、両親が折角謝ってくれているから構われたくない?」
ロディは寂しい思いをさせた妹に、これ以上寂しい思いをさせたくないと思い尋ねる。
「全然。ちっとも。全く。どのみちあと三年で死ぬなら今さら居ても居なくてもいい。八歳で死ぬって聞かされたら放置する人を親と思えって無理。病気で死ぬのかなんなのか知らないけど、本当に子どもを大切に愛しているなら、そんなこと聞かされなくても側に居ようと思うでしょう。そんなこと聞かされてなんでこの子がって思うことはあるだろうけどさ、それでも離れるもの? まぁそこにいる両親がそういう考えであることは仕方ないし、だったら今さら構われても嬉しくないし。離れたのはそっちなのに構って来ようって都合良過ぎだし」
聞いていたレッセルとテレーザはあまりの正論に、精神攻撃度合いマックスで瀕死状態。心折れるというより抉られまくっている。だが、そう言われても仕方ないことをやらかしているのは自分たちであるから、文句も言えない。
肩身の狭い思いでテネシスの正論を聞いている。
「そう。では、兄様とは仲良くしてくれる?」
「それはもちろん。お兄様とお勉強もお茶を飲むのも遊ぶのも楽しいから!」
ということで、ロディとテネシスは、当初の予定通り(すっかり忘れかけていた、とはロディは口に出さないが)冒険者の物語を読むべく図書室へ移動した。
そんな二人の後を追うように侍女や護衛たちが着いて行くのを見送り、執事が兄の家令と当主夫妻に恭しく頭を下げてからゆっくりと発言する。
「旦那様、奥様、差し出がましいとは思いますが口を出させていただきます。先程、斯様にお嬢様が賢いところをご覧になられて色々と思うところがお有りでしょうが。お嬢様との溝は簡単に埋まるようなものでは無いことはご理解いただけたと思われます。
ですが、挽回の余地も無いとも言えません」
執事にも溝は深いよ、と忠告されて項垂れていたレッセルとテレーザは、挽回の余地の一言に顔を上げる。執事は淡々と可能性の一つですが、と前置きした上で挽回について話す。
「お嬢様は抑々、八歳で死ぬと予言されたことに対して、死ぬのか、仕方ない。それまでは好きに生きよう。と達観されておられます。ですので、その予言をどうにか出来れば、お嬢様の信頼も少しは取り戻せるのではないか、と」
「予言をどうにかする?」
執事のざっくりとした提案にレッセルは首を傾げる。
「左様にございます。お嬢様は本質を捉えられておられます。ですので、予言というものに懐疑的なのでございましょう。いえ、信用して八歳で死ぬ、と思っておられるようでございますが、一方で、予言者の予言が今までに一度も外れたことが無いのか、と懐疑的なようでございました。
つまり、その予言者の予言が今までに一度も外れたことが無いのであれば、自身は八歳で死ぬのだろう、とのお考えにございます。
以前、お嬢様が仰っておられました。八歳で死ぬ、と言っても八歳の誕生日に死ぬのだろうか、それとも九歳の誕生日の前日に死ぬのだろうか。同じ八歳でも一年は違う、と。
病なのか事故なのか誰かに殺されるのか自分から死ぬのか、全く原因は分からないのに、ただ八歳で死ぬ。ということを父親も母親も信じていることから、その予言者は今まで一度も予言が外れたことが無いのだろう。
だが、予言者という人を信じられるのか。貴族の公爵家という家なら、危険人物などは避けられると思っている。では、信じられるほどに予言者という人は凄い人なのか、それとも予言者のことを知らなくても信じられるほどに、予言者を薦めた誰かが信じられる相手なのだろうか。
お嬢様は先日、ふと思いついたようにそのようなことを仰っておいででした。
そして私めも気づきました。旦那様、奥様、予言者の方は公爵家、つまりこの本邸に招かれましたが、一体どなたからの推薦でここに来られたのでしょう。
旦那様と奥様が高名な予言者だと仰られ、私めもお二人がそのように仰るのであれば、と鵜呑みにして、あの得体の知れない者を迎え入れてしまいましたが。それは兄であるあなた……家令も同じですよね。ですがここは公爵家。おいそれと、怪しげな者を招き入れることは危険だということを失念していた私共が言うのもなんですが、なぜ、あのような怪しげな者をお二人は信用なされたのでしょうか。
いえ、怪しげな者を招き入れるような愚を旦那様と奥様が犯すことは無い。使用人たちとて同じこと。と思い込んでいた私めが言うことでは無いのですが」
執事からの指摘……それは口にしたテネシス自身も気づいてないような疑問だったけれども、そこから執事も疑問に思ったことによる……に、レッセルもテレーザも、ハッとしてから困惑したように互いに顔を見合わせた。
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