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八歳で死ぬと予言されたそうで。11

「も、申し訳ないことを……。お嬢様、家令として旦那様に付き従うだけで諌めることもせず、蔑ろにしてすみませんでした」


 家令は五歳児の鋭い舌鋒に頭を下げた。潔いところは執事と同じでやはり兄弟らしい。


「うん、本当だよね。私にあなたをクビにする権限は無いけど、無能だって言ってるのと同じだからね」


 でも謝ったからいいけどさ、とテネシスはあっさりとそれでお終い、と頷く。


「ああそれと、家令はさぁ、なんか間違ってることを言ってたから言わせてもらうけど」


 テネシスが間違いを指摘しようと未だ項垂れる家令に口を開く。


「なんでございましょう」


 弟である執事からお嬢様は聡明な方です、と自分に報告があったのに、子どもとしては、という注釈を勝手に付けていた家令は、顔を上げる。本質を理解してますよ、という報告を今さらながらに思い出しながら。


「家令も、あと執事もだけど。公爵家から追い出していないから愛情があるとかなんとか言ってたけどね。抑々の話、追い出すって考えがおかしい。追い出されたらその辺で行き倒れてしまう、とかって言ってたけど。まぁ生きる知恵が無い子どもだから、それは間違いないんだけど。

抑々、貴族の子息子女が追い出されたとして、考えられるのは他家の養子。それと孤児院。後は平民生活。でもさぁ、どれも現実的じゃないよね。だって、他家の養子だとしても、どこの家の子か分かっているだろうし、分からないように工夫したって、貴族は平民よりも人数少ないからどこの家の子か分かる。つまり、私だったら公爵家の子だって分かるから、火種を手元に置いているようなものじゃない。公爵家の醜聞になりそうな子ってこと。養子にした家が善人でも悪人でも面倒ごとになるよね。祖父母の家辺りなら面倒ごとにならない、かもしれないってとこ?

孤児院と平民生活のどっちでも、やっぱり火種になるでしょ。私は一応貴族の子だからね。金のかかってそうな服着て平民生活も孤児院暮らしも貴族って分かるでしょ。仮に服を着替えても貴族の仕草と平民の仕草って区別がつくと思うから気づく人は気づくでしょう。

どこの家か分からなくても貴族の子なんて、面倒だと関わらない人と金の匂いがするって関わる人が出てきそうだし。前者は兎も角、後者だと手当たり次第に貴族家にお金をせびると思うし。手当たり次第だと金を払わなくても噂になって醜聞の危険がある。

つまり、私を追い出す方が危険でしょう。簡単なのは私が死ぬことだね。追い出すくらいならそっちの方が危険は無い。尤も、追い出すくらいなら最初から子どもを作ろうとするなって思うけどね。

あと、どのみち私は八歳で死ぬ、という予言から、八歳までは何をしても死なないだろうから、毒を飲ませるとか意味ないとは思うんだけどね」


 ツラツラ……とテネシスは、自分が追い出されることのリスクを述べつつ、最後の最後には、お決まりの何をしても八歳じゃないから死なないという持論で話を締めた。

 そして、家令も執事もその指摘に、確かにそうだなぁなんて目が泳ぐ。貴族の子を追い出すのは非常にリスクが高い。そして、そのご尤もな指摘を五歳児にされているのは、とてもとてもメンタルがやられた。


「家令から、娘は本質を理解している聡明な子だ、という報告をもらったと聞いていたが……。本当にその通りだったのか。テネシス、私は父親失格だが、その今さらだが、済まなかった」


 滔々としたテネシスの指摘はレッセルの、仕事さえしていればいい、息子が跡取りとして成長すればそれでいい、妻は可哀想だからそっとしておけばいい、娘は放置しておこう、という凝り固まった思考を解しまくった。というか、反省どころか地中に埋まりたいほどに他人視点では愚かだった。許してもらえずとも自分が悪いので謝るべきだ、と思った。


「私も情けない母親だったわ……。テネシスを可哀想だと憐んでいるだけで。そしてそんな私も可哀想だと自分を憐れんでいるだけで、ロディもテネシスも放置してしまった。辛うじて最低限の社交をこなし、公爵夫人としての仕事をこなしていたけれど、それも偉いわ、私。なんて自分に酔っていたわ。視点を変えると愚かにも程があって、許してとは言わない。でも、ごめんなさいね」


 テレーザもテネシスの言い分を聞いて、自分が愚かで恥ずかしい、と頭を下げた。


「謝ったから受け入れるだけ受け入れるけど。私は八歳で死ぬらしいから別に今まで通りほっといてもらっていいけど、お兄様はずっと生きるわけだし、お兄様のことは放ったらかさないで。悲しませないで」


 ふん、と腕を組んだテネシスは、自分のことはどうでもいい、とばかりにロディのことを考えろ、と二人に抗議した。

 ロディは両親の視線を受けて。


「私は二人を許します。ですので、きちんとテネシスを可愛がってください。こんな可愛い妹を放ったらかしにしないでください」


 テネシスが自分を大切にしろ、と言うのなら、自分もテネシスを大切にしろ、と両親に訴えた。ついでにこれでもか、というほどにテネシスの頭を撫でながら。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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