表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/122

第46回:漢の軍師張良

ミニコラムの続きです。

 張良ちょうりょう

「やあ、私は漢の軍師張良ちょうりょうだ。劉邦りゅうほう様を助けて項羽こううを倒し、天下統一に貢献したんだ。私は元々は、かんの名家の出身でね。秦に祖国を滅ぼされたから没落ぼつらくしたんだ。だから、始皇帝しこうていが憎くてね、暗殺しようとしたけど失敗しちゃった。

 なに、力持ちな奴にお願いして、始皇帝の馬車にハンマーを投げて貰ったのさ。馬車には命中したが、残念ながら始皇帝は別の馬車だったのさ。私は一目散に逃げたよ。

 その後、その土地の人は犯人が居るかもって理由で皆殺しになったらしい。気の毒な事をしたな。ああそうだ、この頃、項羽の叔父殿と友達になったんだよ。項伯こうはくって人さ。偶然お互いに逃亡中でね。かくまったのさ、彼を。困った時にはお互い様だからね。

 そういえば、変な爺さんに無理難題言われた事もあったな、『靴取ってこい』とか『履かせろ』とか『5日後にまた来い』とか、行ったら『遅い』とかね、面倒くさい爺さんだったけど、言う通りにしたら、書物をくれたんだよ。それが実は太公望たいこうぼうの兵法書でさ、めちゃ役に立ったよ。あの爺さん何者だったのかね。

 そんなこんなで放浪してたら、出会ったのさ。劉邦りゅうほう様に。出会った時は軍略ぐんりゃくの無い残念な将軍のおっさんだと思った。でも意外と人望があった。話してみたら、私の話を熱心に聞いてくれてね。私の献策けんさくを聞き入れてくれたのさ。私の献策けんさくを用いて戦った結果、劉邦りゅうほう軍は大勝利。こりゃ、神が与えた英傑かも知れないと思ったんだ。私の言う事をちゃんと聞いてくれるからね。

 その後、劉邦りゅうほう様は、項梁こうりょう将軍の配下に就いた。その後も、私のアドバイスをガンガン聞いてくれてね。連戦連勝で私も鼻高々だった。だけどね、項梁こうりょう殿の甥御おいご項羽こうう殿は凄かったね、武のきわみだった。味方だったから良かったが、敵対したら私の策でも勝てないと思ったよ。

 その後、劉邦りゅうほう様と項羽こうう殿は別々のルートでしんの首都に攻め込むことになった。いわゆる早いもの勝ち進軍ってヤツだね。項羽こうう殿の軍は精強だ。しかし、私の策ならば勝つ自信はあったよ。まず、敵の将軍を寝返らせる。そして、その将軍は『おい、お前ら俺は今から裏切る事にしたぞ』と言われると戸惑うよね。「え?え?」って、そんな困惑して判断に困っている時に攻め込んで、兵士たちをコテンパンに蹴散らすのさ。えげつないだろ?でも、これで秦の首都は陥落したのさ。秦の三世皇帝は捕まえた。項羽殿よりも早かったんだよ。すごいだろ?

 でも、困った事に秦都しんとに入った劉邦りゅうほう様はそこで早速ハーレムを作ろうとしたのさ。人目もはばからず、後宮こうきゅうの女官達に襲いかかろうとした劉邦りゅうほう様の情けない姿を見て、私は怒ったね。『まだ早い!軍を引いて項羽こうう殿に備えなさい!』と。

 案の定、しん軍を倒した項羽こうう殿は劉邦様に先を越された事を知ると怒り狂ったよ。『劉邦め!自分が王にでもなったつもりか!殺してやる!』ってね。

 しかし、その時、以前友達になった項伯こうはく殿が偶然現れて、甥御おいご項羽こうう殿との間に入って仲介してくれたのさ。助かったよ。ほんと。この後、劉邦りゅうほう様と項羽こうう殿との間で話し合いが行われた。鴻門こうもんの会って言うんだけど、大変だったよ。項羽の軍師の范増はんぞうの計略で劉邦りゅうほう様は暗殺されそうになるんだよね。酒の席でさ。私は味方の樊噲はんかいという豪傑ごうけつにお願いした。彼は項羽こうう殿の前で剣舞けんぶを踊り、項羽こううから酒を貰って飲み、肉を喰らった。そして樊噲はんかいは「私は死など恐れません」と言ったんだ。この時、項羽こうう殿は劉邦りゅうほう様を殺そうとしていたが、この豪傑ごうけつを気に入り、劉邦りゅうほう様を忘れていた。そして、樊噲はんかいが時間を稼いだスキに劉邦りゅうほう様を密かに逃がしたのさ。危なかったよ。

 軍師の范増はんぞう千載一遇せんざいいちぐうの好機を逃した事で項羽こうう殿を見限る事になったんだよ。范増はんぞうが居なくなれば、もう、私の謀略ぼうりゃくに対抗できるものは項羽ほうう軍には居なくなる。これは好機だ。しかし、いざ戦場になると、項羽こうう殿に勝てる者が我が軍には居ない…いや、居る。韓信かんしんという男だ。韓信かんしんは、当時、地方を遠征して各国を次々と落としていた。あの男なら項羽こうう殿を倒せるかも知れない。しかし、韓信かんしん劉邦りゅうほう様に忠実とは言えない。奴に背かれるリスクはある。しかし、四の五の言ってられない。項羽こうう殿が少数精鋭を好むのに対して、韓信かんしんは多すぎるぐらいの兵数でも統率できる強みがある。信じられないぐらいの大軍を韓信かんしんに率いさせて項羽こうう殿にぶつければ勝てる。

 しかし、それだけの大軍、補給をどうするか。膨大な食料を用意しなければ戦えない。いや、我が軍には居る。補給のスペシャリストが。蕭何しょうかだ、彼ならどれだけの大軍でもその食料を準備し運搬してくれるだろう。策は決まった。大軍を揃え、韓信かんしんに率いさせ、蕭何かんしんに補給させるんだ。地方で連戦連勝する韓信を呼び出し「項羽こううと戦え」と命じたんだ。でも、韓信かんしんは「ならば俺を王にしろ」と言ってきた。劉邦りゅうほう様は「何様だ!」と激怒する。まあ当然だね。

 劉邦りゅうほう様は、「韓信かんしんなぞに頼らなくともワシ自信が項羽こううを倒す!」と言い出してしまった。そして、劉邦りゅうほう様は、56万人もの兵を率いて韓信かんしんなしで項羽こうう軍と激突。しかし、わずか3万の項羽こうう軍にズタボロの惨敗ざんぱいを喫してしまった。何てこった。

 こうなったら、韓信かんしんには気持ちよく王位についてもらおう。斉王せいおうに。大軍を率いた韓信かんしんが参戦することで、ようやく項羽こうう殿を垓下がいかの地に追い詰める事に成功した。そして、私のトドメの策だ。項羽こうう軍を包囲して、兵たちに故郷であるの歌を歌わせたのさ、「の者はみな劉邦りゅうほうに降伏したのか…と項羽こうう殿は絶望してしまった。そして破れかぶれで突撃して亡くなったよ。最後まで凄い豪傑ごうけつだったね。うん。

 そうして、を滅ぼして劉邦りゅうほう様は天下統一を達成、かんという国を建国したのさ。私の夢も叶った。その後のかんは大変だったよ。なぜなら、劉邦りゅうほう様の皇后様は恐ろしい人でね。敵対者は殺すし、一族はえこひいきするし。困ったものさ。でも、私は既に現世の事には興味が無くなっててね。軍師は引退して仙人になるための修行をしたんだよ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ