表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

比較的最近更新した短編のまとめ場所

悪役令嬢はただ孤独に生きたくなかった

作者: リィズ・ブランディシュカ



 前世はお金持ちの家の女の子だった。


「ごめんね。お金持ちの子とあそぶと面倒だからって、ママとパパが」


「友達でしょ? だったらお金くらいかしてよ」


「お金持ちなんだから、ちょっとくらい分けてくれもいいじゃない。どうせたくさんもって、贅沢してるくせに」


 こんな人生いやだ。


 別の人生がいい。


 そう願ったからか、その女の子は新しい人生を与えられた。


ーー普通の子のように生きて、普通に友達を作って、普通に恋をしたい。


ーー町でみかけるあのゲームみたいに。


 けれどそれは女の子を苦しめるできごとでしかなかった。





 その悪役令嬢は戦いたいと思っている。


 世の中に蔓延する、理不尽な暴力と。


 抗えぬ権力と。


 悪役令嬢は、名家の娘に生まれた。


 しかし、誰よりも権力というものを嫌っていた。


 それは、幼い頃にあった出来事が原因だった。






 悪役令嬢には、友人がいた。


 平民の友人が。


 しかし、友人はある日忽然と姿を消してしまった。


 貴族と関わることがふさわしくない。


 そう考えた者達の手によって。


 だから、悪役令嬢は抗うことにした。


 今の世の中、権力は絶対の力だった。


 だからそれに抗おうと。






 悪役令嬢はやがて、強大な力を持つ者と、手を組む。


 そして、裏の世界で暗躍し、権力が効かない世界を作り出そうとしていた。


 それは、悪役令嬢が当初描いていた、血の流れぬ穏やかな計画ではなかった。


 しかし、悪役令嬢はどうしても、理想の世界を作りたかった。


 そのため、当初の計画からかけ離れていったとしても、止まることはできなかった。


 あいかわらず、権力が絶対の力であり続け、弱者が虐げられる世界だったからだ。






 そんな悪役令嬢だが、ある日気の良い友人たちに出会う。


「私達と、友達になりませんか?」


 その者達は生涯の友と言ってもいい相手となった。


 やさしく、おだやかで、思いやりがある人々。


 彼等は、穏やかな方法で世界を平等にしたいと考え、悪役令嬢も一時はそれに同意していた。


 しかし、道は交わらなかった。


 問題は、悪役令嬢の心が揺れていた時期に起こった。


 悪役令嬢は、恋に狂った、


 そしてそれは、人間関係を壊してしまった。


 その果てに、悪役令嬢はもっとも忌み嫌っていた力を、権力の力を、よりによって自身が使ってしまった。


 悪役令嬢は、歪んだ世界に染まってしまった自信の手を見て、絶望した。


 その事が影響して人が寄り付かなくなり、いっそう孤独となった悪役令嬢は、穏やかな方法で世界を平等にする事を諦める。


 かねてからの協力者と共に、権力の効かない世界を作るため、再び行動を始めた。


 最終的に、悪役令嬢は倒れ、かつて恋をした男性にとどめをさされる事になった。


 悪役令嬢は自分の目的を隠すため、嫉妬ゆえの犯行だったと告げる。


 自分の想いが、新しい世界を作ろうとする彼等の足手まといにならないように。


 恋した男から、落胆と憐みの視線を受けながら悪役令嬢はこの世を去った。





 死のうふちで悪役令嬢は気付く。


 すべての始まりの想いを。


 世界のためなどではなく、ただ自分が孤独になりたくなかったからだと。


「どうして友達と一緒にいちゃいけないの?」

「それはお前が貴族で、相手が平民だからだ」

「ただ一緒にいるだけでもだめなの?」

「一緒にいるのもだめだ。ふさわしくないからだ」


 彼らとともに穏やかな方法で世界を変えていけたのなら、その願いはその時点でもう叶っていたという事に。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ