いんすたばえとコールドターキー
水曜ですが、
真っ黒シリーズどうでしょう? って感じです(^^;)
長かった8年、好意的に考えても“動けないからこそ余計に口さがなかった”姑が亡くなり、認知症を患っている舅をどうにかこうにか施設へ追いやることができた。
昨今では平均出産年齢は31歳とも言われているが、それもとうに過ぎ『高齢出産』と言われる歳に……私はなってしまった。
舅姑に奪われたこの年月の大きさを思うと私は茫然としてしまう。
本当なら二人の子供を産み育てているはずだったのに!!
自分達が私に“おんぶにだっこ”で、そんな余裕を私に与えないでおきながら『子供はまだか』と言い続けた彼らに……私は辟易とし、元々“弱い”夫と背を向けて寝る生活は一向に変わらなかった。
こんな状況の中、せめて自分にできる前向きな事として、年寄りのにおいの染みついたこの古い家を少しでも“ワタシ”色に染めたいと……“住まい”のインテリアコーディネートを始めた。
『自然素材の家具や雑貨に、ファブリックなどで色や柄を取り入れ温かみのある空間を演出してゆく』……日照時間の短さに対応するアイデアに溢れた北欧スタイルはマンションの谷間に埋もれたこの家に最適だ!
最初はタペストリー用の生地を買い求める事から始め、観葉植物や家具を徐々に増やして行った。
そして、この“作品”を表現する手立てとして“いんすた”を用いる様になった。
アカにフォロワーも付きホクホクしていたら、こんなコメントが投げられた。
『素敵なダンナ様との生活が目に浮かびます』
私は自分の顔出しはしていない。
ただ
“主婦”とは自称していた。
私が丹精込めて作り上げたこの一角に
ダンナの居場所はない。
それは“景観”を穢すから。
醜い私の“現実”をあからさまにするから。
でも
こんなコメントを貰って
『置物』として……
映える“オトコ”が欲しい!!
そう考えるのは当然!
最初はわざわざ29×32タグのストーンウォッシュジーンズを買って来てウォ-ルナットのセミアームチェアに引っ掛けて写真を撮ったが……そのうちにこのジーンズを履きこなせるような“素材”が欲しくなった。
『マンハント』
なんと心をくすぐる魅惑的な響きだろうか!
舅姑への小間使い労働と子供を産まなかった事で絞り込まれていた私の“体形”がこの時、奏功した!!
私は……同世代はおろかオトコ狩り真っ最中の年頃のオンナ達をも抑え込んで、見目麗しい“素材”を手に入れ、寝乱れた。
その……
寝乱れた“痕跡”すらも温かく包む部屋に佇む美しいオトコの裸の背中……
淹れたてのコーヒーを注いだカップをその手に持たせ、私はスマホのシャッターを何度も切りながらエクスタシーを反芻した。
そんな中から“いんすた”上げした物がバズるのは当たり前!!
自身の心と肉体にもたらすエクスタシーとバズりがもたらすエクスタシー……
この二つの波状攻撃に私は身悶えし、すぐにそのジャンキーと化した。
。。。。。。。。
この物語の最後のシーンは
“いんすた”の為だけに作られたクリスマスディナー……
“誰の手も付けられる事の無い”グリルドターキーが残されたテーブルの傍らで
片側だけに署名捺印された緑の文字色の“届出用紙”を前に……
“コールドターキー”に成り果てた“カノジョ”がうずくまっている。
おしまい
このお話は極端ですが……
なんだかありそうで怖い(-_-;)
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