プロローグ2 スキル選択と出発
「雪人さんですね、こちらこそお願いします!では早速スキルについて話そうと思うのですが大丈夫でしょうか?」
「スキルって剣や魔法のことで合ってます?」
俺が知っているラノベ知識ではスキルは剣や槍などの武器に補正が付き、魔法なら持っている属性を使う事ができる。つまりスキルはその人の才能そのものなのだろう。
この仮説が正しいとすると日本で平凡そのものだった自分はティア様の世界で生きていけるのだろうか?
剣と魔法の世界なんだ、当然人や魔物を殺すことだってあるだろう。
平和な国で育った俺は当然人の命を奪ったことなんてない。
そのことを考えるだけで手の震えが止まらない。
「はい、おそらく雪人さんの想像しているスキルで合っていると思いますよ。あの~どうかされましたか?手が震えていますよ」
「い、いえティア様の世界って魔物や盗賊なんかの人の命を奪ってくる存在もいるんでしょうか?俺は人や動物の命を奪たことがないので不安で」
当たり前だが人の命を奪うのは重罪だ。許されることではないだろう。
しかしこれからはそれが普通にあり得る世界に向かうのだ、怖くない筈がない。
「あ、雰囲気悪くしてしまって申し訳ないです」
自分のせいでこの場の雰囲気を悪くしてしまいティア様に目を向け謝る。
そこには女神のような(実際女神なのだが)慈愛の表情を浮かべるティア様がいた。
「あなたは優しいのですね。しかしこれから向かわれる世界はあなたが命を奪う覚悟を持たなければ命を奪われる側になるのです。あなたの優しさで救われる者もいるでしょう、しかしその優しさが原因で人が死ぬことを起こりうるのです。それを忘れぬようにしてください。......さぁ!暗い話はこれで終わりです!不安でしたら[精神耐性]のスキルを身に付ければいいだけですから!」
俺の不安を和らげるためだろうティア様が明るく振る舞い始めた。
まあまだ異世界にすら着いてないし今から考えることではないよな。
「[精神耐性]?それがあれば精神的苦痛を和らげることが出きるんですか?」
肉体的苦痛は休めばなんとかなるだろうが精神的苦痛は休んだから治るってものでもないだろう。
それを軽減できるなら是非欲しい。
「ふっふっふっそれだけではありません!なんと精神攻撃を防ぐ事も出来るのです!」
精神攻撃を防げて精神の苦痛も和らげることも出きるとはなんて素晴らしいスキルなんだ!これは買いですね!
さっきまでの不安がまるで嘘のように異世界に楽しみしか感じなくなっている、剣や魔法も使ってみたいけど[精神耐性]の方法が俺には重要だ。他を諦めることになってでも欲しい。
「そのスキルをください!!俺にはそのスキルがどうしても必要なんです!」
「分かりました。それで、他にはどんなスキルがいいですか?最近の異世界人は鑑定やら魔法やらアイテムボックスとみんな口を揃えて欲しがるらしいですね。雪人さんは非常に魂の質が良いので普通は1つか2つしかスキルを与たえられないのですが......なんと5つスキルを身に付けられるのです!」
とティア様が自慢気に話す。
......えっ?貰えるスキルって1つじゃないの?俺5つスキル選べるの?ズルでしょ
一般人として畑でも耕して生きようかと思ってたけど普通に冒険者として働けそうだわ。
というか何でティア様がそんな自慢気なんだろう。
「い、5つですか、何かオススメのスキルはありませんか?正直魔法を使ってみたいとは思うのですが、どんな魔法があるかも解らないので教えていだだけないでしょうか」
思っていた以上にスキルを貰えると分かり、異世界ならではの魔法を使ってみたいが何の説明もなしに選んで実はこの魔法全然使えませんとなっては目も当てられない。
ここはしっかりと魔法の説明をして聞いた方がいいだろう。
「魔法ですか、まずどんな魔法を使うにも[魔力操作]というスキルが必要になります。このスキルがなくても魔法が使えないこともないのですが余計に魔力を使うことになりますし、発動まで時間がかかってしまいます無駄しかないですね。」
そうなのか、これは聞いておいて良かった~!もし聞いてなかったら戦闘時発動まで時間かかりすぎて殺されるなんて展開もあり得たのか我ながらファインプレー!
「次に魔法の属性ですが、こちらは7つあります。火・水・土・風・光・闇・無属性です。七大属性魔法とも言われます。しかし何事にも例外はあります、氷や雷そして影といった七大属性魔法と似ているようで少し違うモノが存在します。それらは上位魔法と呼ばれており、威力、範囲どれも優秀です。いつの時代の英雄達も皆上位魔法を持っていました。......一人を除いてですが」
ん?最後なんて言ってた?声が小さくて聞き取れなかった。まぁ上位魔法は強いって言ったんだろ......たぶん。
しかし魔法って色々あるんだなぁどれが強いってわけではなさそうだ。
要は使い方なんだろうな、使用者が違えば同じ属性でも全然違う方向に進みそうだし。
「創造魔法って選べます?モノを生み出せるって色々応用効きそうですけど」
ラノベで定番の創造魔法。これを使えれば他は何も必要ない!ってくらい便利だと思うけどどうだろうか......
あっ、ティア様の目がちょっと怖いな~気のせいだと思うけどなんか寒いな、というか白い霧のようなものが体から出てるけど大丈夫かな?もちろんティア様の心配じゃなくて僕死なないよねって心配だよ。
「いいですか!!創造魔法とは無から有を生み出す魔法です。その気になれば世界そのものを生み出すことだってできるんですよ!人が持っていいスキルではないのです!......まあ使う魔力が莫大すぎて神でもほとんど全然使えないけどね☆」
わざとらしく舌まで出しちゃってカワイイじゃないか。
にしても創造魔法ダメなのか~強すぎるみたいだし仕方ないのかな。
「何かどんな状況にも対応できる便利な属性ないですか?」
「そうですね、人に限らず魔物もそうですが自分に合う適正魔法というのがあります。雪人さんの適正に合う魔法が一番だと思うのですがどうでしょうか?ほとんどの人は七大属性魔法に当てはまりますが一部の人は上位魔法の適正がありますから、雪人さんもおそらく派生魔法の適正を持っていると思いますよ。それくらいなら私の[神眼]を使えば分かります」
そう言うとティア様の顔が急に真面目な表情になる。おそらく[神眼]というスキルはそれほど集中しなければ使えないスキルなのだろう。
「分かりましたよ雪人さんの適正!雪人さんの適正は.....氷雪です!氷でも雪でもなく氷雪!初めて見ましたよ!過去に氷魔法を使う英雄がいましたがその人より強い魔法かもしれないですね!」
氷雪か、俺の名前の雪が魔法にも入るとは......まあ強いらしいしいいか。
これで5つ貰えるスキルの内3つ選んだわけだが、残り2つどうしようかな
「適正魔法も分かりましたしあとスキル3つ」どうしましょうか?」
......3つ?はてなぜ3つなのだ?2つではなく?[精神耐性][魔力操作][氷雪魔法]あれ?ちゃんと3つだよね?ティア様もしかして何か間違えてない?
「なんですかその頭が残念な子に向けるような目は、もしかしてスキルは2つだろって思ってます?適正以外の魔法を授けるとなるとそれも入れますが雪人さんの場合それはただの適正ですからね〜もとから持っている才能ですから数に入れていません」
あ、そういうことね、元から持っているから授ける必要ないよねってことなのか。
だからあと3つなのか、すみませんティア様頭が残念な子は俺だったみたいです謝罪いたします
「そうでしたか、すみません俺が間違っていました」
いやそうなると俺あと3つスキル選ぶんだよね?どうしましょうかそんなにスキル選ぶとなると逆に何にすればいいか分からない。
「その顔はあと3つのスキルどうすればいいか悩んでいる顔ですね!そうですねぇ[鑑定][アイテムボックス]の2つは持っていると便利ですよ。[鑑定]を持っているとその物の詳細が分かりますし、スキルレベルが上がれば人や魔物の持つスキルも分かりますから持っていて損はないです。アイテムボックスもあると荷物を気にせず動けますからね、戦闘時にも何も持っていないと思われるので結構油断してくれますよ」
なるほど、ラノベによくでる鑑定とアイテムボックスか、確かに持っていて損はなさそうだしそれにしようかな。
「ではその2つもお願いします。それと最後の1つはせっかくですから魔法剣士を目指して剣術でお願いしてもいいですか?」
男の子なら憧れるよね魔法を使える剣士、カッコよくない?近接戦闘時には剣を使い中遠距離戦では魔法で攻撃。素晴らしいですね
「剣術ですか、確かに魔法だけでは近づかれてしまえば弱いですからね剣術はアリだと思います。では[精神耐性][魔力操作][鑑定][アイテムボックス][剣術]でよろしいでしょうか?何か変更点がありましたらまだ変更可能ですよ」
「変更というより質問なのですが、スキルは進化とかしますか?剣術から剣聖みたいな感じに」
スキル進化ができるならそれを当分の目標として生活してみたいが、そんなものはないと言われてもそこは現実と創作の違いといったところだとう。
「スキルの進化はありません。ただ、派生はありますよ。剣術から大剣術になったり短剣術になったりね。それと剣聖はスキルではなく称号ですよ」
なるほど進化ではなく派生と来たか、それに剣聖は称号なのかカッコいいな〜剣聖そう呼ばれてみたいな。
「何か他にスキルについて質問ありますか?今ならまだ質問を受け付けますが大丈夫ですか?何もなければ早速私が管理する世界に行っていただきたいのですが」
「スキルについてではないのですが、俺はその世界で何をすれば良いのですか?魔王の討伐は必要ないと言っていましたが他に何かないのですか?」
魔王の討伐はなくても他に何か目的があってもおかしくない。
「本当に何もありませんよ。雪人さんの好きなように過ごしてください。人を殺して指名手配される犯罪者になろうが国の窮地を救い英雄になろうが、それは雪人さん次第です。私はただ異世界に行きたいという強い願いを叶えた。それだけですから」
そう言うと教室を包んでいた光とはまた何かが違う光が僕を包む。
意識が遠くなっていき、ティア様の姿も霞んで見えてくる。
「また僕に色々教えてください!絶対会いに来ますから!行ってきます!」
その言葉を最後に僕の意識は途絶えた
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「それにしても雪人さんは不思議な人でしたね、まるで自分が平凡かのように話していましたが、才能の塊じゃないですか自覚ないのかもしれないですが」
頭の回転が遅いとか身体能力が低いって言っていたが誰と比べているのか、少なくとも両方とも地球の人間の上位0.02%に入るくらい優秀なのだが、確かに天才と呼ばれる人間の中では平均かもしれないが頭脳と身体能力両方でその域にいるのは普通ではない。