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運命の番は呪いか祝福か?  作者: 重原水鳥
妹・雪菜と運命の番
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13

「不躾だが、セッカ嬢。伺っても良いだろうか」

「私にお答えできる事でしたら」


 ブラッドリー殿下はアリステラ殿下の腰かけている椅子の背に手を置きながら言った。


「オオカミ……以外の、獣人の特徴で、特に目立つ物などは……あるだろうか」


 オオカミ以外。何故それを私に聞くのか、少し不思議ではあった。

 だが何の事を聞きたいのかは想像がつく。


 今この場でブラッドリー殿下やアリステラ殿下に必要な情報と言えば、アリステラ殿下が嫁がれる事になる我が王家の人々の事だろう。


 歴史上初の獣人国家、アールストン。

 多種多様な種族……獣人、鳥人、爬人、魚人らを纏め上げた、初代国王。解放王とも建国王とも呼ばれる方の血筋を引く者たちが、現在も王族としてアールストンを纏め上げている。


 王族は鳥人だ。

 鳥人はほぼ全てが皆背中に翼をもつ。

 勿論だが、頭の上に大きな耳を持ちふさふさの尻尾を持っているオオカミの私たちとは全然異なる。なので彼らの特徴もまた異なるのだ。


「聴覚という点では、殆どの鳥人はオオカミには遠く及びませんし、むしろ……そうですね、お二人は私の母には会われましたよね。私の兄の婚約者とはお会いになりましたか?」


 ブラッドリー殿下とアリステラ殿下はお互いに顔を見合わせた。その後ろにいる騎士たちもピンと来ていない様子だった。


「まだ会われていない様子ですね。ただ、朝の目覚まし代わりに鳴り響く鳴き声はお聞きになりましたでしょう」

「え、ええ。とても大きなニワトリの鳴き声……ですわよね? 王宮にはおりませんでしたから、初めて聞き、少し驚いてしまいましたの。……えっ?」


 アリステラ殿下は私の質問に答えながら、途中で気が付いたようだ。少し困惑した顔をしている。それに私は頷いて見せた。


「あの鳴き声は、兄の婚約者で……将来的に私の義姉になる方の声です。朝一で鳴くのがお決まりなのですが、彼女はニワトリの鳥人でして、まあ、種族としてはかなり異なりますが、大きな範囲では鳥人ですので…………彼女と、私の母とを比べた形でのお話になります。あくまで我が家での場合ですが」


 と、長々と前置きしたのは、相手が私より遥かに高い地位の人だから。


 彼らに対して曖昧な事を告げて、後後から「話と違った」となったら大変だ。こちらにだます意図が無くても、上の立場の人間がそう思ってしまえば、下の身分はどうしようもなくなってしまう。

 アリステラ殿下たちがそうとは限らないし、今触れ合っている範囲ではとても良い人たちだと思う。だが王族がただ良い人な訳がない。普段は国の中心からほど遠い領地で暮らしている私といえども、そういう事は分かっているつもりだ。彼らが不幸な目にあったのは事実、でも私が出来るのは凍狼侯爵家の長女として節度を持った関係を築くだけだ。


 だからこんなに回りくどい事前説明をして、その上で私が見て感じている範囲の事を話すのだ。


「聴覚は、母の方が良いと思います。日常生活で問題がある訳では全くないですが、私たちが聞き取れている範囲よりも聞こえていないようですね。目もあまり良いとは言えないのですが……これは義姉がニワトリだからで、大概の……空を飛べる鳥人の多くは目がとても良いそうです。それこそ、私たちでも視覚だけでは分からないほど遠いものも見通せるとか。それ以外となりますと……すみません。我が領地はあまり鳥人が多くはないので……」

「いいや……とてもためになる話だった。ありがとう。君には最初から沢山助けられているな」

「過分なお言葉です」

「君はずっとこちらに? 侯爵家の令嬢という事は、王都にも行くことはあるのだろうか」

「そうですね、普段は領地にいる事が多いですが……父も王都に行かなくてはならない時期もありますので、そういう時には家族そろって王都に滞在いたします」


 お父様が単身で王都に……何てことはない。ありえない。ただでさえお母様を溺愛しているお父様が、お母様を領地に残していくはずがない。

 お父様がお母様を連れて行かないのは戦場や危険な所だけだ。

 なので毎年、春先から初夏にかけての社交のシーズンは、私たちも王都で生活している。今年は春先だけで社交を終えて、早々と領地に帰ってきていたが……どれぐらい滞在するかは、その年毎に違う。

 今年は、お母様が体調を崩されてしまった事から、一度王都に出向いたものの、早々に家族そろって領地に帰ってきた。


 私がその旨を説明すると、アリステラ殿下の顔が輝いだ。


「まぁっ! では次の社交シーズンで、セッカに会う事が出来るのね!」

「良かったよ。アリステラはこの国に知り合いがいないからな。顔見知りがいれば少しであるが安心できる」


 盛り上がり始めた御兄妹に、私はサッと血の気が引いた。まずい、その話題は、まずい。そういう意図で尋ねてこられたのか!


「も、申し訳ありません……次の春から夏ですが、恐らく私はアールストンにはいないのです」

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