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運命の番は呪いか祝福か?  作者: 重原水鳥
妹・雪菜と運命の番
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内容を一部訂正いたしました。

 ローザス王国から来た人々が全員見つかるのに、丸一日がかかった。恐らく我が家が協力していなければ、もっと時間がかかってしまっていただろうと聞いた。

 私たちが見つけたのはほんの一部分だったのだそうだ。敵も味方も入り乱れ、実際の戦いの範囲はかなり広かった。

 恐らく騎士たちは王子や姫が遠くに逃げれるように足止めをしたり、引き離すために遠くへと敵を追いやっていたのだと思う。


 結局、ローザス王国から来ていた使節団たちの内、おおよそ三分の二が命を落とした結果になり、彼らの遺体は丁寧に洗われ布に包まれた。ここが涼しい北方の領土とはいえ、早く対応しないと遺体が大変な事になってしまう。本来は彼らの遺体をすぐさま祖国に返す対応をした方が良いのだが、その時間的な余裕がないと王子は言った。……らしい。


 そもそも、今回の目的というのは、アリステラ殿下の輿入れだったらしい。

 輿入れ先は我が国の王子殿下。つまりは王族同士の結婚だったらしい。そういえば数か月前に王子の一人が、番を見つけたらしいと噂が出ていた。どうやらその相手が、アリステラ殿下だったようだ。

 ローザス王国側としては、一日でも早くアリステラ殿下の身を無事に王家と送り届けなければならないという。ブラッドリー殿下だけでなく、他の騎士たちまでもが彼の意見に強く頷いていたようだ。その反応がどうにも過剰だったと兄が教えてくれた。

 時間の制限がよほど厳しい、かつ、真面目な性格の方々らしいと兄は言った。


 ブラッドリー殿下からお話を聞いたお母様の発案で、命を落とされた方々の遺体をローザス王国に届けるのを、我が侯爵家が担う事になったとか。


 このあたりは難しい責任問題が絡んでいる。


 アリステラ殿下を御守りし護送するローザス王国の皆様方が被害を負ったのは、凍狼侯爵家の領地内での事である。つまり普通に考えた時、責任問題は我が家にある。


 だがしかし、彼らが領地を通る事は、我が家からすれば寝耳に水の事。一切報告されていない、聞いていない事柄だったのだ。事前に報告されていればお父様だって護衛や案内人を用意していただろうが、何一つ連絡が無かったため、用意していなかった。


 どうしてそんなことになってしまったかと言えば、原因はローザス王国側が道を間違えてしまった事に起因する。


 本来ローザス王国側から王都に向かって真っすぐ、最短距離で進む場合、我が領地の横の貴族領を通っていくことになる。ところが隣の領地に向かう途中で、ローザス王国側は道を間違えてしまったのだ。

 事前連絡のあった隣の領地では案内人や護衛が用意されていたが、彼らとローザス王国側が合流するより前の段階で道を間違えてしまったために、どちらも相手が道を間違えていると気が付く事が遅れた。


 ローザス王国側も異変に気が付き、戻ろうと話が出たところで……襲われてしまったという事だったのだ。


 小さなミスが重なった結果、大きな被害が出た。最悪の状況だ。


 こうなってくると、雪菜の行動も、褒められるような話になってきている。

 何せあの時、私や護衛たちは異変に気が付きつつも、危険だからと屋敷に帰ろうとしていた。もし私たちがあのまま何もせずに帰っていれば、アリステラ殿下たちは本当に命を落としていたかもしれないのだ。雪菜が様子を見に行きたいと強く主張した事によってアリステラ殿下は命が助かり、事の異変も早くに発覚した。

 確かに雪菜はローザス王国側の心境など全て無視して自身の番であるブラッドリー殿下に飛びついていたが……命の問題と比べれば、些細な事だ。


 だから気にしていないのだという話を、私はアリステラ殿下ご自身から聞いていた。


「ですからセッカ、セツナをあまり責めないでくださいませ」

「……かしこまりました」


 今私は、アリステラ殿下と二人で我が家の一室でお喋りをしている。

 何故かと言えば、ブラッドリー殿下の希望だと、お母様から朝、説明された。


 ブラッドリー殿下は今回のアリステラ殿下の護送のリーダーで、朝一から昨日に引き続き始まった被害者の捜索に参加する必要があると主張されたらしい。

 しかし襲われたばかりのアリステラ殿下を護衛たちがいても一人にするのは出来ればしたくない。


 そこで、アリステラ殿下たちを助け、同性で、年がそう離れていない私であれば、アリステラ殿下の話し相手になれるだろうと望まれたという訳だった。

 ここに雪菜の名前はない。アリステラ殿下はこう言うものの、やはりブラッドリー殿下の中に雪菜へのあまり良くない感情があるように見える。


 ……ちなみに。

 実際には指示する隊長が別にいたとしても、名目上のトップが高い地位の人間になる事はよくある事だが、ブラッドリー殿下の場合は長く騎士としても鍛えており、名実ともに今回の護送のトップだったらしい。


 探しに行くのは部下に任せても良いだろうに、わざわざ襲われた次の日には森を歩き回るとは、よほど責任感が強い真面目な人か…………同じ屋敷の中にいる雪菜に会いたくないかのどちらかだろうが、さて、どちらだろう。

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