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運命の番は呪いか祝福か?  作者: 重原水鳥
妹・雪菜と運命の番
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ブラッドリー・ジョージ・アンブローズ・バートランドの事情 02

 ”水を注がれなければ咲けない花”

 ローザスの事をそう揶揄するものがいるという事を、ブラッドリー・ジョージ・アンブローズ・バートランドは知ってしまった。

 実際、ローザス一国の力だけだったならば、とっくの昔に国が無くなっていただろう。ローザスは美しい国だけれど、それ以外の目立つ強みはない。国民全体を養えるような食料を生産できる土地もないし、他国に高く売れる鉱石等が採掘できる訳でもない。国を彩る花は様々な形で売り出されているけれど、必需品ではないそれは何かあれば最初に買われなくなるものだ。……だからこそ昔からローザスは多くの国と婚姻関係を築き、強い国の後ろ盾を得て独立を保ってきた。その結果(他人(他国)が)水を注がなければ(守らなければ)咲けない(独立出来ない)()等と揶揄されるようになった。


 しかしブラッドリーはそれを恥だとは思わない。多くの国が隣り合い、様々な理由で問題が起こるこの世の中で生き残る術を模索し、実際に国を守ってきた歴代の国王たちを、王族たちを、誇りに思う。

 だって多くの国とやり取りをして国を守るというのは、とても難しい事だ。どこか一国だけの顔色を窺って、別の国の怒りを買い滅んだ国の例は少なくない。

 そんな難しい問題を、ローザスは乗り越えてきた。……だからこそ、ブラッドリーも国を守るために会ったこともない遠い国の王女を娶る事に、抵抗なんて無かった。王妃に言われるがままに勉学に励んで知識をつけた。


「兄殿下をお支えするのです」

「ローザスのために生きるのです」

「かの御方の役に立つことを幸せと思いなさい」


 ブラッドリーについた家庭教師たちは示し合わせたようにそう言っていたが、そんな事を言われずともブラッドリーは兄に盾突く気などなかったし、国を守りたいと一王子として願っていた。

 敢えてそれらと違う願いがあったとすれば……それは妹アリステラの幸せだ。


 アリステラは兄の欲目を抜いても、年々美しく育っていっていた。母によく似た美しい妹はブラッドリーの自慢であると同時に、悩む理由でもあった。

 王妃は美しい妹を疎む……事はなく、むしろローザスの代表として立つ時に目立つように、いつも妹を美しく着飾った。若いからこそ許される少し派手な花の装飾は、正直な所シンプルなものが好きなアリステラの趣味では無かったが、王女という広告として求められている仕事をアリステラは必死にこなしていた。王妃はブラッドリーと同様にアリステラの事も、王子たちの治世を支えるための道具としてしか見ていないが蔑ろにはしなかったので、ブラッドリーも否やは無かった。時折妙な事を考える貴族が寄ってくる事はあったが、それはまだ大きな悩みとは言えなかった。


 可笑しくなったきっかけは、王妃が整えていたアリステラの婚約を、国王が一存で白紙にしてしまった事だっただろう。


 国外とのつながりと国内とのつながり。どちらもしっかりと得るため、王子王女たちの婚約は王妃が考えて結んでいた。

 第一王子の妻は北の国の王女。

 第二王子の妻は国内の有力貴族の娘。

 第三王子であるブラッドリーは、当時不穏な気配を見せた東部の国々での戦争の火種に対抗するために、東側の隣の隣の国の王女と婚約している。手紙でのやり取りしかしていないものの、ブラッドリーと王女の仲は悪くはなく、無事結婚すれば未だに戦争の気配を見せている国への牽制となるだろう。

 そして末王女であるアリステラは、北西の隣国の大貴族の嫡男と縁組される予定だった。その予定は内内では決まった事であり、あと少しで公式に婚約が発表される筈だった。


 ところがその予定を、国王は全てひっくり返した。


「アリステラはペンバートン侯爵と婚約させる」


 周りが止める間もなく、その事が国中に通達された。その言葉にブラッドリーははじめ聞き間違いかと思った。恐らく多くの貴族も間違いかと思っただろう。


 何せペンバートン侯爵はその時六十を超えていた。

 婚約発表がされた時アリステラは十二歳。

 二人の年の差は、ほぼ五十である。

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