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運命の番は呪いか祝福か?  作者: 重原水鳥
妹・雪菜と運命の番
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ブラッドリー・ジョージ・アンブローズ・バートランドの事情 01

雪花サイドと違い、第三者視点の小説になります。混乱するかもしれないです。

サクッとすむつもりが思ったよりブラッドリーのターンが長くなりましたが、暫くお付き合い頂ければと思います。

 ローザス王国の第三王子であるブラッドリー・ジョージ・アンブローズ・バートランドは、幼い頃、己が暮らす宮殿が世界で最も幸せな場所だと思っていた。

 ローザスの王族が暮らす宮殿は常に美しい花々が咲き誇る、今でも誇らしい場所である。花があるというのは何も宮殿だけでなく、ブラッドリーはローザスの土地で一輪も花が咲いていないような場所を見た事がない。どこにいっても、春夏秋冬、朝昼晩、何かしらの花が咲いている。ローザスはそんな国だ。その見た目と同じく、中身もいつも美しい場所だと幼いブラッドリーは思っていた。美しく優しい母、同じくいつでも優しい父、可愛い妹。それがブラッドリーの知る世界の全てだった。


 そんな幼い王子の幻想は、あっさりと打ち砕かれた。


 ブラッドリーの母である側妃が毒殺されたのだ。

 犯人はすぐに捕まえられ処刑されたが、それで母が生き返る訳でもない。側妃(ははおや)を亡くしたブラッドリーと妹のアリステラは酷く泣いて落ち込んだ。しかし兄であったブラッドリーは嘆くだけではいられなかった。

 それまで側妃はブラッドリーとアリステラに宮殿の醜い側面を見せないようにしていた。それを、母の死後、ブラッドリーは知った。父王の寵愛を受ける、身分が低い貴族だった側妃……彼女を政治的に利用しようとする者は多くいた。実際、側妃を殺したのはそういう政治利用しようとしていた一派の人間だ。……ならば勿論、側妃の子供であるブラッドリーとアリステラを利用しようとする者も多い。理由は様々だ。野心がある者、王妃たちが気に食わない者、ただおこぼれが欲しい者……。側妃がいなくなったからと欲に塗れた瞳と声で、堂々と後ろ盾になろうとしてくる貴族はかなりいた。側妃には頼れる親族等おらず、それはつまりブラッドリーとアリステラにも頼れる親族がいないという事でもあった。

 父であった国王に頼れば良いという考えが最初にはあった。しかし側妃が生きている頃はあれほど熱心に来ていた父は、側妃の死後めっきりブラッドリーとアリステラの前に現れない。盛大なものとされた側妃の葬式の場で、大袈裟に悲しんだ様子を見せた父の瞳に冷たいものが見えた時、ブラッドリーは父を頼る事を諦めた。


 当時アリステラはまだ四歳。母を恋しがって泣く妹の身を護るためにブラッドリーが選んだ庇護者は、王妃だった。

 王妃と側妃の仲が、側妃の生前どんなものであったのかをブラッドリーは知らない。ただ、結論から言えば、王妃はブラッドリーの要求を呑み、ブラッドリーとアリステラの二人の後ろ盾となってくれた。

 代わりに求められたのは二つ。玉座を絶対に狙わない事と、国を守るために政略結婚をする事。

 元々ブラッドリーには王になりたいなんて野心はない。兄王子二人は十近く年が離れており、幼いブラッドリーには彼らの地位を脅かすなんて事は、想像も出来ない事であった。政略的な結婚をする事は先の事過ぎてよくわからなかったが、そもそも今を生ききれなければ未来がないのだから、気にする余裕などなかった。

 王妃の庇護を得た事で、母が亡くなってから初めて、ブラッドリーは安心して眠れるようになった。

 ブラッドリーとアリステラが王妃の下についても、国王は何も言わなかったし反応もなかった。もしかしたら表面上は何も言わなかっただけかも知れないし…………本当に、興味が無かったのかもしれない。どちらなのか、ブラッドリーは今でもよくわからない。


 王妃の庇護を得たのち、ブラッドリーは王妃の思惑のままに生きる事になった。悪い扱いを受けたという訳ではない。王妃も、そして王妃が産んだ二人の息子――第一王子と第二王子も、どちらも優秀で、国内での地盤は問題ない。寵愛を受けていた側妃もなくなり、その子供たちも王妃の傘下に下った現状で、国内は盤石な状況とも言えた。だからこそ王妃の目は外へ向き、ブラッドリーが十の時に外国の王女との婚約が決められた。


 その頃にはブラッドリーは理解していた。自分が世界で一番幸せで美しいと思っていた国は、確かに美しさならば他国にも引けを取らないが、けれどどこか脆く弱い国であると。

 ローザスは六つの国に囲まれている。古くからその国々との間で何度も戦争が起きながら、他国との政略結婚や後ろ盾をうまく得る事で辛うじて生きながらえた国――それがローザス王国という国だった。

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