探索と思考と
夕方、あんなにも青かった空は、もうその色を変え始めていた。
「さて、一度現場に行ってみるかな」
放課後、一度家に戻った僕は、制服から私服に着替え雪江さんから送られた資料を手に、事件のあった現場へ向かうことにした。
現場は、w市末広
港湾地帯が近くにあるが、民家やアパート・マンションなんかもある複合地区だ。
一昔前なんかは、水産物を積んだ外国船なんかがたくさん入港していたので、外国の人がよくいたもんだ(僕が見た外国の人は、良くウォッカを片手にしていたが、お国柄なんだろう)
被害に会った人は、この地区のマンションに住んでいたようだ。
現場は、市道に面した路地。
資料によると、被害者の家へ抜ける事が出来る近道のようだ。
現地は立ち入り禁止になっておらず、警察の現場検証があったのか疑いたくなるくらい普通。
恥ずかしい話だが、気付かずに通り過ぎそうになってしまった。
ねぇ、人が1人ここで消えているんだよ。
もう少し物々しくても良いんじゃ無いかな?
僕の心の中でぼやくが、そんな事に意味がないことを理解してる。
辺りはすでに朱に染まり始めていた。
現場のそばにはまばらながらも、街路灯がある。
ただ、繁華街などと比べると寂しい事は確かだ。
また、付近には民家もある。
何故、誰も気付かなかったのだろう。
辺りを見回しても、特段変わったところはないようだ。
一体、此処で何があったのだろう。
民家があるのに誰も気づかなかったと言うことは、一瞬の内に「何か」が起こったのだろうか。
「何か」とは何だろう。
それと、資料によると被害者が特定されている。
だけど、被害者の遺留品が見付かったと言う報告は無い。
ならば、被害者はどこに行ったのだろう。
僕の少ない脳ミソでは答えが出せる気がしない。
それでも、考える。
何か見落としがあるかも知れない。
そして、僕が思考の海に溺れそうになっていた。
どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
当たりはすっかり暗くなっていた。
弱々しい太陽はその姿をすっかりと隠してしまい、少し離れた所にある、街路灯が己の存在をアピールし始めていた。
…寒くなってきたな。
帰るか。
幾ら考えても答えが出ない。
一度、家へ帰りこれからの事を考えるべきか…。
学校で仕入れた話のも気になるしな。
僕が、その思考の方向性を変え始めた時
「この…喰った娘っ…は、うめ…た…ぁ…」
ん?
何か聞こえたぞ?
何処からか声が聞こえてきた。
一気に現実に戻された気分だ。
しかも
喰った?
娘?
良く聞き取れなかったが、なんだか「ヤバ」そうな声だ。
僕は腰を落とし、身構える。
そして、辺りの様子をうかがう。
「今いる若造は、どんな味かのぅ」
はっきりと聞こえた!
後ろだっ!
急ぎ身を翻し、後ろを向く。
だが、誰も居ない。
今いる若造
…たぶん、僕の事だ。
しかも、味がどうのとかって。
喰う気かよっ!
ヤバいぞ、これは。
僕の背中に冷たいものが流れた。
「おや、ワシの声が聞こえているようじゃのう。どうやら御同類のようじゃ。どれ、同類であるなら、生き肝が喰いたいのぅ」
今度は前から声がする…。
一体、何処からだ。
声の主らしき人物は見えない。
汗が吹き出る。
焦りだけが募る。
いつも読み辛い文章でごめんなさい。
もう少し上手く書けるように頑張ってみます。