学校にて
吉田が言ったことが気になる。
も、寝不足のせいか授業中睡魔が僕に襲いかかる。
もうなんど船を漕いだだろうか。
挙げ句、それを先生に見つかり黒板相手ににらめっこをする羽目になってしまった。
むぅ…。
自業自得とはこの事なのか。
「ハッハッハ。お前、黒板と何分見つめ合ってんのよ?」
「うるせー。それよりも、朝の話だ。続きを聞かせろ」
おうよ!と、答えると同時に吉田は弁当箱をドンと机においた。
「飯を食いながらで良いよな?まさか、都市伝説についてお前と話すことになるとは思わなかったぜ」
……いいから話せよ。
俺のイラつきを感じたのか、吉田はもったいぶって「ゴホンッ」
「さて、なんだったかな。そもそも都市伝説って言うのは大体が皆が知っている話だろ?」
俺は知らない事の方が多いけどな。
「で、その話の内容が微妙に食い違いがある。登場人物の性別だったり、年齢だったりが違ったりって奴だ。俺は、この事を都市伝説の類型として分類している」
そんなに似たような話があるのか?
「疑ってるな。まぁ、そうだろうな。………そうだな」
吉田は顎に手を当てて少し考える風だ。
「メジャーなところでは、口裂け女の話だな、口裂け女に出会う人間も様々であるし、助かる方法も幾つかある。また、口裂け女に襲われる時も幾つかのパターンがあるんだ。つまり、似ている話って事だ。こーゆーのを類型の話って言うんだ」
なんだか、妙に分析してやがるなぁ。
「それで、朝の話には類型の話がないってどういう事だ?」
疑問を一つぶつけてみた。
「俺には都市伝説愛好会の仲間がいてな。そいつらが、揃いも揃って全く同じ話を掴んできたんだ。皆それなりの愛好会だ、そいつらが似たような話を仕入れてる事ができないって事は、類型の話が無い。もしくは、まだ、生まれていないって事になる。しかも、話を仕入れた時期もほぼ一緒。つまり、この話は誕生して日が浅いって事になるんだよ!」
な、なんだってー!
吉田の語勢に押され、思わず叫びそうになってしまった。
あぶない、あぶない。
「つまり、都市伝説の元になった出来事が最近起きたって事か?」
もし、それが事実なら元になった出来事が最近あったのだろう。
そうならば、僕の仕事について、手掛かりになるかもしれない。
「かもしれないな。だが、俺は都市伝説に興味があるのであって、元になった出来事には、あまり興味がない。この話がこの先どんな風に「育つ」のか、それが楽しみだよ」
…吉田、お前って…。
なんにせよ、他に手掛かりがない以上この話の線から探ってみるか。
「吉田、その話についてもっと詳しい話は知らないか?」
知ってるぜ。と一声返し、吉田は弁当箱から卵焼きを一つ取りだし、口中へ放り込んだ。
吉田から聞けた話は多少細かいデティールが加わったくらいで、朝のものとさほど変わりはなかった。
だが、確認出来たことは
・被害者は夜に出る
・w市で起きた事である(この街)
・影に何らかの関係がある
吉田からとの話で気付いた事は大したものではなかったかも知れない。
だが、他に情報が無い以上これに賭けてみるのも悪く無いのではないか?
そんな考えが僕にはあった。
よし、放課後から調べはじめてみるか。
僕は弁当の残りを掻き込みながら、そう考えていた。