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カードマスターの流浪旅  作者: 八神清吾
第一章 放浪の旅
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ヴァンパイア討伐

次の日、冒険者ギルドに挨拶を済ませると湖上の街グースへ旅立った。

オートマタの操縦する馬車でゆっくり進んでいると、いきなり魔物の気配がした。


「ゴブリンか。どうするかな」

ゴブリンの群れのようだが倒しても大した経験値を得られないので俺は悩んだが、放っておくこともできずに倒しておくことにした。

ゴブリンの群れに向けてサンドボムを放つと耳から血を流してバタバタと呆気なく倒れた。


「あれ?もう死んだのか?」

念のために、カード化してみると問題なくカードにできた。


弱い魔物には効果覿面のようだ。だが、血の匂いに誘われた強い魔物が近付いてくる。

そして現れたのは大きな熊の魔物だ。

体長は俺の三倍はありそうなカラフルな緑の毛の熊だ。


ゴブリンと同じようにサンドボムを放つと耳から血を流し、ゴロゴロと地面を転がりながら、苦しみもがきだした。その隙に頭に銃弾を撃ってとどめを刺した。

カード化すると名前はグリーンベアとそのままだった。


グリーンベアを死獣隷属すると他のベアの魔物がいないか森に入り、探すことにした。

探した結果、ブラックベア、アーマードベア、クリムゾンベア、オウルベアの各一匹を死獣隷属にできた。


それから馬車で二日進むと夕暮れ時に湖上の街グースに辿り着いた。


湖上の街グースは湖の中に浮かぶ小さな島と言う感じだ。街に入る橋が二箇所に築かれ、馬車でも入れる大きさの橋だった。何故か街の家々は青い屋根が多く、桜のような花が咲いている。中でも湖面に映る景色は美しく、最高だとしか表現できなかった。


早速、街に入ると水虎亭を予約し、冒険者ギルドに向かった。

冒険者ギルドでゴブリンの素材を買い取ってもらうと依頼ボードを確認して見た。


依頼の殆どがスライムで、その中でまだ遭遇したことのないスライムが湖にいるらしく、キングスライム、バブルスライム、泥を好むヘドロスライムの討伐依頼があったが、俺は依頼を受けるのをやめた。


キングスライムは湖の水量が少なくなると水を作り出し、増えれば水を吸収してくれるそうなのでこの街にとっては必要な魔物だ。


バブルスライムは水中でブクブクと発生させた泡を別の生き物が利用しているらしいので、バブルスライムを倒すと生態系が変わってしまいそうだ。


ヘドロスライムは泥を取り込み、水を綺麗にしてくれるそうだ。


何故、湖のためになる魔物を倒す依頼があるかと言うと、スライムの魔石に水、泡、浄化の能力があり、それを欲しがる人がいるからだそうだ。ただ、水中の魔物を倒すのは難易度が高いそうなので安心だ。


俺は湖の中を見たくなり、フライフロッグの皮で作ったウエットスーツと水の民の指輪で湖に潜ることにした。そう言えば、アイテムに変身の指輪、経験値二十倍の指輪、魔力強奪の指輪、長寿の指輪、そして水の民の指輪と何故か指輪が多い。

今度、入手する機会があるなら、是非、ネックレスにして欲しいものだ。


ケルピーと共に湖へ潜ると、水の民の指輪に魔力を注いだ。

指輪の効果で水中にいても普通に呼吸ができる上に指と指の間に薄い膜の水掻きができたことで、水中を自由に泳げる。


綺麗な水中を泳いでいたのだが、魔物の気配はするのに魔物の姿が見えない。

スライムの身体自体が半透明のせいか水中では視認できなかった。そこで俺は目を瞑り、立体視スキルを使うことにした。スキルを使うと魔力や気配で目を瞑っていても立体的に魔物の位置が認識できる。


最初に見つけたのは、キングスライムで体長が五メートル以上もあり、縦にも横にも大きく、ぷよぷよと水中を浮かんでいる。

バブルスライムはブクブクと泡をだしているのですぐに見つけることができた。

ヘドロスライムは体内に吸収したヘドロのせいか、茶色い姿で土と同化している。


透明度の高い湖で魚やスライムを二時間ほど泳いで楽しむと俺は水虎亭の宿に帰った。

狩りはできなかったが、面白い体験が出来たので俺は満足だ。





二日後、俺はこの街から離れ、冒険者ギルドからの緊急の指名依頼である吸血蝙蝠討伐に向かった。

何でも家畜を飼育し、乳製品、肉、卵、皮革など畜産物で有名なブルーゲという村で、二日前から急に現れた吸血蝙蝠の群れに家畜数十頭が襲われ、甚大な被害を受けているそうだ。


普通はSランクが受ける依頼ではないのだが、吸血蝙蝠の数が問題で数万匹もの数が一斉に襲ってくることから、冒険者ギルドでは吸血蝙蝠の群れを操るものがいると考えているそうだ。


何故なら、吸血蝙蝠は群れで動くことはあっても人里を襲うことはなく、普段は森の弱い生き物や死骸の血を吸っているだけの弱い魔物だそだからだ。


俺の役目は吸血蝙蝠とそれを操っているものの正体を暴き、討伐することだ。冒険者ギルドの話では人型の魔物であるヴァンパイアではないかと考えているようだ。


ヴァンパイアの存在は知られていても詳しい特性や能力はまったくわかっていないそうだ。

吸血鬼と言えば、見た目はTVや映画で見るような人間に似た生き物を想像してしまうのだが・・・まあ、確認すればわかることだ。


俺は急いでブルーゲ村へ急いで行くため、インフェルノウルフに乗って向かった。

村に到着すると村長に吸血蝙蝠がやってくる方角を聞いた。


「あの森の奥ですが、貴方一人ですか?」


「そうですが・・・何か?」


「相手は数万匹もの吸血蝙蝠なのですよ。若い貴方一人ではとても無理じゃないですか?」


「心配する気持ちはわかりますが、俺はこれでもSランクですから、何とかしてみせますよ」


「!?Sランク!失礼しました」

俺がSランクとわかると途端に村長の態度がかわった。

こんなことなら、最初にギルド証を見せておけばよかった。


早速、村長に教えてもらった森に入ると、俺は気配察知を広範囲に広げた。森の奥に気配が密集箇所を見つけた俺は急いでそこへ向かった。


気配がした箇所に行くとそこは洞窟だった。やはり、蝙蝠と言えば洞窟だよな。と、言うことは吸血蝙蝠も弱点は刺激臭か。


俺はグリフォンを召喚すると洞窟へ向けて風を起してもらい、日本で買った蝙蝠が苦手な刺激臭を大量にスプレーした。バタバタと音が聞こえてきたので、洞窟の入り口に粘着力を高めた念糸で幾重にも蜘蛛巣を張った。


洞窟から逃げ出した吸血蝙蝠の群れが、一斉に蜘蛛の巣に捕まり身動きできずにバタバタともがいているところへグリフォンのエアーカッターで切り裂いた。これで吸血蝙蝠の討伐完了だ。後は洞窟の奥にいる強い気配の魔物だけだ。


吸血蝙蝠を操っているものの正体を確認するために洞窟の中へ入って行った。

洞窟へはオートマタとヒヒイロカネの人造ゴーレムも一緒に連れて行った。生き物ではないオートマタとヒヒイロカネの人造ゴーレムなら、流石にヴァンパイアに襲われて問題ないだろうと判断したからだ。


生き残った吸血蝙蝠を倒しながら、奥へと進むと広い場所に到着した。そこには池、いや、吸血蝙蝠が集めたと思われる血の池があり、その池の中にいたのは・・・・・・。


「何あれ?」


「アレハ、マモノノ、ヴァンパイアデス」

オートマタが魔物の正体を教えてくれたが、あの魔物がヴァンパイアとはとても思えなかった。

あれはどう見ても・・・。


「あれが、ヴァンパイア?」

あれはどう見てもヴァンパイアと言うよりも、吸血UMAのチュパカブラだ。

身長は二メートルほどで全身は黄土色のような肌をし、身体に毛はない。赤い大きな目に牙が生え、背中にトゲ状のものまである。これはどう見ても吸血UMAのチュパカブラだろう。ヴァンパイアが人間の姿をしていると言うのは空想だったようだ。


さて、アレをどう倒すかだが、最初にサウンドボムを放ってみたが、池の周囲にある地が壁のようになると魔法が弾かれた。


今度はマジックカードからスノーストームを召喚した。

吹雪が吹き荒れ、池の地や地や土壁もろとも凍りだした。

魔剣朔夜を抜くと、凍った土壁を斬って壊し、ヴァンパイアの首を刎ねた。だが、再生スキルがあるのか、すぐに再生を始めた。ところが、それだけでは終わらず、斬ったはずの頭からも再生を始め、ヴァンパイアが、もう一匹増えてしまった。


「オートマタ、アレを倒す方法はないのか?」


「マセキヲ、コワスイガイニ、ホウホウハ、アリマセン」

二匹のヴァンパイアの攻撃を回避しながら、オートマタに聞いた。


「じゃあ、何で二匹に増えた。斬ったはずの頭からも再生したぞ」


「ソレハ、アタマト、ヒダリムネノ、二カショニ、マセキガ、アルカラ、デス」


「ゴーレム以上に厄介な魔物か。だが、そうとわかれば」

アイテムカードから拳銃を召喚すると千里眼でヴァンパイアの魔石の位置を確認しながら、ミスリルの弾丸で魔石を狙撃した。弾丸が魔石に当たった瞬間、ヴァンパイアは再生できずに二匹とも倒れた。

魔石を壊したので冒険者ギルドで売れないは残念だ。まあ、仕方がないけど。


村に戻ると結果を報告し、その日は村に宿泊した。念のために吸血蝙蝠が襲ってこないか確認するためだが、問題は無事に解決したようだ。


次の日、冒険者ギルドに戻ると約一万二千匹の吸血蝙蝠の魔石とヴァンパイアの死骸二匹を渡し、結果を報告した。


「え~!ヴァンパイアにそんな能力があったのですかぁ。しかも、二匹に増えるなんて聞いたことありませんでした。で、どうやって倒したのですか?」


「ヴァンパイアの頭と左胸の魔石を壊して倒しました」


「なるほど。では、あんな数の吸血蝙蝠はどうやったのですか?」


「それは・・・秘密です。ただ、吸血蝙蝠は刺激臭を嫌うのでそれを使ったとだけ言っておきます」


「刺激臭!それも初めて聞きました。流石、Sランクの冒険者ですね。ヴァンパイアの死骸もあることですから、ヴァンパイアの生態も今後、研究されることでしょう。ご苦労様でした」


「それはいいけど、報酬はどうなります?」


「はい、討伐報酬として金貨二百枚、吸血蝙蝠の魔石の買い取りで金貨二十五枚、ヴァンパイアの魔石はありませんでしたが、貴重な死骸二匹で金貨二百枚。合わせて金貨四百二十五枚なのですが、ギルドからも特別に報奨金をだしますので合計で金貨五百枚となります」

金貨五百枚か。一回の依頼報酬にしては大金だ。だが・・・。


「未知だったヴァンパイアの死骸が魔石なしとは言え、一匹金貨百枚ですか。安すぎませんかねぇ」


「しかし、ギルドでは一匹金貨百枚しか出せませんので・・・・・・」


「そうですか。では、ヴァンパイアの買い取りは諦めますよ。一応、証拠として死骸も見せたことだし、問題ありませんよね?」


「それはそうですが・・・ギルマスに相談させてください」

ヴァンパイアの死骸は今後の研究対象になるほどの価値があるなら、金貨二百枚は安すぎる。


俺的には一桁間違っていると思う。お金には困っていないので、売れなくても問題はない。今度、オークションにでも出してみるか。

暫く待っていると厳つい顔の四十歳過ぎの男性を引き連れて受付嬢が走ってきた。

この男性がギルマスなのだろう。


「ヴァンパイアの死骸を売るのを拒んでいるそうだが、金貨二百枚では不足なのかね?幾らなら売ってくれるんだ?」


「買い取り価格を一桁間違えていませんか?金貨二百枚しかだせないと言うのなら、自分で素材を何かに活用するか、オークションにでも出しますよ。オークションなら一体幾らになるのかなぁ」

ギルマスの千里眼で見ながら、反応を窺った。まあ、売れなかったら、等価交換にでもするか。


「ウムムム~、何とか金貨五百枚で売ってくれんか?ギルドとしてだせる金額の限界だ。頼む」


「当然、一匹の値段ですね?二匹で金貨五百枚なら、お断りします」


「ムッ、ウムムム~・・・仕方がない。金貨千枚を出す。それ以上は本当に無理だ」


「では、報酬と合わせて金貨千五百枚でどうでしょう?」


「・・・・・・しょ、承知した。おい、金貨千五百枚を持って来い」


「は、はい」

本当は一匹金貨千枚欲しかったのだが、本当に無理そうだったので金貨千五百枚で手を打つことにした。

結局、最初の金貨五百枚が三倍になったことになる。



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