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宍戸先輩のピンチ?!

 翌日、会社に行くと宍戸先輩がまだ来ていなかった。

 いつもは無駄に早く出社してるのに、どうしたんだろ?


「おはよう。恵美ちゃん、先輩は?」


 会社が遠いせいか、いつもわりと早めに来ている恵美ちゃんに聞いてみる。


「おはようございます、理人さん。先輩、今日はお休みみたいですよ???」


 ええっ!!!

 マ、マジか……。


 ま、ま、ま、まさか昨日、あのサーバルさんと上手くいっちゃったのかい?!


 ……あの、先輩が?!


「えーっと、なんでお休みなの?」


「課長と部長には、『体調不良』って連絡入れたみたいなんですけど、私にはメッセージで『寝てないから仮眠する。仕事終わったら話があるから、理人と家に来て欲しい。』って連絡が入ってました。理人さんにもメッセージ来てませんか?」


 ……は、え???

 寝てない……ですと???


 慌ててスマホを取り出して確認すると、僕にも先輩からメッセージが来ていた。


『突然だが、寝不足で辛いので今日は仕事を休む。仕事が終わったら、恵美と家に来てくれ。大切な話をがある。』


 ……ナニコレ。


 ……。


 なんなの、この、異様なまでの寝不足アピール?!

 ……『昨夜はお楽しみでしたね?』的な事を宿屋の女将よろしく、僕らに言わせる気なのかっ?!


 やっぱり、あのサーバルさんと、どうにかなったって事?!

 かーらーのー、『俺たち結婚します!』宣言?!


 そういう事なのかい?!


「……恵美ちゃん、これはどういう事なのだろうか?」


「昨日の会議が終わって、疲れが出たんじゃないですか?準備もすごく気合入れてましたし……。」


「……恵美ちゃんはさ、サーバルさんと先輩に、何かあったとは思わないのかい?!」


 僕は恵美ちゃんの肩を掴み、ガクガクと揺らす。


「はい?サーバルさん???……誰です、それ?」


「昨日、先輩のとこに来てたろ?可愛いサーバルの獣人さんだよ?!覚えてないの……。」


「え?……サーバル獣人???……そんな人、いたかなぁ?」


 え???


 恵美ちゃんが、知らない???


 ま、まさか……あの可愛いサーバルさんって、悪霊の一種とかなのかい?も、もしかして、僕と先輩にしか見えてなかった……とか???


 だから、先輩なんかでも気に入って、一夜を共に……?!


 うん。

 そうだよね……普通の獣人如きに、先輩の鉄壁のサンクチュアリは打ち破れないはずだもん!!!


 あれは、人ならざるモノに違いないっ!!!


 あっ!!!


 で、でも。いくら可愛くても、悪霊なんかに気に入られたら、ヤバいんだよね?!昨日も、黒上さんたちに釘をさされたばかりじゃん!!!


 確かに、あんな可愛い悪霊なら、僕だってウェルカムってか、『連れ去って〜ん。』って感じだけど……先輩ばっかりそんなイイ思いをするのは、極めてずるい!……ついででイイから、僕も連れ去って欲しいのですが?!


「恵美ちゃん、ヤバいよ!このままじゃ、宍戸先輩が、サーバルさん型の悪霊に連れさられてしまう!!!急いで先輩を助けに行こう!」


「はいっ?……サーバルさん型の悪霊って何ですか?」


「昨日、会社にいたんだ!……セミロングで、ベージュのパンツスーツで、黒っぽい耳にカッコいいフサのついた、すごく可愛い女の人が!……先輩の同期っていってたけど、そんな人は居ないんだろ???……つまり、悪霊って事だよね?!」


 恵美ちゃんは、「んー???」と少し考え込むと、「あ!」っと声を上げてから言った。


「もしかして、理人さん、マリカ先輩の事を言ってます?……マリカ先輩はサーバルじゃなくて、カラカル獣人ですよ???……可愛いですよねぇ、マリカ先輩って、スタイルも抜群だし!……てか、マリカ先輩がどうしたんですか???」


「え……カラカル???」


「マリカ先輩は、サーバルじゃなくて、カラカルです。……確かに、昨日はベージュのパンツスーツを着てましたねぇ。……あんな美人で可愛いくって、仕事も出来て、それだけでも凄いのに、あのスタイルの良さで産休明けとか、信じられませんよね?!……女子社員のみんなの憧れデス。」


 ……は?

 産休、明け???


 そ、そう言えば、行き来の多い本社の人なのに、先輩に『久しぶり』って言ってたなぁ……。


 そ、そう言う事?!


「えっと、会議の後の懇親会は???」


「行く訳ないじゃないですか。私たちに、可愛い赤ちゃんの写真を見せてくれて、急いで帰って行きましたよ?……旦那さんが、代わりに見てくれてるらしいんですけど、ちょっと心配なのよねーって。……写真に写ってた、旦那さんも、同じカラカルの獣人さんで、メッチャカッコ良くって、女子社員みんなでキャーキャー言っちゃいましたよ。」


 えっ?えっ???


「で、でもさ、先輩、めっちゃデレデレしてたんだ!だからマリカさんを狙ってるのかなって、僕……。」


「理人さん……。宍戸先輩が、美人や可愛い女性にデレデレしない事なんてありますか?!」


 ……。

 ……。


 あー……。ない、ないね。

 デレしないなんて、ないですね。


「じゃあ、先輩とマリカさんは?」


「特に何もないと思いますよ?あったとしても、先輩が勝手に『マリカさん可愛いな、ゲヘヘ。』って思ってるくらいじゃないですか?」


「……じゃあ、先輩の昨日の素っ気ない態度は?」


「さあ。……でも、あの会議はすごく大事な会議でしたから、私の話に付き合ってくれる余裕が無かったんじゃないですか?懇親会は、社長や重役さんたちまで来たみたいですし……二次会、三次会とあったらしいですよか?宍戸先輩は期待されてるし気に入られてるから、きっと朝まで付き合わされたんですよ。ほら、お偉いサンがお気に入りの部長も、来てはいるけど、いかにも二日酔いって顔してますし。……私が相談したタイミングも悪かったんですよ。」


 そ、そうなの???

 でも……それにしては、素っ気なさすぎだった気がするんだよなぁ???


「あ!そういえば、恵美ちゃんは、家の事、どうなったの?」


「あれから、黒上さんたちが、丁寧に説明してくれたんで、やっぱりあの家はやめる事になりました。悠里が、恵美がリラックス 出来る環境じゃないと、増えない???から止めようって言ってくれて……。てか、増えるってどういう意味ですかね?」


 ……。

 やっぱり完全に、あれは『猫獣人繁殖センター』だったのか……。


「さ、さあね……?体重とかじゃない?」


 とりあえず誤魔化す。


「え?……これ以上太りたくないんですけど?!」


「悠里くん、巨猫好きだし。」


「私は太っても、巨猫にはならないですよ?ただのデブ猫……。あっ!もしや、悠里はデブ猫好き?!」


 僕たちは、くだらない話をしながら、仕事を始めた。




 ◇◇◇




 仕事が終わって、先輩のマンションに行くと……仮眠したハズの先輩が、ゲッソリ顔で出迎えてくれた。家に居ても、ダラシない格好なんてあまりしないのに、なぜかTシャツにパンツにエプロンと言う、素っ頓狂な格好をしている。


「……き、来てくれたのか。……助かる。」


「どうしたんだい?先輩?!」

「仮眠しなかったんですか?」


「……と、とにかく上がってくれ。た、助けて欲しい。」


 僕と恵美ちゃんは顔を見合わせる。

 ……どういう事???


 しかも……部屋の奥からは、人の気配がしている。

 マリカさんと不倫?!……では、無いんだよね?!


 僕たちは、おそるおそる?リビングに向かった。


 ……。

 ……。


 リビングには……泣き叫ぶ、二匹のネコ科の赤ちゃんがいた。……猫の赤ちゃんでははないと思う。やたらとデカいし、白っぽくて、斑点のあるフカフカの赤ちゃん二匹が、ピャー!ピャー!と大音量で鳴いていた。


「ごめん、ごめん、お腹が空いたよな?」


 先輩が一匹を抱き上げると、もう一匹がこの世の終わりだとでもいいたげな、悲痛な鳴き声をあげた。


「ま、まってくれ。一匹ずつしかミルクはやれないんだ!」


 先輩はもう一匹をエプロンのポケットに入れると、抱いているもう一匹が『早くミルクよこせ!』とばかりに泣く。


「恵美、助けてくれ。お前、猫になって、乳をやってくれないか?」


 パニック気味の先輩が、血迷って恵美ちゃんに懇願した。


「はいっ?!……セクハラ?セクハラですか?!猫になっても、お乳なんか出ませんよ?!……とにかく、赤ちゃんたちはお腹が空いてるんです、ミルク作ってを飲ませましょう。私と宍戸先輩で手分けして飲ませるから、理人さんはミルクを急いで作ってきてください。」


「あ、うん。……ミルクって、どこ?」


「キッチンにある!作り方はパッケージに書いてあるぞ。」


 僕は急いでキッチンへ走った。


 ◇


 ……えーっと……これか。

『すくすくミルク・ライオン用』


 ん???

 あの赤ちゃん、ライオンなの???


 確かにあのデカさだ。大型のネコ科の赤ちゃんだとは思ったけど……。ちょっと白っぽすぎやしないか?まさか、ホワイトライオンとかってやつ???斑点もあったよね???


 あー、でも、確かライオンの赤ちゃんは、小さいうちは斑点があるんだっけ?……ユキヒョウの赤ちゃんぽく見えたけど、気のせいか。


 ま、僕はサーバルとカラカルを間違えちゃう奴ですしね。


 それにしても、あの赤ちゃんは、一体……???

 獣人の赤ちゃん、なんだよね???あんな立派な大型獣の赤ちゃんは、そうそう道には落ちてない……。


 僕が考え込んでいると、リビングから「理人さん!早くーーー!!!」と、恵美ちゃんにドヤされ、とりあえずミルクを作る事にした。


 作り方は……。


 えーっと?……『計量不要なキューブタイプです。キューブ一つを40mlのお湯に溶き、人肌に冷まして与えて下さい。適量は体重1キロあたり……』ふむふむ、なるほど。


「ねー!先輩、赤ちゃんの体重は何キロだい?!体重が分からないと作れないのだけど?!」


 リビングからは、赤ちゃんのピャーピャー音が、大音量で聞こえてくる。


「知らん!!!適当でいいから、早く作れ!!!」


 えええ……。


 その適当かわからないから、体重が知りたいのに。


 まあ、いっか。

 残したらもったいないし、キューブ一つぶん作ろう。40mlできるから、20mlずつ分けたらいいかな。


 お湯、お湯を沸かして……。


 あ!

 水道水は良くないかも?!


 ミネラルウォーターの方が良いよね???


 僕は冷蔵庫を開けた。


 あー……でも、このミネラルウォーター、いつ開けたものか分からないや。……古いミネラルウォーターなら、水道水をよく沸かして、カルキを飛ばした方が安全かも???


 うーん……どうすべきか……。


「ねえ?先輩?!ミネラルウォーターと水道水、どっちが良いかな?!」


 けたたましい赤ちゃんの声に負けないように、デカい声で先輩に尋ねる。


「はぁっ?!早くしろ!!!……水道水、水道水でいい!浄水器付いてるし、早く、早くミルク作れ!!!」


 ふーん。そうなんだ?

 ……本当に大丈夫かなぁ?

 よーし、調べてみよう。赤ちゃんに何かあったら大変だもんね。


 えっと……。どれどれ???


 うーん。


 ミネラルウォーターも良いけど、粉ミルク自体は、水道水で作る事を想定して設計されてるのか……。とはいえ、水道水はよく沸かしてから使った方が良い……なるほどねぇ。


 とりあえず、沸かすか。


 でも……よく沸かすってどのくらいの時間、沸騰させるんだろうか???


「理人さーーーん!ミルクまだあーーー?!」

「理人、赤ちゃんがかわいそうだろ?!早くしろ!!!」


 もー。

 沸騰が足らなくて、赤ちゃんがお腹を痛くしたら大変だろ?

 暫し待て、だよ。


 そーだなあ。本当なら30分くらい沸騰させたいけど、二人ともせっかちだし、10分くらい沸騰させよう……。


 タイマーをセットして……。


 あ、その隙に哺乳瓶を用意しよう。

 どれどれ……あ、これだな。


 僕は消毒済みと書かれた入れ物から哺乳瓶を取り出した。


 !!!


 な、なにこれ。


 目盛り、適当すぎないかい?!


 しかも、気づいちゃったんだけど、キューブを入れてから40mlの目盛りまでお湯を注ぐと、40mlのお湯で溶いた事にならないよね?……キューブのかさ分、お湯が足らない……。


 ええ???


 でもパッケージには、キューブを入れてからお湯を入れろって……。


 どうしよう。メスシリンダーが欲しい。切実に。


 !!!


 いや、ダメだ……。メスシリンダーは、水温が20℃の時の量がキチンと測れる器具だ。……お湯は水よりだいぶ膨張しているから、メスシリンダーで測ると、お湯が少ない事になる。


 どうしよう……正確にお湯が測れない……。


 僕が熟考している間にも、恵美ちゃんと先輩の急かす声がかる。……そうしている間に、タイマーが鳴った。


「随分、お湯、減っちゃったな。……ま、いっか。40mlしか作らないし。」


 僕はとりあえず、約40ml相当のミルクを作成した。

 まあ、一回くらいは少し濃い目でも構わないだろう。


 二人がうるさいし、このミルクを持って行ってから、メーカーにどうやって正確に調製するのかを問い合わせねば……。あまり濃いのを飲ませすぎたら、赤ちゃんの体に障るかも知れない。


 あ!半分に分けなきゃ!


 赤ちゃんに20mlづつあげるんだった。うーん。正確に分けたいけど、これも仕方ないから目分量だな。……そうして冷まして……。本当なら、液温が37℃か測定しなきゃダメなんだろうけど、温度計もないしな……。


 よし、とりあえず完成!!!


 僕はドヤ顔でミルクを持って二人の元へ急いだ。


 なのに、二人は僕の手にあるミルクを見た瞬間に、同時に叫んだ。


「「少なすぎる!!!」」


 え???

 そ、そうなの???


 赤ちゃんたちは、僕が丹生込めて作ったミルクを一瞬で飲み干すと……更に鳴き声をパワーアップさせた。




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