表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/44

ヤンデレ耐性もしくは無効

激重ヤンデレ回が続きますが、あくまでコメディ。苦手な方はパスして下さい。

「へぇ……。壬生さんて、お父様の転生した姿だったんですね。……なんだか、サインのありがたみが一気に減ちゃいました……。」


恵美ちゃんがガッカリした様にそう言った。


宍戸先輩のマンションで、目を覚ました僕は人型に戻り、二人に何があったのかを話したのだ。


「……確かに、前世で親だったらサインのありがたみは減るかもな。だけど俺は、やっぱり壬生さんのファンだな!俺的には、むしろ前世で対局した経験が誇らしくあるからな!何度か勝たせてもらってるし!」


宍戸先輩は何だか、ご機嫌で答えてる。


「あっ、それは確かに!お父様に将棋のルールを教えてあげたのは私です!……いわば、壬生さんに私が将棋を教えたようなモンですね……。うわぁ。なんか気分良いかもー……。」


……。


あの、なんか盛り上がってますが、そんなの、どーでも良んですがっ!!!僕が、すごく怖い思いをしたんだって話なんだよ!!!


「二人とも、そういう話じゃないよ!!!壬生さんのヤンデレ具合が酷いって話なんだって!……今の話を聞いてゾッとしなかった?……ヤバいよね?!僕が男なら、心中するとか言ってるんだよ……!!!」


僕が、そう言うと二人はキョトンとした顔になる。


「……えっと、前世からソレ、あんまり変わって無いですよ???だって、お父様はリチャード様からなら、毒杯だって躊躇わずに飲むタイプでしたし?……一緒に死にたいなんて、プロポーズよりも深い愛の表現ですって。お父様的には。」


そ、そんな愛の表現要らないよ!!!

てかさ、男にプロポーズされたくないしっ!


「あ、ちなみにな、リチャードとしての理人が死んだ後の、その……目を取り出したいって騒いだのもな、どうやら食べる気だったらしいぞ?『食べてリチャードと一つになるんだ……!』とか喚いていて、ユリウス殿……恵美の前世の兄が止めたんだよな。『もう傷んでますから、お腹を壊すんでダメです!』って!」


「そうそう!不謹慎だと思いつつも、思わず『腐って無きゃ、いいんかーい!!!』って、ツッコミ入れちゃいました。……そしたら次は、一緒に埋めてくれって言い出して、生きてるからダメって言ったら、じゃあ一部でもいいからってゴネまくって……。最終的に、面倒になったお母さまが、お父様の髪をちょっぴり切って、棺桶に入れたんですよ。『一部は入れました。もう満足ですよね?!』とかって言って。」


……。


え……?


何だろう、このヤンデレ耐性の高さと、非常に扱い慣れた感じ……。聞いていると、コントみたいに思えてくるのだけど?……でもさぁ、こういった風土が、ヤンデレをのさばらせてきちゃったんじゃない?


僕的にはドン引きだからね?!


だってさ、僕の目玉を食べる気だったんだよ?

まあさ、臓器提供の一環だと思えば、親友だったし、沢山お世話になったから、いいかなーって気もしてくるけどさぁ……。


でも、きっと……美味しくはないと思うんだよね!!!だからさ、そんなの食うなよって話なんだよ!!!


「……ま、あれだ。つまり俺たちから言わせると、壬生さんはそう悪化していない。……通常運行だ。」


「そうですよ。いつもの事です。こんなモンでした。むしろね、理人さんの方が、転生してちょっとナイーブになっちゃったんじゃないですか?」


え……。そうなの?僕がナイーブに……???


んー……???


……あるね、それ、あるわ。

猫って繊細だし、僕って繊細だし。


それに……ナイーブ!!!なんかイイね、その表現!!!


「……でもさぁ。なんか怖いよ。……だって僕、ナイーブだし。まだ死にたくないもん。心中なんか嫌だよ!」


……この際、車に轢かれた時に、あっさり人生を諦めかけた事は、黙っておこう。


「まぁ、理人の気持ちもわかるけどな。……でも、大丈夫じゃないか?壬生さんは有名人だし、そうホイホイと会えるもんでもないだろ?……それに、猫のお前と会っただけだ。人型ならともかく、猫じゃ、お前がリチャードの生まれ変わりだとは思わないさ。」


「そうですよ!娘の私にも気付かないくらいでしたし、壬生さんは鈍感なタイプなんですって。……不安なら、しばらく宍戸先輩のマンションでお世話になれば良いと思いますよ?!私も、理人さんが怖くないように、一緒に泊まりますから、ねっ?!」


……恵美ちゃん、それ……僕の為ってより、家を散らかさない為に言ってないかい???……まあ、イイけどさ。そもそも、事の起こりはソコからでしたし……。


「ああ、そうだな。怖いならしばらく泊まればいい。恵美も一緒に泊まってくれると言ってるし、それなら、俺が残業でも怖くないだろ?」


「うん……そうしよっかなぁ。」


「そしましょう!!!……私、悠里に『理人さんがヤンデレストーカーに狙われたみたいで怯えてるから、一緒にいてあげいので、安全な宍戸先輩の家に暫く泊まるね。』ってメッセージ入れときます!」


恵美ちゃんはそう言うと、スマホを取り出しメッセージアプリを起動させた。……非常に打算のニオイがする。


「ああ、そうだな、家に帰らないのは言っておいた方が良いだろう。心配させるからな。……悠里くん、今はどこに居るんだ?」


「まだ古都みたいですよ?……あっ、もう返信来た。『それは理人さんが心配だな。側にいてやるっても良いが、恵美も充分に気をつけるんだぞ。……犯人の名前を知ってるんなら、俺が何とかしてやるし、調べてやるから、もっと詳しく教えろよ。』だって。なにそれ。……悠里に何が出来るって言うんだろ?イキっちゃってるなぁ。どうしましょう?名前教えてあげちゃいます???壬生さんだって言ったらビビるかも!」


恵美ちゃんはケラケラと笑いながら言うが……いえ、できます。彼はSNS界の王様だからね……。


「や、やめとけ!理人は猫の姿でちょっと会っただけだ。壬生さんは何もしていない。もう大丈夫だって伝えておけ。」


「そ、そうだよ!壬生さんは有名人だし、そこまでするのは可哀想だよ。……やめとこう?」


思わず、宍戸先輩と焦って恵美ちゃんを止める。


「そうですか?……ま、どうせ悠里に教えても仕方ないし、どっちでも良いですけど。……そしたら、えーと、『名前は分からないみたい。でも、もう大丈夫だろうって宍戸先輩は言ってるよ!ただ理人さんが怖がってるから、一緒にいてあげようと思うんだ。悠里は心配しないで楽しんでね。』……っと。こんなモンかな。」


うん。……そうだな。


いざとなったら、僕らには悠里くんもいるし、壬生さんと会ったのは猫の僕だもん、何も心配要らないよね。


なんか、ホッとしたらちょっとお腹が空いてきちゃったなぁ……。

僕がそう思っていると、宍戸先輩が言った。


「はぁ。……少し休んだら、飯でも行くか。……昨日の夜から理人を探し回って、俺もなんだか疲れたし……。」


「そ、そうだったんだ。……ごめんよ、先輩。僕が怒られるの怖くて逃げたりしたから……。」


「……あのな。怒るのは怒るからな?……恵美、お前もだ。そこで部外者ヅラしてもダメだぞ。……とにかく飯でも行こう。俺も恵美も有休とったんだ。あ、お前も休むって言ってあるぞ。無断欠勤はマズいからな。……で、だ。せっかくの有休を無駄にしない為に……ドライブがてら、岬にマグロでも食いに行くか!」


僕と恵美ちゃんは顔を見合わせる。

怒られるのは嫌だが……。


「「み、岬!!!い、行きます!!!先輩!大好き!!!マグロはもっと好き!!!」」


気がついたら、二人でそう叫んでいた。


岬は、ここから車で1時間ちょっとの所にある、マグロで有名な港町だ。僕の落ち込んでいた気分は一気に爆上がりだ。魚やお肉に目がない恵美ちゃんも、喜んで飛び跳ねている。


……先輩は苦笑しつつ、岬にあるマグロ料理店をスマホで探す。


「お、ここなんか良さそうだ。」


「えー!見たいです。どれ、どれ?……あ。見て下さい、このお店、マグロの目玉煮ってのがありますよ!」


……。

……。

……。


「ねえ!!!恵美ちゃんちょっと!!!さっきの話しの後でそれは、悪趣味すぎないかい!!!僕は嫌だよ?!」


僕は怒ってそう言ったが、二人はお構いなしで、スマホをスクロールし、見続けている。


「へえ……。コラーゲンたっぷりで、美味いらしいな?名物料理なのか。」


「プリプリ、プルプルって書いてありますね……。せっかくだし、食べてみます?写真だと、思ったより美味しそう。」


え?……なにそれ。気になるんだけど。


僕も二人が真剣に見ているスマホを覗き込む。

……え。本当だ。なんだか凄く美味しそう!


「理人さんは、要らないんですよね?」

「悪趣味だもんな。……やめとくか?」


いやね……そう思った。そう思ったんだけどね……?

このお店の名物料理らしいし?せっかく行くし?マグロは好きだし???


「……え。いや……。えーっと、あのっ、僕もマグロと一つになりたいかなーって!」


壬生さんと一つになるのはともかくとして、マグロさんならハイ喜んで!だ!!!


「よし!じゃあマグロと一つになりに行くか!」


「「おー!!!」」


……そんな訳で、僕たちはマグロと一つになる為に、岬に向かった。



◇◇◇



「いやぁー美味しかったね!マグロ!目玉もだけど、いろいろ料理があって、マグロの奥深さを感じたよ。」


店から出てきた僕は、大満足で二人にそう語った。


マグロの目玉は非常に美味かった。本当にトロトロのプルプルだった。それ以外にもこのお店には、沢山のマグロ料理があり、僕たちは目移りしながら何品も頼んでマグロを堪能したのだ。…….さすが、マグロの街である。


「はい。私も大満足です。……見て下さい。さっきのお料理、みんな写真に撮りました。この大トロのお刺身は待ち受けにしようと思います。……あ、そうだ。悠里にもメッセージで写真を送ろっと!」


「ああ。本当に美味かったな!ちょっと遠かったが来て良かったよな。……次に来る時は、予約が必要だって言う、マグロの兜焼きってのを頼んでみたいな!」


僕たちは幸せな気持ちで、お店から車を停めた駐車場まで歩く。港町は潮風が気持ちがいい。


「あ!この先に、市場もあるみたいだよ?!」


駐車場の先に『おさかな市場 150m先』という看板を発見し、思わず声を上げる。


「せっかくだし、見てみようか?!……土産に何か買ってもいいしな……。150mなら散歩がてら歩こうか?……ん?どうした、恵美???」


振り返ると、恵美ちゃんが、スマホ片手に固まった様に立ち止まっている。


「……。え……どうしよう……。」


「恵美ちゃん?どうしたの???」


「……じ、実は……。悠里のお友達が来ちゃうそうなんです。」


恵美ちゃんが青い顔で、僕たちにスマホを見せる。


スマホには悠里君からのメッセージで『恵美、ごめん。友人が急に今週末に来ることになちゃったんだ!俺はこっちで知り合った人から、ちょっとした仕事を手伝って欲しいって頼まれちゃってて、急には戻れないんだ。来週末くらいには戻れるかもだけど……。とにかく、空港に迎えに行ってやって欲しい。』書かれていた。


「ふーん?じゃぁ僕らでお迎えに行ってあげようよ?はじめてこの国に来るんだろ?」


「ああ、悠里くんのお友達なら、変な奴じゃないだろうし、むしろ楽しみじゃないか。」


恵美ちゃんは顔を横にフルフルさせながら、メッセージをスクロールさせた。


『友人は殆どこの国の言葉は話せないんだ。でも、外国語……C国語ぐらい、恵美もできるよな?』


……。

……。

……。


「はぁ???……C国語?!……え、恵美は……分かるのか?」


「む、無理です!!!中学から必須のA国語だって怪しいのに、何でC国語が分かるんですか?……先輩!!!先輩なら……C国語できたりしますよ……ね?」


宍戸先輩が焦った顔で答える。


「お、俺はA国語なら割と得意だが、大学の第二外国語は……B国語だったし……。C国語なんて、挨拶くらいしか知らないぞ……?い、急いで本を買ってなんとか……。いや、翻訳アプリで……。」


「ど、どうしましょう?!悠里の代わりにお迎えに来ましたとか、説明しなきゃですよね?!」


二人は困った顔で見つめ合ってオロオロしている。


……コホン。


「どうした、理人?喉が痛むのか?アメあるぞ?」

「理人さんはアテにしてないんで、大丈夫です。」


もう!!!


「あのさ、僕、できるの!C国語!!!」


「は……?」

「なんで?」


二人がポカンと僕を見つめる。


「あのさ、僕、こう見えても、けっこういい大学出てるの!で、C国での学会にも参加してるんだよ!……だから簡単な会話くらいなら、なんとかなるの!」


「理人が役に立つ時が来るなんて……。」

「ええ、天変地異が起きそうです……。」


……何だよ、それ。


「ま、いいよ。……そんな事より、ここ見てよ。悠里くんのお友達のお名前。」


「「……え???」」


僕の指さした悠里君からのメッセージにはこう書いてあった。


『友人の名前は、リカルド・ゴールドマン。恵美と同じ猫獣人なんだよ?』





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ