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ハーレムとは過酷なモノ?

 えーっと、あ、あれ???

 美人姉妹のハーレムで、素敵なラブラブライフ……じゃないの?


 何で、そんな悲痛な顔なんだい……???


 あ!恵美ちゃんに、白い目で見られちゃったから?


 ……でもなぁ、恵美ちゃんにどう思われようが、あの写真の美人三姉妹とラブラブハーレムって、僕は良いと思うけど……。


 だってさ、恵美ちゃんは、一人しかいない上に、見た目もソコソコだろ?美人×三人の方が、絶対に良いよね?……性格だって怠け者すぎるし、働くのは悪知恵ばかりだ……。その上、食べのにガッツく意地汚さがありますからね?

 おっとり系の僕が、ぽわ~っとしてると、大好物が、みーんな恵美ちゃんの胃袋に入ってる……なんて事はいつもだよ?!


「恵美……。そ、その……。そ、そんな目で見るな。ライオン獣人の一夫多妻……ハーレムは、そんな甘い感じじゃない。過酷なんだよ。……ライオン獣人てのはな……基本は、女系なんだよ。」


「過酷???……女系???」


 ドン引きで、軽蔑するような表情を浮かべた恵美ちゃんだったが、暗い顔で話す宍戸を不思議に思ったのか、顔を戻して話を聞く姿勢になる。


「ああ。……ライオン獣人の家は、継ぐのも、守るのも女だ。……自分の母親、祖母、姉妹、叔母や従姉妹……とにかく、女だけが本当の家族なんだ。女系の良い所は……確実に産んだ女性の血を引いた子供だって所だろうか。……それもあってか、女系家族の結束はとても固い。」


 へぇ……そうなんだ……。

 確かに、そういう考え方もアリかもねぇ……。


「俺もだが、男として生まれてくると、ある程度の年齢で家から出されてしまう。資産家なら、その時にまとまった金を渡されて……後は他人だ。俺も家や車、まとまった資産を母親から受け取り、家を出た。……もう、あの家には二度と帰れない。他の男が家に入るのを、長は許さないから……。」


 ……!


 このマンションや車は……親からの餞別って事???


「でも……長って……ハーレムの王様は、先輩の、お父さんなんだろ?何でダメ???」


「……オキテみたいなモンだ。それに、今はもう変わっているかも知れない……。……ライオン獣人の女性が、その王様とやらに求めるのは、優秀な遺伝子と対外的な風除けだけなんだ。結婚すると、その一族の長としてチヤホヤされるし、大切にされる。大概は、その一族の経営する会社の社長に就任する事になるな。そして、その一族の女性となら、誰と子を持っても構わない。彼女たちは、優秀な子供……特に、女の子が沢山欲しいからだ。……ただし、それは役に立つ間だけなんだ。」


「え?」


 役に立つ間だけ……???それ……どういう事???


「もっと優秀な遺伝子を持つ者で、長になってくれる者が現れれば、直ぐに叩き出されてしまうし、社長として上手く立ち回れなくても失格だ。会社で不祥事が起きた際は、不備が無くても責任を取らされ、切り捨てられる。……つまりハーレムの王様なんて言っても、要は消耗品なんだ。……年老いても捨てられるらしい。俺の父親は、俺が出て行く頃は、すでに中年に差し掛かっていたから、もう居ない可能性が高い。……だが、このやり方は効率が良いらしい。お陰でライオン獣人の一族は、かなり繁栄しているし、成功していて資産家と言われる家ばかりだ。」


「……で、先輩に、その王様役をやって欲しいって、白羽の矢が立っちゃったって事なんですか?」


 恵美ちゃんが、なんだか心配そうに言う。


 僕も、ハーレム最高じゃん!って言いたかったけど、シビアすぎて、もはや全然羨ましく無い……。


「……ああ。もともと、その三人のいた家は、数年前に俺の従兄弟が長として入った家だったんだ。今回、その家から、その三人が分家として独立するのに、俺に話が回ってきたんだ……。従兄が優秀だから、是非にって……。前世の記憶が戻る前は、それに疑問は無かった。優秀なライオン獣人の女性に長として認められるのは、例え一時的だとしても光栄な事だと思っていたんだ……。だからこの話を受けたのだが……。記憶が戻ると、なんだか受け入れ難くて……。だが……約束してしまったし、見合いには行くしか無いんだ……。」


「で、でも、受け入れられないなら、お会いして、それで断れば良いのよね?!お見合いって、そう言うモンでしょ?」


 恵美ちゃんがそう言うと、宍戸先輩は苦笑いする。


「……ライオン獣人の男に、拒否権は無いんだ。断ったと言う話は聞いた事が無いし、半分残るライオンの血で、反射的に断れないのだろう。」


「そ、そんな!意思をしっかり持ちましょう!?」


 恵美ちゃんは心配でたまらないのか、先輩にしがみ付いて、その腕を揺する。


 ……いや、断れないとか、無いよね?

 嫌なら嫌だって、言うだけだろ???


「……恵美や理人は、気がつくと喉がゴロゴロ言ってるんだが、意識したら止められるのか、それ?……飯を用意してやると、喜んで頭を擦り付けてくるだろ?……それって我慢できるのか?……歩は嬉しいと人型でもベロベロと舐めてきたろ……?どう頑張っても、シッポや耳には気持ちが出てしまうし……獣人は人だけど、どうしたって獣の本能には贖えない所があるんだよ……。前世の記憶が戻った今となっては、あまり愛の無い関係と言うのは、寂しいが……。」


「……せ、先輩。」


 う、うーん。


 た、確かに……本能って言うか……ゴロゴロもスリスリも、気づいたら、やってる。ビビるとシッポはボファって広がっちゃうし……こういうのは、確かに我慢出来ないかも???


「だから多分、三人に会って認められたら、俺は『ハーレム最高!!!』って、なってしまうんだと思う。」


 宍戸先輩はキリリとした顔で言い切った。


 ……。

 ……。


 ……え?


「……いや先輩、ハーレムは最高は、すでに思ってるよね?下手したら前世から。……それさ、ライオン獣人の本能、関係あるのかい?」


 だってさ……ハーレム最高は……どー考えても、思ってますよね?!


 先輩の場合……前世から、そんなんでしたよね?!

 嫌だ、困る、こんなの良くない……などと言いつつも、デレデレと、美形双子を侍らせてましたよね?!


 つまりは、アリよりのアリですよね?!


 今回の場合は、その後の扱いがシビアすぎるのと、まるで愛がなさそうなのが問題で、ハーレム自体はウェルカムなんじゃないかい……?


 獣の本能とか、後付けですよね、それ……。


「……。」


 宍戸先輩は、パッと目を逸らす。


「最低。」

「だね。」


「と!とにかくだ!……明日の俺は朝から忙しいんだ!お前ら泊まると、いつも昼過ぎまでダラダラとしてて、起きて来なないだろ?!10時に『ホテルオークマ』のラウンジでお会いする予定なんだ!8時には叩き起こすからな?!良いな?!」


 先輩はそう言うと、汚れた食器を持って、キッチンへ洗い物に行ってしまった。


「……ねえ、恵美ちゃん。」


「何でしょう、理人さん。」


「ハーレムとやらは、ペット可だろうか?」


 恵美ちゃんは、僕の言いたい事が理解出来ていないのか、うーん?と首を傾げる。


「ライオン獣人のハーレムは、なんだか過酷で愛が無い感じだろ?……だから、先輩はペットを連れて、お婿に行けば良いと思うんだよ。先輩はハーレム自体はウェルカムな感じだし、足らない愛の部分を、ペットが補えば、寂しくないだろ?……先輩は可愛いものが大好きだし。」


「ペット……ですか???……さすがに、私たちは人だし、それは通じないと思いますよ???」


 まだ意味が分からないのか恵美ちゃんは「???」って顔で僕を見つめている。


 ……もう!察しが悪いよ???


「あのさ、恵美ちゃんは、獣人が獣型も取れるのを、お忘れかい?」


 恵美ちゃんの顔が、パッと輝く。


「あっ!!!……ライオン獣人さんの一族は、とても繁栄してて、成功しているお金持ちの家ばかりって言ってましたよね?!確かに……そんなお金持ちの家のペットは……アリです!むしろ、ペットで良いです!!!」


「……だろ?」


 ……そう……僕たち獣人は、「人」であり「獣」なのだ。

 だから、獣型にも当然なれる訳で……。


 ……獣人は生まれてすぐは、獣型をしているんだ。

 だけど、大きくなるに従い、少しずつ人型をとれるようになってゆく。


 普通の獣人は成獣になると、獣型をほとんどとらなくなる。


 出来なくなる訳じゃなくって、獣人は、あくまで「人」だって言うプライドが高いから、ならないってだけ。……成獣になると、死ぬまで獣型にならない奴も多いらしい。


 まあ、獣型の時は、喋れなくなるから、本物の獣に間違えられる危険もあるしね。街中にライオンがいたらビビるだろ???


 ……でもね、人型でいるって、割に疲れるんだよね?


 僕は、プライドなんかは、どーでも良くって、楽が一番だから、割と獣型になってる。服も着なくて良いし、締め付けが無いって、ダラダラするのには最高だからね。


 だけど、恵美ちゃんはどんな感じなんだろう???


 大人が獣型になるのは恥ずかしいって言われているし、滅多にならないなら、ずっと獣型でいるのは辛いかも???


「恵美ちゃんは……獣型とかって、たまにはなったりするのかい?ちなみに僕は良くなってるから、まるで抵抗は無いんだけど。……楽だし、獣型なら、酔っ払って家に帰るのが面倒な時とか、道で寝たりもできるだろ?人型だと通報されちゃうしさ。」


「……さすがに、道で寝るのに獣型にはなりませんが、家ではよくなってますよ?服も要らないし……メッチャ楽ですよね。やっぱ、大人のプライドとかより、楽が良いですからね〜!」


 さすが、恵美ちゃんだ。……思考回路がまるで僕。


「でも、道で寝るのに獣型になるとか、どーやってるんですか?……猫獣人は獣型になると、かなり縮むから服とか全部脱げちゃいますよね???……人型に戻ると全裸だし……。外でやるのは無理じゃないですか???」


「えっ?無理じゃないよ?僕の鞄には、ダイヤル式の鍵が付いているからね!」


「……へっ?……鞄に鍵があると、出来るんですか?どーやって???」


 恵美ちゃんは、理解に苦しむ様な顔で、僕に尋ねる。


 ……あのさー、鞄に鍵があったら問題無いんだよ???


「まず、公園なんかの茂みに、鞄を置くんだ。で、服を全部脱いで鍵をかける。ちゃんと畳んでしまうよ?『脱いだお洋服はちゃんと畳みなさい!』って言われて育ったからね?そしたら獣型になるんだ。……こうすれば、僕の脱ぎたてホヤホヤのパンツは誰にも見られない。」


「え……???えっと……。それ、全裸は見られますよね?」


「まあ、可能性はあるけど、使用済みパンツ見られるよりマシだろ???大丈夫だよ、僕、結構な速さでやってるし……茂みの所で屈んでやるし、見られたとしても、背中とお尻くらい?」


 ……。

 ……。


 僕たちが無言で見つめ合っていると、宍戸先輩が洗い物から戻って来た。


「ん……どうした?」


「先輩っ!!!理人さんが、露出狂のド変態なんです!!!公園で全裸になるって!!!」


「違うって!!!恵美ちゃん、言い方!!!」


 僕らがギャーギャー騒いでいると、先輩は溜息を吐く。


「はぁ。……どうせ下らん事だろ?喧嘩は、するな。……お前ら、そろそろ風呂に入って寝ろ。明日は早く起こすって言っただろ?」


 宍戸先輩は呆れた様にそう言うと、ふかふかのバスタオルを持ってきて、僕たちに渡す。……これも僕ら専用だ。各自のお名前が刺繍されている。恵美ちゃんが、「理人さんの使ったバスタオルが墨汁臭い!」とかって騒いだからだ。

 スモーキーな大人の香りなんだってば!失礼なっ!!!


「……先輩、愛のないハーレムは寂しいよ?だから、ペットを飼わないかい?先輩は可愛いのが、大好きだろ?」

「そうですよ。愛が漏れなく付いてきます。可愛い猫はどうですか?ハーレムに猫を連れてお婿に行きましょ?」


「は……?」


 先輩がキョトンとした顔で僕たちを見つめるので、僕は脱ぎたてホヤホヤパンツが見られてしまう恥を忍んで、獣型になってやった。恵美ちゃんは、チラリと僕を見て……ダッシュで自分の部屋にしている客間に行くと、獣型になって戻って来た。


 ……お洋服、畳まないのダメなんだぞ?……あ、今回は僕も畳んでないや。


 モフッとしたベージュのポインテッドで、ゴージャスな長毛のモフモフシッポの猫(これは僕!)と、スベスベした艶のある短毛で、ビックリするほど短いカギシッポの三毛猫(これは恵美ちゃん!)が、宍戸先輩の足に擦り寄る。


「「ニャー。」」


「……お、お前ら……本気か……。」


 宍戸先輩が屈んで、僕と恵美ちゃんを抱き上げたので、僕らは喉を鳴らして先輩の顔に、頭を擦り付けた。顰めていた顔が、段々と緩んでくる。


「ど……どうしよう。か、可愛い……。人型も子供みたいで、それなりには可愛かったが、獣型は凶悪な可愛さだ……。生意気な事を喋らないのが、また良い……。……ペット可か……聞かなきゃ……。」


 ……だよね?


 やっぱり我らがチョルイ……猫の可愛さは、魔性だもの、簡単に絆されるって信じてたよ!







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