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兆し-1
1936年6月 ドイツ
地球で、前触れなく「異変」がおこり、異なる世界である幻想郷からその住民が現れた。その始まりはドイツに、八雲紫が現れたことだった。
1人だけではなく、すぐに供回りと思われる者らも現れ、この「異変」をこう呼んだ。
紫様の野望、と。
要は権力を渇望していた。能力もあることは明らかなようで、すぐさまドイツ国民からの指示を得てヒトラーから「総統」の地位を得た。元々国をナチスが統治していたこともあり、大した混乱も無かった。
しかし、前大戦の講和条約により禁止されていた潜水艦、航空機、戦車の「再軍備」と、今年3月に非武装地帯とされたラインラントへ軍を派遣、駐留する後に「ラインラント進駐」と呼ばれる出来事があった。
この時はまだ誰も知らなかった。紫は何を得れば満足するのか、目的は何なのか。
世界はまだ、知らない。