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終末後記  作者: Takahiro
1-4_米軍の反撃
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セントポール攻防戦Ⅰ

「敵ミサイル、確認」


「撃ち落とせ。それと、こちらもミサイルで敵を牽制せよ」


東郷大将は指示する。ついに、セントポール空域での先端は開かれた。


まずは、両軍ともに対艦ミサイルの出番である。両軍の間に、無数の光が飛び交う。それらは交差し、時に衝突しながら、敵に向かっていく。それは、いつもの流れである。


連合艦隊からは、それに比肩する対空ミサイルと、対空砲弾が放たれ、敵のミサイルは一切通さない。敵側でも、およそ同じ状況である。


このような場合の対艦ミサイルは、社交辞令のようなものである。被害は皆無だ。


「武蔵より、通信が入っています」


「繋げ」


入ってきた通信は、第二艦隊旗艦である武蔵からのものだ。


戦艦武蔵は、大和と同程度の艦砲と防御力を備える艦として設計されたもので、当然ながら、その名は、かつての大和型戦艦二番艦武蔵の名からとられている。


しかし、大和に搭載されている小型核融合炉の再現はできず、鈍いが堅いだけの戦艦という評価が支配的であり、前線からの評判はあまり良くない。


しかし、大和のようなやつが普通にそこら中で飛び回っていた200年前とは、末恐ろしい。


そして、それに乗艦し第二艦隊に下命するのは、伊藤少将である。


「閣下、これより、第二艦隊は敵に対し、突貫を敢行します。よろしいですか?」


伊藤少将は、姿勢を正し、先ほどの作戦の実行を告げる。今こそ、その頃合いだという判断である。


「結構。存分にやりたまえ」


東郷大将も同じ考えのようだ。東郷大将は、伊藤少将に艦隊の運命を託した。


「これよりは、第二艦隊は敵の懐中に飛び込むことになります。他の艦隊からも、援護を頼みますよ」


「もちろんだ。最大限、敵の攻撃を妨害しよう」


この時代は、中世と比べれば、艦砲の威力は遥かに上がり、まともに撃たれれば、ただでは済まない。特に、今回の作戦では、一時的にせよ、敵からの十字砲火を浴びることになる。その間は、敵を牽制し、少ない被害で敵までたどり着かなければ、作戦は破綻する。


「ありがとうございます。では、ご武運を」


「そちらも、壮健なれ」


両者は、互いに敬礼を交わし、短い会話を切り上げた。


「では、全艦に告ぐ。これより、既定の航路でもって、敵に突撃する。進め!」


伊藤少将の号令で、連合艦隊の右翼から、第二艦隊が飛び出し始めた。


敵との距離は、主砲の射程に入る寸前にまで迫っている。また、連合艦隊の空母からは、全艦載機が飛び立った。せめて、空からの圧力を軽減しようという、苦肉の策である。


そして、敵からも、それを凌駕する戦闘攻撃機が飛来して来ている。


「全艦、敵の主力艦を集中攻撃せよ。とにかく、弾を撃ち込んで敵を牽制するんだ」


第二艦隊からは、最初の砲弾が放たれた。米艦隊は、それに遅れて砲弾を返してくる。


ついに、作戦開始の時である。


「全艦、進め!撃たれようと、怯むな!」


航空艦隊や、対艦ミサイルの援護のもと、第二艦隊はひたすらに敵に向かっていく。


しかし、現状は、敵に優位を与えているだけであり、こちらに被害が次々と出ている。援護があってもなお、仕方のないことだ。空では、戦闘攻撃機が更なる死闘を繰り広げている。


被害は、致命傷には至っていない。


敵の弧から半包囲されながらも、その陣中に第二艦隊は突撃する。


近寄るほど、敵の火力は増していく。陣形の外側の巡洋艦などは、あちこちを撃たれ、既にボロボロである。


「全艦、進路を乙から丙に変更せよ」


敵の眼前に迫りながらも、伊藤少将は、敵を最大限に殴れるよう、調整を続けていた。


「距離、1キロを切りました」


「ああ、よろしい。全艦、最大戦速!対艦ミサイル斉射!敵にぶつかっても構うな。敵を切り裂け!」


伊藤少将は、最後の詰めの命令を、気迫のこもった声で告げる。


第二艦隊は、全ての対艦ミサイルを放ち、敵を牽制するとともに、急速に加速し、敵の分断にかかった。


「よし!そのまま突入だ!」


第二艦隊は、敵の最前列と、物理的に衝突した。あるものは、敵艦と推進力勝負に陥り、あるものは、その敵を砲撃し、無力化しようとしている。


混沌とした戦場では、敵も味方も、艦隊という概念を失い、ただの艦艇の集まりとなっている。


その混乱の様子は、それこそ中世の海戦のようである。


しかし、伊藤少将は、その状況をよしとしなかった。




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