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終末後記  作者: Takahiro
1-3_五大湖攻防戦
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決死の反撃

空では帝国軍と米軍の戦闘攻撃機が飛び交い、あちらこちらにミサイルと機関砲弾を撒き散らしている。


「第四小隊!UC2空域に向かえ!」


神崎中佐の航空戦隊は、第一艦隊を辛うじて守っている最後の砦である。


神崎中佐は、100を数える航空戦隊を指揮し、均衡を保っている。


それも、敵の攻撃に何とか即応しているに過ぎず、じり貧は必死である。やはり、根本的な状況の打開が求められている。


「全地上部隊、収用しました」


「結構。全艦、即座に離陸せよ!対艦ミサイルで敵を牽制しつつ、上昇だ」


その時、ついに、転機が訪れた。地上で屍人の群れを迎え撃っていた部隊はすべて艦隊に詰め込まれ、何とか離脱の態勢は整った。


「上がれ!」


第一艦隊は、一斉に飛び立つ。地上は、ジェットエンジンの熱で半ば焼かれた。


第一艦隊は、上に向かってありったけのミサイルを乱発し、すべての砲門を開く。


艦隊の上空では、ミサイルがあらゆる向きに翔んでいる。それは、打ち上げ花火のように、美しいものでもあった。そして、砲弾は、希に敵に命中しその艦を傾かせ、黒煙をあげる。


敵艦隊、戦闘攻撃機は妨害に近づいて来るが、それも追い払えている。


「火力を2時方向の敵に集中!そのまま友軍と合流せよ!」


「了解!」


艦隊は、上昇するやいなや、即座に前方の艦隊に突っ込んでいく。空港ごとに孤立した艦隊と合流するためだ。


「撃て!敵を突き崩せ!」


第一艦隊は、米艦隊に砲弾を浴びせる。そして、勢いのままに敵に突撃していく。


「安芸、主機停止!」


「ええい、構わん!とにかく進め!」


敵は、迫る第一艦隊を討とうと、同じく全火力を向けてきている。


両軍とも、あちらこちらに砲弾がめり込み、黒煙、白煙もあちらこちらから上がっている。 


しかし、誰も止まらない。


例え艦が傾こうが、第一艦隊はひたすら前進する。


「このまま反対側にぬける!全艦、対艦ミサイル斉射!」


両軍は、もはや衝突せんばかりの距離に来た。第一艦隊は、最後の火力を振り絞り、敵陣の中に切り込む。


対空ミサイルの斉射によって、敵艦隊に隙が生まれた。その間隙に第一艦隊は突入していく。


「左舷被弾!」


その時、大和艦橋に大きな衝撃が走ったのだ。


「大和、ダメージレポート!」


「第2区画対空砲、壊滅。第4より第9対空砲大破」


大和にも、敵の砲弾は届いている。しかし、被害はまだ致命的ではない。


黒煙を纏いながら、大和は敵中を翔ぶ。


艦隊は、敵のど真中で砲弾を四方八方に撒く。敵艦は次々と沈み、敵の抵抗は弱まっている。


やはり、砲撃戦では帝国軍に利があるのだ。


「よし、最後に対艦ミサイルを見舞ってやれ!このまま味方と合流するぞ!」


第一艦隊は、米艦隊の中を貫いた。そして、置き土産に対艦ミサイルを放つ。


「友軍との間に敵はいません。さっさと合流しましょう」


「そうだな、中佐。全艦、友軍の援護に行くぞ」


味方の第三艦隊も、敵と交戦中である。


こちらは、空中で敵と相対し、砲撃を交わしている。ここでも状況は均衡しているが、それもすぐに崩される。


「敵側面に突撃せよ!」


戦闘状態の米艦隊の側面に、第一艦隊は砲撃を加える。前と横から砲撃を食らった米艦隊の足並みは、すぐに乱れ始めた。


敵は反撃のため艦隊を分け始めたが、焼け石に水である。戦力において優位な敵に半包囲されれば、もはや勝ち目はない。


「追わなくて良い。このまま、スペシガン方面に向かえ」


敵が選んだのは、逃げだった。


しかし、米艦隊はすぐに後退し、帝国軍と同じくその味方と合流したようだ。東郷大将は、追撃を禁じ、撤退を優先した。


敵が再び態勢を整える前に、連合艦隊は北へと進み始める。


しかし、艦隊を撃退してもなお、敵に策は残っていた。


「敵戦闘攻撃機確認!およそ400です!」


艦橋に悲鳴が響く。


400もの敵を迎撃するなど、対空砲弾を使っても不可能だ。おまけに、敵がその対策をしていないはずがない。


「くっ。仕方あるまい。このまま湖上要塞のもとまで逃げきるぞ!」


もはや、撃退は諦めた。敵の燃料弾薬が尽きるまで、逃げるしかない。


「全艦、対空砲弾を全砲門に装填。航空艦隊は、敵の継戦能力を削げ」


すぐに、おびただしい数の戦闘攻撃機が襲いかかってきた。その姿は、群鳥のようである。


その敵に対し、艦隊から炸裂弾が放たれる。すべての砲門から放たれたそれは、空中で次々と爆煙をあげる。


しかし、既にその手は敵に読まれている。僅かな敵は撃墜されたが、大半には躱された。


「敵の迎撃は端から不可能だ!とにかく逃げよ!」


上空では、味方の航空艦隊が必死に時間を稼いでいる。艦隊からは、対空砲弾と対空ミサイルが放たれている。


敵は次々と落ちているが、味方もそれ以上に落ちている。


もはや、万事休すである。敵はあまりに多く、とても相手になどならない。


「くそっ、またか。被害は!」


「第12区画の装甲が破損したのみです」


「結構だ」


敵は、同時に、艦隊に爆撃を続けている。神崎中佐が妨害を続けているが、その数の前に太刀打ちできない。


艦隊には、次々と爆弾が投下され、激しい黒煙が立ち込めている。


連合艦隊は、今や防戦一方である。

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