ベルリンの朝
サブストーリーです。欧州合衆国初登場です。挿し絵的ななにか入りです。
ベルリンは、この日も寂れていた。
欧州合衆国の首都でありながら、人々は下を向き、都市は失業者に溢れ、活気などどこにもなかった。
灰色の都市であった。
朝日は希望の象徴ではなかった。それは、つまらない1日の始まりを事務的に告げただけだった。
欧州合衆国は、10年前からアフリカ内線に介入し、絶望的な支持率のアガトクレス政権を支えている。しかし、その介入は日増しに拡大し、今や、アフリカ内戦は、アフリカとヨーロッパの戦争とも言える状態にある。
戦費は拡大し、その負担は国民に降りかかっていた。支持率しか気にしないアデナウナー大統領は、綺麗事を並び立てて戦争の正当性を訴えていたが、誰もそれに疑いは抱かなかった。
人々は、長年の民主主義に馴れきって、自ら政治を考えることを放棄してしまった。彼らは、民主主義に支配されていた。
これが独裁国家であったなら、善良な独裁者のもとに、もっとまともな国になったはずだ。
そんなことを思った女が、ベルリンに居た。
「ベルリン市民の皆さん。今こそ、腐った民主主義を焼く時なのです。私、ジークルーン・ヘスと、我がナチ党は、政権を奪った暁には、このヨーロッパを、正常な国家に戻すと誓います。その為には、皆さんの協力が、不可欠なのです!」
ベルリンの中心街で、数人の護衛に囲まれながら、彼女は演説をしていた。彼女は短髪で、まるで軍人のような気迫をもった女性であった。
「ヘス総裁、万歳!」「民主主義に死を!」
集まった群衆からは、ヘス総裁のスピーチに喝采が集まった。もっとも、聴衆は数十人程度であるが。
ヘス総裁が率いる国家社会主義ヨーロッパ労働者党は、その名の表す通り、国家社会主義に基づく独裁国家の形成を公約とする政治組織である。その為には、武力に訴えることも辞さない。
そして、当然ながら、当局はそれを取り締まっている。今回も、警官隊が演説を止めにやって来た。
「総裁、流石に数が多いです。逃げましょう」
「ええ、仕方ないわね。そうしましょう」
「皆さん、お逃げ下さい!そして、ヨーロッパに革命を!」
その掛け声で、群衆は一斉に散らばり始めた。それは、警官隊の動きを激しく妨害していた。
その隙に、党のメンバーもすぐさま離れていった。その後には、小さな木製の演壇と、黄色い鉤十字の旗が残された。




