ある少女の記憶Ⅴ
サブストーリーです。ネタ全振りです。
その日、少女はまた人間と出会った。
「おーい、そこの君ぃ!何してるの?」
少女に叫びかけたのは、ゴシックな黒いメイド服を着た女性であった。そして勿論、この寂れた世界では、彼女は異質そのものであった。
「あっ、危ない人だ」
少女は、颯爽とその場から立ち去ろうとした。それは、過去会った人の中で、一番危なそうな人であった。だが、その相手は追いかけてきた。
「ちょっ、待って!」
「ああ、なに?」
「とりあえず、自己紹介でもしようよ」
「いいけど……」
「私は、ノン・イラストリアス。君は?」
「私は、コウ」
「おお、よろしく、コウ!」
ノンは、コウに手を伸ばしてきた。そして、二人は熱い握手を交わした。もっとも、ノンが一方的に掴みかかってきただけであるが。
「で、こんなとこで何してるの?」
「別に、何かあるわけじゃないよ。ぶらぶらしてるだけだよ」
「ふーん、他に、ヒトにあったことはあるの?」
「ああ、さっき、イシイとか言う人にあったよ」
コウがそう言った途端、ノンの表情が僅かに曇った。しかし、コウはそれには気づかなかった。
「うーん、知らないな」
「そう」
「ねえ。そうそう、どうしてヒトは屍人をみんな殺そうと思わないか、わかる?」
「あなたもそういうこと言うの?」
少女は困惑したような、面白がっているような顔をした。
「まあ、確かに屍人を放っておくのは謎だね。考えたことなかったよ」
「ふうん。だったらいいや」
その時、突然に地が揺れる衝撃が訪れ、周囲の埃が舞った。遠くを見れば、煙が遥か高く上がっていた。
「始まったか」
ノンは、鋭い目でその先を眺めていた。その瞳には、どこか、怒りが感じられた。
「なにが?」
「戦争だね。あれは、多分、都市の壁が壊されたんじゃないかな」
土煙は、かつて少女が見たこともないほど巨大であった。
「おお、それなら中に入れるかな」
「まあ、そうだね。て言うか、君はヒトと会いたいの?」
「まあ、うん」
「だったら、行ってみたらいいんじゃないかな」
「うん、そうするよ。じゃあね、お姉さん」
「バイバーイ。」
少女は、煙の中に駆け込んで行った。




