デトロイト制圧
実は次の話と合わせて1話にする予定だったのですが、それだと長くなりすぎたので、分けました。
そのせいで微妙な感じになっているのはすみません。
崩壊暦214年7月24日06:31
「ふう。遂にここまで来ましたね、閣下」
東條中佐は、賭けに勝った喜びと、その疲れが入り交じった様子だ。
「ああ、そうだな」
東郷大将率いる帝国軍は、ヒューロン湖での戦いを制し、デトロイトに迫っていた。
米艦隊の抵抗はない。ヒューロン湖にてアルテミス以下の湖上要塞を制圧した後、米艦隊は颯爽と逃げ去ったのだ。
米艦隊は、デトロイトで防衛戦を展開するとも予想されたが、実際には、最早確認できない距離まで逃げた。逃げられてしまったのだ。
今やデトロイトはスペシガンと同様の裸城である。
「デトロイトより、抵抗はしない、と通達があります」
「結構。直ちに占領に移れ」
連合艦隊はデトロイトに降りたっていく。通告の通り、抵抗は皆無であった。高射砲は下ろされ、あらゆる道路と空港は開かれている。
そして、大和もデトロイトに降り立つ。連合艦隊の大兵力を降ろすにはそれ相応の空港が必要であり、デトロイトの空港の大半は、連合艦隊の艦艇が埋め尽くした。
「なんとも、静かな都市ですね」
「ああ、異常な程にな」
だが、降り立った先のデトロイトは静かすぎた。デトロイトは、アメリカ連邦最大の軍事都市であるばかりか、経済的にも大陸有数の大都市である。
また、アメリカ連邦はその東海岸にあらゆるものが集中しているため、デトロイトは、これまで帝国軍が手にした都市の中では最大の都市でもある。
そんな最大の都市ともなれば、大量の部隊が防衛に割かれているはずだが、それが見当たらないのだ。米艦隊が収用していったとすれば、それなりに時間がかかるわけで、レーダーに移らないまでに遠くに逃げられるはずはない。
「不気味だな」
「ええ。しかし、そんなことは気にしていられません」
「全く、その通りだ。大将たるもの、部下にそんな姿は見せられないからな。ああ、中佐は忘れてくれ」
「そうですね……」
デトロイトに米軍がいないのは、帝国軍にとって喜ばしいことである。確かに謎は残るが、それよりも「今」に対する行動が優先である。
帝国軍にとって、都市の占領など手慣れたことだ。相変わらずの無抵抗な都市は、瞬く間に占領されていく。
「しかし、デトロイトというのは存外狭い都市なのですな」
「確かに、そうだな大佐。この人口にしては狭い」
デトロイトは、西方最大の都市でありながら、その市街地面積はやけに狭い。それは、甲号作戦において帝国軍が占領したサンフランシスコのそれよりも狭かった。
代わりに、その周りにある耕作地は広い。他の都市に農産物を融通しているのだろうが、果たしてここにその機能が必要であるのかは疑問である。
「気になりますし、ちょっと調べてみませんか、閣下」
近衛大佐は冗談半分に言う。その口調は古典的な探偵小説の脇役のようだ。まあ、本気で何かが見つかるなどとは思っていない。
「ふむ、そうだな。デトロイト外縁部を捜索したまえ。兵士達の気晴らしにもなるだろう」
東郷大将はそれを認めた。彼もまた少し乗り気のようであった。
そこから掘り起こされたものが、今年一番の大物になってしまうとも知らずに。




