元老院Ⅲ
サブストーリーです。
時は、ヒューロン湖での攻防戦の真っ最中である。
帝都の喧騒とは反対に、皇居では少数の貴族達が秘密の会議を開いていた。
「伊達の報告からするに、米軍はそろそろ本気を出してくることが想定されます」
彼らの議題は、アメリカに派遣した華族、伊達の報告についてである。彼によれば、米連邦のハル特使は、概ねこちらの要求を理解したそうだ。
「それで、帝国軍が一旦追い返されたとして、どうするのか?」
「はっ、陛下。最悪の場合では、草薙の剣の投入を検討すべきかと、愚考する次第です」
彼らの目的は、帝国の敗北ではない。むしろ、帝国が米連邦の属国とされるなど、悪夢そのものである。
「草薙か。震洋は温存しておくのか?」
「左様にしたいと思います」
「草薙の剣さえあれば、帝国軍の敗北は回避できます。震洋は、更にその先への備えと致しましょう」
「良い。震洋は、この帝都で使うべきであるな」
「御意」
彼らが用意している新兵器、「震洋」と「草薙の剣」は、性質が異なるものであるらしい。おおよそ、名前から察せられるものはあるが。
「それと、念のため、草薙の剣だけでなく、第六艦隊を派遣するのはどうでしょうか」
「それでは、帝国の即応態勢が脅かされます」
「良い。有事の際には、親衛隊を使うことも辞さん」
「陛下がそうおっしゃるなら、そう、軍に命じましょう」
親衛隊、若しくは近衛隊とは、軍とは別に、天皇直属の部隊として編制された部隊である。その戦力は、およそ2個艦隊に達する。
「それと、大東亜連合での反帝国運動ですが、近頃激しさをましております。恐らくはアメリカか欧州の差し金ですが、如何しますか」
「構わん。勝手にやらせておけ。但し、敵が武力に訴えるのならば、見せしめに殺しても構わん」
「御意」
これでもって、大日本帝国の新たな戦略が決定された。




