乗り込み攻撃Ⅲ
ハイテクな装備を身につけた帝国陸軍という図が好きです。
あと、残酷な描写ありとかにしておらず、今更タグを付けるのもなんなので、あまりグロいことができません。
「敵接近、抑えられません!」
「ああ、最悪だ。全湖上要塞に、第一種陸戦準備を指示しろ」
敵は遂に、湖上要塞、アルテミスの目前に迫る。米軍の必死の攻撃もむなしく、敵は止まらなかった。
少し前から、敵艦隊は減速し始め、駆逐艦のみがこちらに突撃してきている。アルテミスには湖上への攻撃能力はなく、最早白兵戦となるのは避けられない。
湖上要塞には、このような事態に備えて種々の銃器が備えられており、その為の部隊も存在する。だが、本気でこんなことが起こるとは誰も思わず、白兵戦部隊は形骸化寸前の弱小部隊である。
「艦隊から送れる陸戦部隊はどのくらいだ?」
「ヘリコプターなどの数を勘案すると、およそ一個大隊です」
米艦隊にも、それなりの陸戦部隊は整っている。しかしそれは、都市への上陸用であり、艦隊が着陸できない湖上要塞への支援は想定外であった。空輸するにも、ヘリが足りない。
「仕方ないな。アルテミスに送れるだけの全軍を送れ」
「はっ、直ちに」
他方、湖上では遂にそのときが迫っている。
アルテミスは後退し、他の湖上要塞の後ろにつこうとしているが、既に意味はない。湖上要塞の間を抜けて、敵はアルテミスに迫る。何とかしようと、湖上要塞からなけなしの砲弾が放たれているが、効果は無し。
「大将閣下、敵が接舷しました!」
「ふむ、全隔壁を閉鎖。全要塞に白兵戦の準備をさせろ」
アルテミスの司令官、ニミッツ大将は、この危機的状況にありながら落ち着き払っている。現在、ニミッツ大将は、アルテミス後方中央部にある指令室より防衛の指揮をしている。
「敵、外装甲を破り始めました。第2、6、7、12ブロックです」
敵は、アルテミスの厚い装甲に穴を開け始めた。米軍は、その周囲にバリケードを張り、日本軍を迎え撃たんとしている。
「来たぞ!撃て!」
装甲を破り、壁を吹き飛ばして現れたのは、日の丸の機動装甲服に身を包んだ、完全武装の日本兵である。
米軍は、一斉に突入してきた日本兵に銃弾を浴びせる。そして、その日本兵も突入と同時に銃を乱射する。
侵入した日本兵の幾らかは倒れるが、それより多くの米兵も倒れた。
「くそっ、ここは守るんだ!撃て!うっ」「大丈夫か!こいつを運べ!」「うわっ!手榴弾だ!」「みんな、怪我は!?」「来たぞ!」
「撃て」
とある戦闘は、勝負がついたようだ。日本兵が放ったグレネードは、米兵とバリケードをうち壊した。グレネードの爆発で、5人がバラバラ死体となった。
各所でも、次々と即席のバリケードは破壊され、日本兵は容赦なく米兵を蹂躙する。
日本兵の小銃の前に、米兵は次々と赤い花を咲かせるだけである。
「ここはダメだ!第二隔壁まで撤退!」
想定を遥かに越える日本軍の戦力と数に、最初の防衛ラインは殆どが突破された。死体と血溜まりの上を、日本兵は容赦なく進んでくる。
対して、米兵は、手持ちの爆弾を投げつけながら、最初の隔壁まで撤退していく。アルテミスの隔壁ならば、暫くはもつだろう。だが、それも長くはない。また新たなバリケードを築かねばならない。
「大将、日本軍の戦力は圧倒的です。増援を合わせても、耐えられるかどうか……」
「戦力を、この指令室周辺に集中させよう。中央隔壁まで、全戦力を下げるんだ」
「了解しました」
ニミッツ大将は、戦力の集中を徹底する。隔壁で時間を稼ぐ間、艦隊からの一個大隊を合わせての戦力を、指令室の周辺に移す計画だ。
外から4枚目に当たる中央隔壁の後ろに、機銃や装甲板を組み合わせた陣地が作られる。さすがは軍人といったところで、あっという間に強固な防衛ラインが敷かれた。
「第二隔壁、突破されました」
「了解だ」
日本兵は、第二隔壁も吹き飛ばしたようだ。しかし、そこには誰もいない。
それでも、着々と日本兵は要塞中央に迫る。
米兵には、銃を構えて目の前の隔壁が壊れる時を待つことしかできなかった。




