ホワイトハウスにてⅤ
ちょっと最近ネタがないサブストーリーです。
時は、ヒューロン湖での攻防戦の最中である。ホワイトハウスでは、ハル特使の報告についての議論が交わされていた。
「ほう、日本からそんな言葉が飛び出してくるとは、驚きですな」
「ああ。我々は世界の為、日本軍を撃滅しなければならん」
ルーズベルト大統領の台詞は、いつでも皮肉めいている。
「アルテミスならば、十分ではないのですか?」
「それがな、そうとも言い切れんのだよ」
「と言うと?」
「君は、アルテミスの本来の運用方を知っているかね?」
「運用方?あれは、ただの湖上要塞の発展型ではないのですか」
アルテミスには、電磁加速砲の他には特別なものはない。大臣には、ルーズベルト大統領の意図は図りかねた。
「ふむ、参謀総長、説明してくれたまえ」
「了解しました」
参謀総長は、アルテミスの運用について語った。
彼曰く、アルテミスは本来、同型の湖上要塞とともに防空にあたるものである。複数の要塞で広範囲を守備するのが設計された当初の計画であり、単機で広い範囲をカバーすることは想定外であった。
即ち、今のアルテミスは、拡散した敵に対しては有効でないということである。
「なるほど。アルテミスも、万能の兵器ではないのですね」
「うむ。わかってくれたなら、結構だ」
「では、その先も考えるべきということですな」
「そうだとも」
「しかし、どうするのですか?」
「まずは、Ωの発動を許可しましょう」
「なっ、アルテミスを棄てると言うのですか!」
「そうです。五大湖でしか使えないアルテミスには、戦略的な価値はあまりありません」
確かに、日本軍は、五大湖に近づかなければ、アルテミスの脅威に晒されることはない。
「私からも、許可しよう。別段、200年前の先人の努力など、今、役だたなければ意味がないだろう?」
ルーズベルト大統領は、案の定、これを許可した。
「そうですな。これは、十分に合理的だ」
「しかし、Ωの発動には相当な時間がかかりますぞ。ましてや、日本軍に気づかれずに為すとなれば……」
「ならば、二次的安全策を講じるべきでしょうな」
「だったら、諸君、デトロイトに対して『ネロ指令』を適用するのはどうかね?」
「なっ、あの大都市をも棄てるのですか!?」
大統領が言葉を発したとたんに、議場は騒ぎたった。だが、ルーズベルト大統領は、それを静める。
「諸君!我々が、既に南米を征服したことを忘れたのかね?デトロイトを失おうとも、まだあそこが残っているじゃないか」
「確かに、そうですが……」
「反論は、あるかね?」
大臣達は、何も言うことができなかった。ルーズベルト大統領の言葉は、あまりに非情かつ合理的であった。
「決まりだな。チャールズ元帥に伝えておいてくれたまえ」
再び、ホワイトハウスは奸計を巡らすのであった。




