スペシガン奪回戦Ⅱ
「敵、対艦ミサイル確認」
「こちらも、ミサイル攻撃をしつつ、迎撃せよ」
東郷大将は指示をする。
まず、両軍の間で始まるのは、対艦ミサイルの撃ち合いである。
旧文明ではミサイルで全ての勝負は決していたが、この時代では、ミサイルの有効性は、対空砲の発展や、ミサイル技術の喪失により、大きく薄まっている。
日本軍は、最新の対空炸裂砲弾でミサイルを撃ち落とし、米軍も、数えきれぬ程の対空ミサイルで、確実に対艦ミサイルを撃ち落としている。
はためから見たら、空を光の筋が埋め尽くしている地獄絵図な訳だが、実際のところ、大した被害は出ないのである。
この点、日本軍に対空炸裂砲弾を開発された米軍は、より強力な砲の配備が求められているのだ。
「主砲を斉射しつつ、後退せよ」
ミサイル戦の後には、直接に砲火を交える砲戦が始まる。しかし、今回は、日本艦隊が戦闘の始まりと同時に、後退を始めた。
スペリオル湖での戦闘と、全く真逆の関係が、両軍の間にある。
「閣下、地上より、天羽々斬装填完了との報告です」
「結構。だが、まだ、間合いを詰めるぞ」
「しかし、それでは天羽々斬が敵の射程に入りますが、よろしいのですか?」
東條中佐は、東郷大将に、天羽々斬が使用可能であると伝える。
現在、天羽々斬は、63門がスペシガン南部に配備されている。しかし、急造の陣地であるため、何もかもが足りていない。電源の確保すら、怪しいのである。
今回は、貧弱な通常の電線を、無理やり並列にして使用している。即ち、常に発射可能な状態にしていると、設備が壊れる可能性が高いということだ。
その為、天羽々斬は、敵が射程に入り次第、送電を開始する事とされた。今回の戦いは、天羽々斬の試金石となるだろう。
東條中佐は、このことを伝えた訳だが、東郷大将は、まだ待てと言う。
「中佐、考えてもみたまえ。これまで、都市の高射砲が脅威足りうることは、果たしてあったかね?敵も、同じことを思っているだろう。わざわざ、地上の高射砲など、攻撃すると思うかね?」
「確かに、そんなことは思わないでしょうね。大将閣下の慧眼であります」
今のところ、天羽々斬の情報は割れていない。天羽々斬の見た目は、通常の高射砲と何ら変わらないようにされているから、敵がそれを撃ってくることはないだろう。
天羽々斬の射程の中に敵が入っても、連合艦隊は、じわじわと後退を続行する。
米艦隊が放った砲弾が地上に降りしきる中、ついに、東郷大将はその号令を下す。
「天羽々斬、放て!」
その瞬間にして、およそ45の砲弾が、地上から放たれる。その狙いは正確だ。
砲弾は次から次へと米艦隊の下腹部に命中し、その機関を破壊していく。次々と、米艦隊の各所から、装甲の破片が撒かれている。
また、射程も長大であるが故に、敵の後方の空母にも、わずかながら、命中弾を与えている。
「全艦、反転!敵を突き崩せ!」
そして、これまで逃げ腰であった連合艦隊は、突如として米艦隊に襲い掛かる。連合艦隊は、破竹の勢いで、米艦隊に砲撃を浴びせていく。
米軍は、完全に足並みを乱された。迫る日本軍に対して、最早、なす術はない。
上空の連合艦隊と、地上の天羽々斬からの十字砲火にさらされた米艦隊は、次々と炎を上げ、落ちていく。
「敵、後退します」
「追うな。これで、スペシガンの防衛は達成されたからな」
直ぐに、米艦隊はヒューロン湖へと後退を始めた。その指揮系統は瓦解していないようだ。米艦隊の混乱はごく小さく収まり、その後は速やかに撤退したようだ。
連合艦隊は、それを砲弾で見送った。
「お見事、やり返してやりましたな、閣下」
「そうだな。今回ばかりは、作戦は成功と言っていいだろう」
近衛大佐は、誇らしげに作戦の成功を祝う。また、東郷大将も喜ばしげである。
少なくとも、スペシガンの防衛、即ち、攻勢の拠点の防衛は、完遂されたのであった。




