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終末後記  作者: Takahiro
3-3_最終決戦
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第二回南部方面Ⅵ

「対艦ミサイルです!数は100程!」


「厳しいが…全力で迎撃せよ!」


その数は立派な艦隊が撃つミサイルの数としてはかなり少ないものだ。「盾」作戦は十分に成功していると言える。


しかし、それでも一隻の戦艦に飛んでくるミサイルの数としては多過ぎる。


また、更に悪いことに、あちらこちらから対艦ミサイルが飛んでくる関係で、東條少将の領域防御が全く通用しないのである。


「二番砲塔、被弾!」


「砲弾への引火はないな!?」


「は、はい!」


「よかった。しかしこの際、砲弾は全て抜かざるを得ないな」


流石の大和とて、その内側で砲弾が爆発すればただでは済まない。それを防ぐべく主砲塔には特別堅固な装甲が張られているが、それでも防備は完璧ではない。


よって、東條少将は主砲の攻撃力を完全に放棄。生き残ることのみを至上命題とする戦術を取った。


「艦隊はまだか?」


「主砲射程まで、残り2800です」


「後少しだ。総員踏んばれ!」


大和が沈むが先か、艦隊が来援するのが先か。それを予測するのは敵味方共に非常なる困難を伴った。


「左舷被弾!損害不明!」


「距離、残り1000!」


「第一エンジン被弾!」


「残り500!」


「頑張ってくれ…」


大和は最早満身創痍。そこらで火災が発生し、その消火で殆どの乗組員が精一杯だ。


しかし、東條少将すらも死を覚悟したその時、ついにその機は訪れた。


「周辺の敵艦艇を艦隊射程に捉えました!」


「よし!迷うことはない!全艦斉射!」


まずは大和の救援から。最初の斉射は大和の周囲を標的として行われ、大和への脅威はたちまち排除された。


「大和は艦隊に合流せよ!」


大和はここで後退し、味方とやっと合流を果たした。


しかし、死地から脱したとは言え、東條少将の仕事はまだまだ残っている。戦闘はまだ始まったばかりである。


「やはり陣形が乱れているな」


大和の周囲の陣容は薄い。ここを突けば、艦隊を貫くことも可能だろう。


「全艦、紡錘陣を組み、敵艦隊の脆弱部に突撃せよ!この勢いを殺してはならん!」


来援した艦隊はそのままの勢いで敵艦隊への突入を開始した。


もし敵が完全な用意を整えていたのなら、艦隊はただ左右から挟撃されていただろう。


しかし、敵の陣形は未だ前方の敵を想定したもの。陣形に食い込まれた艦隊に反撃を与える体勢にはない。ここを逃してはならないのだ。


大和は流石に陣の内側に避難したものの、ローマ連合帝国艦隊は一切怖じ気づくことなく突撃を続ける。


そして、ついに敵艦隊は真っ二つに分断された。


「前進の後、陣形を2列の単縦陣に変更!丁字作戦で敵を殲滅せよ!」


艦隊はそのまま前進を続け、両軍は十字を描くような状況となった。


敵艦隊と直角に交われば、敵に殆ど反撃されないままに艦隊の火力を完璧な形で集中出来る。それが丁字戦法。それが殆ど完璧に近い形で顕現したのである。


「ダマスカスより多数の敵戦闘攻撃機!」


最後の抵抗か、アラブ帝国軍はありったけの兵器を繰り出してきた。だが、その程度なら恐るるに足らず。


「こちらも航空艦隊を出せ!艦隊は敵を殲滅せよ!」


神崎中佐は大和に一機だけ積んであった戦闘攻撃機に乗り出撃し、後方の飛行空母からこちらもありったけの航空戦力をぶつける。


空の方は互角か少し有利といったところ。一方、飛行艦同士の決戦は、最早決着がついたと言ってもいいものだった。


敵と味方の損耗比がまるで違う。敵の10隻が沈む間にこちらは1、2隻の損害しかないのだ。


「閣下、アラブ帝国軍のユースフ元帥より、降伏の申し出です!」


「直ちに全軍に戦闘行為を停止させよ!」


「はっ!」


「勝った、勝ったんだ…」


ついにユースフ元帥が降伏した。少なくとも南部の戦線において、ローマ連合帝国は勝利したのである。


双方共に攻撃を停止し、戦場から炎が消えた。


しかし損害は重大であった。敵はほぼ全滅、東條少将も1個艦隊以上の艦を失った。


「ユースフ元帥より、通信が入っています」


「繋げ」


「はっ」


モニターには疲れた顔の老将軍が映った。


「東條少将閣下、降伏を受け入れて頂き、感謝申し上げます」


「国際法に従った行動に過ぎませんよ」


「なるほど。閣下はやはり立派なお人でありますな」


「挨拶は、この辺にしておきましょう」


降伏の条件について、合意が必要だ。東條少将は早速切り出す。


「元帥閣下、我々は、この戦場にある貴軍の飛行艦を全て受け渡すように求めます」


「はい。その手筈は既に進めています」


「そして、それ以外は何も望みません」


「ほ、本当ですか?」


ここでユースフ元帥の身柄引き渡しやダマスカスの占領を要求するとこも出来る筈。しかし東條少将はそれを選ばなかった。


ここで万が一にでも戦闘を再開させたくない。そして早急に北の艦隊と合流したい。理由はそんなところである。

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