時計塔にてⅠ
サブストーリーです。
そこは、荒野に佇む一本の時計塔である。だが、それはただの廃墟ではない。
「さて、伊達様、交渉といきましょう」
「ええ、ハル特使」
二人の密使は、朽ちかけの木椅子に腰かけ、これまた秘密の交渉を行っていた。荒野の時計塔は、外の煉獄の世界と打って変わって、この世界の平穏というものを集めたような場所だ。
まあ、多少うるさいのも居るのだが。
片方は天皇直属の華族、伊達であり、もう片方はルーズベルト大統領の特使、ハルである。
「我々は、戦争の長期化を望みます」
「うむ」
「只今は、帝国軍が五大湖を落とそうとしています。しかし、我々はそれを許容しません」
「それで、何ですか?」
「帝国軍に一定の打撃を与えた上で、追い返して頂きたい」
「ふむ、なるほど。そちらに、何か、その方法についてのお考えはありますか」
伊達は、日本軍を撃退するようハル特使に頼み込んだ。しかし、日本軍に手抜きをさせることはできず、米軍にも、公的にこの交渉を明かすわけにはいかない。どの勢力にも露見しないように、うまく立ち回る策が必要だ。
「ならば、貴国の元国民を使えばよろしいのでは?」
「なるほど。確かに、ゾンビどもを使うのは、とてもクリーンな手段です」
クリーン、とは即ち、手が汚れないということである。その「手」が誰の手なのかは、この二人と少しの者が知るのみである。
「それと、デトロイト市の旧要塞も使うべきでしょうな」
「ならば、ヒューロン湖は捨てますか。アルテミスを捨てるのは正直惜しいものですが、まあ、問題はないでしょう。そうすると、モンタナに投入もここがベストですな」
「それを論じるのは、貴方がたの仕事です。私が関わるべきではない」
「ふむ、もっともです。それでは、ここらでお開きとしましょう」
二人は椅子から立ち上がり、各々の国に戻っていった。後には、二つのコーヒーカップが残された。




