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終末後記  作者: Takahiro
3-3_最終決戦
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意外とうまくいってしまったそれ

崩壊暦215年10月6日19:35


ダマスカスの惨状は東條少将らの元にも届いていた。


市民はそれを守るべき兵士に銃を向けられ、市民もまた銃を取る。流血が収まる雰囲気などまるでない。いや、寧ろその勢いは加速し始めていた。


「意外と、上手くいくものですね」


ハンニバル大佐は驚きを隠せていない様子で言った。


「これで、少なくとも私の理論の正しさが証明されたな」


チャールズ元帥は応えた。敵対する都市で市民を扇動する戦術、これは大成功だったと言えるだろう。


「しかし、あまりにも上手くいきすぎた」


ゲッベルス上級大将は言う。


「その通り。既に事態はダマスカスだけでは収まらなくなってきている」


「想定外で?」


「正直、そうですね」


チャールズ元帥は初め、この暴動について、ダマスカスで混乱を引き起こし、現下の艦隊決戦を有利に進める為のもの程度と考えていた。


ところが、いざやってみると、ダマスカスで内戦のような状況すら起こりつつあるに留まらず、周囲の都市にも暴動は広がり続けていた。


「スルタン陛下には、感謝せねばな…」


ゲッベルス上級大将は不敵な笑みを浮かべた。


「上級大将閣下もなかなかお人が悪いですね」


ハンニバル大佐は言う。


「そうか?私は当然のことを述べたまでだ」


「向こうにもそれなりの考えがあるでしょうに」


「結果が全てだ。結果的に、彼は我々にとって一番の功労者となってくれた」


どうしてこうも暴動が広がったかと言えば、それはスルタン・サッダームが暴動を武力を以て鎮圧してからである。


これによって、暴動などに興味のなかった市民も単純に政府への反感から暴動を始め、それを軍が鎮圧し、また市民が憤るという凄まじい負の連鎖が生まれた。


スルタンがこの選択をしていなければ、恐らくローマ連合帝国の作戦は失敗していたであろう。


また、軍が鎮圧を始めたことで、東條少将の語った内容が事実そのものであるということが世界に知れ渡ったのもある。


「それと、我々は今後、振る舞いを考えねばなりません」


東條少将は重々しく言った。


「あんなことを言ってしまったからにはそれ相応の行動を、ということか?」


ゲッベルス上級大将は言う。


「はい。我々はもう革命家となりました」


「確かにな」


「それ故に、我々は、我々に立ち塞がる全ての戦争を力付くで終わらせねばならなくなりました」


東條少将の宣言は、確かにローマ連合帝国にとって良い面もある。敵国の中に潜在的な味方が得られ、大義名分を得たことによって、国民の戦意も上がるだろう。


しかし、それは同時に、講話による外交的解決が極めて困難になったことを意味する。


世界を解放すると宣言した以上、大東亜連合もアラブ帝国もは降伏まで追い込まなければならなくなったのだ。さもなくば、世界からぺてん師扱いされることになるだろう。


「それに、本国がどう思うか。それも考えなければなりません」


「確かに、ベルリンもモスクワも、まさかこうなるとは思わなかっただろうな」


「はい。こうなってしまった以上、政府には世界を壊すとこ協力してもらわねばなりません」


東條少将は革命を宣言した。それは当然、ローマ連合帝国がまず革命を行うことを意味する。


しかし、それは痛みを伴う革命だ。200年間、大した問題もなく回ってきたシステムを破壊するのは容易なことではない。


「つまり、ここで勝った後の世界をどうするかについても考えなるべき、ということですか」


ハンニバル大佐は言った。


「まあ、そういうことだが」


東條少将は応える。


「失礼ながら、皆様はいかにも現在の決戦の勝利が約束されたかのように話していると見受けられます」


「確かに、否定は出来ない」


「我々の勝利の可能性は確実ではありません。ダマスカスで混乱を起こしたとは言え、未だ敵方の方にその天秤は傾いています」


「そう、だな。大佐は正しい。全くだ」


ハンニバル大佐の主張は実に正論であった。


先のことを考えながらでは目の前の戦争に集中など出来まい。まずはここで勝たないと何も始まらないというのに。


「わかって下されば、幸いです」


「では、この話は後でだな」


チャールズ元帥は言う。


「私も同感だ。遠くを見すぎて足元の石が見えていなかった」


ゲッベルス上級大将もまた、ハンニバル大佐に理解を示した。


しかし、そんな時に敵軍に動きがあった。


「アラブ帝国艦隊に動きあり。ミサイルの用意をしているようです」


「ミサイルか。迎撃の用意を、速やかに」


アラブ帝国艦隊に対するのは東條少将の艦隊である。緒将と話し合いをしている場合ではなくなった。


東條少将は通信を切り、眼前の艦隊の指揮に集中することにした。次の戦いが始まろうとしているのだ。


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