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終末後記  作者: Takahiro
3-3_最終決戦
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革命を宣す

さて、小康状態を維持すること12時間ほど。


ヘス総統もジュガシヴィリ書記長も、この大胆不敵な策を認めた。彼らも大分やけくそになっていた感はあったが。


「ダマスカスの方は準備が整ったとのこと」


「了解だ」


東條少将は言った。


内外に新たな戦争目標を提示するというこの博打、やるのは東條少将となった。大日本帝国を裏切った彼こそがこの役目に相応しいと判断されたからである。


「少将閣下、準備が出来ました。いつでも始められます」


「わかった」


東條少将は現在、背後にヨーロッパ国とアフリカ帝国の国旗が掲げられた部屋でマイクの前に立っている。準備とは、そこから世界にとある宣言を発表する準備のことだ。


既に世界に向けて放送を行う準備は出来ている。現下の敵国に対しては、その家庭に行き渡る電波を乗っ取る準備すら完了しているのだ。


東條少将は深呼吸をした。


「では、始めよう」


「了解です」


カメラが回りマイクが音を拾い始める。


「全世界、全人類に告ぐ。私は、ローマ連合帝国軍少将の東條である。今から私が話すことに、どうか耳を傾けてもらいたい。


知っての通り、我がローマ連合帝国軍は、大東亜連合、アラブ帝国軍と目下戦争中である。それがアラブ帝国の攻撃によって始まった戦争であることもまた、誰もが知っていよう。


そして、我が軍は当初、これを撃退し、国土国体を防衛することをこの戦争の目標としていた。当初の目標は、攻めてきたものを跳ね返すという極めて受動的なものであったのだ。


だが、今日、我々は新たな目標を定め、これを達成する為、今後とも戦争に邁進するこを決定した。


その目標とは、『世界の解放』である!


しかし、解放と言われて、ピンとこない者も多いだろう。それ程までに人類はこの状況に甘んじてしまっている。


今ここに明らかにしよう。その状況とは、人類が屍人に大地を奪われ、都市などという牢獄の中での生活を強制されるこの惨状である。


屍人が埋め尽くす大地、それはあまりにも当然のものとされてきた。200年以上の長きに渡って人類は壁に囲まれた都市に閉じこもってきた。


だが、それがあるべき姿である筈がない!地表は人類のものであり、人類は生ける屍に怯えて暮らす必要などどこにもないのだ!


しかし、諸君はこう思っただろう。屍人はあまりに多く、それを地表から絶滅させることなど到底不可能であろうと。


では、はっきりと言おう。それは各国が今の世界を維持する為に諸君に吹き込んだ嘘なのだ。人類の力は、既に屍人を地上から消し去れるまでに回復している。今にも世界を解放することは可能なのだ!


だが、大日本帝国やアラブ帝国はそれを妨害している。人類を檻の中に閉じ込めようとしているのだ。


それ故に、我々の目標は、それらの障害を排除し、人類を、世界を、屍人から解放することなのである!」


東條少将は、自分が取り返しのつかないことを言っていることに内心震えていた。


この事実を世界に公表してしまったことである良くも悪くも世界の秩序は崩壊に向かうだろう。正直、あまりにも性急に過ぎる宣言であった。この戦争の為に切るカードとしては重過ぎる。


だが同時に、本当に世界の解放をやってしまおうという気持ちもなくはなかった。


この宣言の前から、大東亜連合とアメリカ連邦が戦争を始めた頃から、既に世界の秩序は壊れ始めていた。今の世界情勢が世界を変革するに適して状況であるのは間違いない。


さて、東條で少将は言葉を続ける。


「然るに、全人類に告ぐ。世界の解放に、諸君の手を貸して欲しいのだ!


銃を取って立ち上がれ!支配者を打ち倒し、新しい世を作るのだ!


これは正に『革命』である!古き世の支配者を打ち倒し、新しい、我々の世界を取り戻すのだ!


我々は戦わなければならない!我々の大地を、地球を取り戻す為に!


我が軍も、今決死の戦いを敢行している。諸君にもまた、決死の戦いを期待する。血は流れるだろう。多くの者が死ぬだろう。


だが、革命は血によってのみ達成される。流された血は、我々の子供達の為の血だ!それに恐れを為してはならない!


我々に勝利を!人類に栄光を!


私から言えることは以上だ。諸君の奮戦を期待する。


終わり」


短い演説ではあったが、その内容は少なくとも驚愕に値するものではあっただろう。後は人々がこれにどう反応するか。銃を取れとは言ったものの、本当にそうしてくれる保証などない。


「お疲れ様です。少将閣下」


ハンニバル大佐は言う。


「こういうのはやはり軍人の仕事じゃないな」


「そうかもしれませんね。ええ、ダマスカスでは諜報部隊が活動を開始しました」


「上手くいくかな」


「正直、わかりません」


ダマスカスでは現地人に扮したこちらの諜報員が武装闘争を開始した。これに市民が賛同するか否かが今後の展開を大きく左右する。


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