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終末後記  作者: Takahiro
3-3_最終決戦
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北部方面Ⅰ

さて、その後不気味さを残したまま時だけが過ぎていった。再びの膠着状態である。


主にゲッベルス上級大将とハンニバル大佐は戦闘の展望について議論を行い、そこでは先制攻撃についても言及されていた。


だが、この静寂が打ち破られたのは一瞬のことだった。


「敵艦隊より多数の震洋を確認!数は最低2000を超えています!」


「2、2000だと!?」


カルタゴにもたらされたのは最悪の報せであった。尋常ではない数の震洋が一斉に解き放たれ、艦隊に向かってきているというのだ。絶望的な報告である。


「そ、そんな数をどこに…いや、そうか…」


ハンニバル大佐はこの状況に違和感を抱いた。そしてその原因を発見した時、敵軍の弱点をも見つけ出す。


1000機もの震洋をどこに搭載するのかと考えれば、それは飛行空母やその他の艦に片っ端から詰め込むしかない。それはつまり、本来ならそこにある筈の戦闘攻撃機がないということだ。


これは大きい。敵を空から嬲り殺しに出来る。


「全艦、白兵戦用意。そして、全艦載機は震洋の迎撃及び敵艦隊への攻撃を行え!」


「大佐殿、ゲッベルス上級大将は、どうしますか?」


今ハンニバル大佐が直接命令したのは彼の直属の部隊のみである。


「今の命令を直ちに実行してくれるように伝えてくれ。賢明な閣下のことだ。きっと分かってくれるだろう」


「はっ」


今回は時間がない。空中戦では数十秒の遅れが命取りになる。ここは両名で議論をしている時間などはないのだ。


そして、ゲッベルス上級大将ならば、この状況を理解し、この策が即座に出し得るものの中では最上のものであろうと分かるだろう。ハンニバル大佐はそう確信している。


「ゲッベルス上級大将より、了解した、とのこと」


「流石は閣下だ。我々も、後れを取るなよ」


飛行空母、更には各艦が申し訳程度に搭載している戦闘攻撃機も全てが出撃する。カルタゴも、その正方形の甲板のちょうど対角線上の滑走路から大量の戦闘攻撃機を飛ばす。まあ、戦闘攻撃機に滑走路は必要ないが。


かくて大空は銀翼に埋め尽くされた。


客観的に見て、それは半ば狂気的な戦闘であろう。マトモな空中戦をやり合うでもなく、ただ敵艦隊の撃滅を目指して双方の航空機が猛進していくのだから。


「震洋の迎撃は、間に合いそうもありません」


「分かっている。これまでの戦闘からしてな」


震洋というのは突撃に特化した機体だ。それを撃ち落とすのが困難であることは、これまで震洋が投入されてきた戦闘を観察すればわかることである。


「カルタゴにも来ています!」


「やはりか」


さしもの日本軍もカルタゴと正面からやり合うのは避けたいらしい。確かに、震洋によってカルタゴを制圧してしまえば戦わずに済む。そう出てくることは、ほとんど確信に近い予想がされていた。


それ故に、それへの対処法も既に考案されている。


「震洋、来ます!」


「衝撃に備えよ!」


震洋がカルタゴの甲板に突入してきた。しかし、それによって艦全体に衝撃が走るようなことは起こらなかった。カルタゴの巨大な質量に比べれば、震洋の衝撃など些細なものなのである。


「まずは、奴らが甲板を貫けないことが前提だな」


カルタゴの装甲は非常に厚い。飛行艦の装甲に穴は開けられても、カルタゴの装甲は貫けまい。


震洋から出てきた日本兵はカルタゴの装甲を破ろうとしたが、案の定、表面に傷を付けただけで終わった。この予想は的中である。


「飛行甲板に向かったな。これで我々の勝利だ」


装甲を貫けないとなれば、敵が向かうと考えられるのは飛行甲板、つまり滑走路である。カルタゴの空母的な部分である飛行甲板ならば装甲も薄いだろうと敵は考えるだろう。


そして、今そこにいる敵はまさに予想通りの行動を始めた。


「敵兵が作業に入りました」


「よし。では奴らに砲弾を食らわせてやれ」


「はっ」


ハンニバル大佐が命じると同時に、飛行甲板を挟む主砲が日本兵に狙いを定めた。つまりカルタゴがカルタゴ自身に照準を合わせたのである。


「撃て!」


そして、その砲弾は躊躇なく放たれ、数発で敵兵を全て粉々にした。一方、飛行甲板の方は、滑走路としての機能は喪失したものの、それ以上の被害はなかった。


この作戦は、自分で自分に照準を合わせられるカルタゴだからこそ出来た作戦である。普通の艦は構造上、自らの甲板は撃てない。


「大成功だな。これでカルタゴが奪われるという最悪の事態は回避出来る」


敵軍は、これを知ったとしても対処出来ないだろう。全ての主砲を破壊せねばどうにもなならないのだから。


少なくともカルタゴは守り抜けた。だが、それ以外の艦については話が別だ。


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