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終末後記  作者: Takahiro
3-3_最終決戦
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戦場の確定

崩壊暦215年10月3日13:46


「陛下、間もなく最後の決戦が行われます。万一に備え、地下壕にて戦局をご覧になって下さい」


ユースフ元帥はスルタン・サッダームに言った。


「わかった。ここは素直に従うとしよう」


「ありがとうございます」


「しかし、最後の決戦がシリアで行われるとはな」


「運命というものを感じざるを得ませんな」


さて、現在彼らが会話を交わしているのはシリアの首都ダマスカスである。スルタンは、リヤドを捨ててここにいた。ソビエト共和国軍は必死にリヤドを落とそうとしているが、そこにスルタンはいないのである。


まず、この卑怯とも言える作戦によって、ジューコフ大将の作戦は完全に失敗に終わった。もっと、仮にスルタンがリヤドで抗戦していたとしても決戦には間に合わなかっただろうが。


「我が軍の戦力は、4個艦隊か」


「はい。それに加えてジブリールも御座います。そして、これが現状で投入出来る最大の戦力となります」


「3個艦隊については、仕方ないか」


「左様です」


ジューコフ大将と戦っていた3個艦隊は、スルタンがリヤドにいると敵に思い違いをさせる為、決死の抵抗を続けさせている。これを動かすのは愚作であると言えよう。


そして、それを除いた全ての艦隊がダマスカスに集められた。アフリカ方面の軍も既に撤退してある。


「敵の戦力は?」


「合計で9個艦隊です。但し、これにカルタゴという兵器が加わっています」


「カルタゴか。勝てるのだろうな?」


「沈めることは困難と思われますが、日本軍の十八番である白兵戦でこれを占領することは可能でしょう。既に日本軍にはこの旨を伝達しております」


カルタゴは大昔からケープタウンのオブジェとして知られていた。しかし、それが飛ぶとは誰も思っていなかった。


ユースフ元帥等もかなり驚かされたは驚かされたが、しかし同時に大した脅威ではないと判断している。巨体とは言え所詮は一隻の飛行艦、撃破する方法などいくらでもあるのだ。


「だが、白兵戦も内部からの反撃で跳ね返されることは考えられるだろう。あれほどの艦となれば、それ相応の兵士を積んでいる筈だからな」


「その場合、ジブリールを用います」


「それで勝てるのか?」


「いかなる厚さの装甲とて、ジブリールは貫くことが出来ます。問題はありません」


レーザーというものの性質上、時間さえかければどんなに厚い装甲でも溶解させ貫通することが出来る。地を掘るように装甲を貫くことが出来るのだ。


「わかった。元帥がそう言うのなら、それを信じよう」


「はっ」


「あと、日本軍の戦力はいくらだったか?」


「6個艦隊です。つまり、合計すれば我が方の戦力の方が上回っているということになります」


日本軍もまた、今出せる全ての戦力をここに持ってきている。この中東に地球上に存在する飛行艦隊の大半が集まることとなるのだ。


「しかし、1個艦隊程度の差なら引っくり返される可能性もある。油断はするなよ」


「言われるまでもありません」


「頼りにしているぞ」


10対9を圧倒的な優位と呼ぶのは無理がある。決して油断は出来ない。


「閣下、敵艦隊が針路を北向きに変更しました。予想通りの経路を辿っています」


「了解した。こちらも第一プランで対応する」


「はっ」


「いよいよか」


敵艦隊は地中海からダマスカスまで直進してくる訳ではない。海上で戦闘を起こせば、そこで落ちた飛行艦が永遠に失われてしまうからである。これは日本軍のアメリカ上陸作戦の時からの原則だ。


北向きの針路というのは、つまりダマスカスの北方から地上に上がり、ダマスカスに北側から攻めてくるということである。


「決戦はホムスの辺りで行われるか」


「はい。またホムスそのものについては、抵抗する意味もありませんから、都市を明け渡すように命じてあります」


「それでいい」


ホムスはダマスカスの北にある都市である。敵艦隊はこれとダマスカスの間辺りに上陸してくると考えられる。


ホムスで敵艦隊を攻撃させるという手もなくはないが、どうせ一瞬で沈黙させられるし、時間稼ぎなどをする必要もないということで、敵が来次第無条件降伏することとなっている。


「それで、戦闘の開始はいつ頃になるんだ?」


「敵軍の後ろから迫る日本軍が配置についた時ですので、およそ15時間後くらいになるでしょう」


「わかった」


日本艦隊は敵艦隊の更に北側に布陣することになっている。つまり艦隊を丸ごと挟み撃ちする格好となるのだ。その点でもこちら側が少々有利である。


「では、私は地下に籠っているとしよう。後は頼んだぞ」


「はっ。必ずや、勝利を勝ち取って見せましょう」


スルタン・サッダームは地下壕へと向かい、ユースフ元帥は艦隊を操るべく彼の旗艦に乗り込んだ。

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