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終末後記  作者: Takahiro
3-2_対欧阿戦線
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今後の方針Ⅲ

「上級大将閣下、現状、我々が無駄な兵を西に展開しているというのは、認識しておられますよね?」


東條少将は尋ねた。それに対し、ゲッベルス上級大将は苦い表情を見せた。


「確かにそうだ。日本の、ある種残存艦隊主義的な作戦によって、我々は自国を同時に防衛し、結果、アラブ帝国軍に非常な苦戦を強いられている」


「そちらも苦戦しているのですか?」


「ああ、口が滑ったな。まあこの際言ってしまうと、我が軍は迫る敵軍3個艦隊に対し2個艦隊しか東方に回せず、艦隊戦力の消耗を恐れた我々は、コンスタンティノープルを事実上見殺しにしている」


「それはまた…」


ヨーロッパ国の保有する飛行艦隊はおよそ7個。だが、それを北米の日本軍6個艦隊とアラブ帝国軍3個艦隊に対して配置すると、両側で1個艦隊にずつ足りなくなってしまう。


また、その艦隊を失うともう後がない以上、迂闊な艦隊決戦も挑めなくなっている。まあその事情は敵も同じなのだが、戦力において不利がある以上、ヨーロッパ国側が負ける可能性は高く、敵を利する可能性の方が高い戦いは誰も望まないのである。


「そうなってくると、自由に動かせる艦隊は残っていませんか」


ハンニバル大佐は言った。まあ予想した通り、ヨーロッパ国の方もアフリカに援軍を送る余裕などないようであった。


「そうだな。我が軍は現在、どこで敵を迎え撃つべきか必死に考えているところだ」


「そちらは、武運を祈ります」


「おう。ありがとう。で、要件は以上かな?」


以上で交渉しておきたいことは全て言い終わった。ゲッベルス上級大将には、ヘス総統に「鏡」の生産を持ちかけてもらおう。決定したのはそれだけである。


そう言えば、前にハンニバル大佐がケープタウン大学に人を派遣してたのは不要になっていた。彼の迅速な行動は完全に無駄足となってしまった。


さて、ゲッベルス上級大将からの報告を待つ間、今度はカルタゴの飛行実験をする番である。


カルタゴの点検を仕切るパイク博士からはいつでも飛ばせるとの報告があり、大和の方もいつでも問題なしと判断している。


「結局、誰が参加するのですか?一応、それなりの危険を伴いますが」


ハンニバル大佐は問うた。


何せ安全性の検証がまだ理論から出ていない兵器だ。実戦でいかなる想定外が生じるかは予想も出来ない。そして、仮にアフリカ帝国軍の将官を全員乗せたとして、万が一カルタゴで致命的な故障が発生した場合、アフリカ帝国軍は指導者を失って瓦解するだろう。


その可能性が僅かでもある存在する以上、誰かは残しておくべきである。


「なら、まず私はパスだ」


チャールズ元帥は言った。ハーバー中将もそれに続く。まあ、彼らがわざわざカルタゴに付き合う必要も最初からない。妥当な判断だ。


「私は乗ろう。大和にだけ仕事をさせる訳にはいかないからな」


東條少将は名乗りを上げた。


「確かに、それはあまり愉快なものではありませんね」


「ああ。後は、まあ適当にうちの部下を連れて行こう」


具体的には近衛大佐や神崎中佐くらいだろう。


「わかりました。後は私自身も、当然乗ります。そんなものですかね」


ハンニバル大佐はアフリカ帝国軍の責任者として試験に参加する。まあその考え方が古臭過ぎるという気もしなくはないが。


「私はいかなくていいのか?」


ハミルカル代表は言う。


「ああ、代表は軍人ではありませんし、あなたに死なれては、本当に国が瓦解しますので、ご遠慮頂けると」


「わかった。そうしよう」


なんだかんだ言ってハミルカル代表はこの帝国の纏め役としてかなりの仕事をこなしている。この国は帝政を宣言しながら皇帝がいないというイベリア半島辺りで見たことのある状況である為、ここで指導者に死なれては、国は空中分解の憂き目に遭ってしまうだろう。


それに、そもそもハミルカル代表がこの試験に参加する理由もさしてない。


「では、この面子で行こうか」


「そうなりますね」


まあ最終的にはアフリカ帝国軍の重鎮の殆どが参加することとなった。危機管理能力が低過ぎやしないかと言われそうな話だが、まあ何とかなるだろうという空気があった。


東西から差し迫る脅威に比べれば、この程度、何てことはないのである。


「ああ、一ついいか?」


チャールズ元帥は突然に言う。


「どうされましたか?」


東條少将は応える。


「結局、カルタゴの艦長は誰がやるんだ?」


「それは、私になります。やはり、アフリカの遺産は我々自身で使いたいものです」


「なるほど。頑張ってくれ」


カルタゴの艦長はハンニバル大佐が務める。逆にそれ以外の人選もないだろう。東條少将は既に戦艦大和艦長であるし。


「アルテミスと同じことになるなよ」


そう言えば、同じ旧文明の遺産である湖上要塞砲アルテミスは、日米戦争によって失われている。チャールズ元帥は迷信は信じない人間だが、どこか不安を感じざるを得なかった。


「え、ええ…」


東條少将にとってそれは非常に気まずい話題である。アルテミスは自爆で沈んだが、その時の日本軍には東條少将(当時は中佐)もいたからだ。


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