スペシガン到着
スペシガンというは、スペリオル湖とミシガン湖の間の都市という意味の、架空の都市です。
崩壊暦214年7月3日5:12
「あと2時間58分34秒で、スペシガン外壁に到達します」
「いや、大和、秒までは要らんよ。その程度、すぐに揺らぐからな」
連合艦隊は、先程、流星作戦で初の空戦を展開した後、また米艦隊とにらみ合いながら東進を続けている。
そして、ついに最初の目的地であるスペシガンが迫っている。
「閣下、このままでは敵軍にみすみす逃げられます。せめて、要塞だけでもここで足止めすることはできないでしょうか」
東條中佐は、東郷大将に要塞の足止めを提案する。また、今回は、落ち着いてものを考えている様子だ。
「ふむ、妥当な意見である。しかし、敵は、恐らく、スペシガンより要塞を守りながら後退するだろう。要塞を攻撃するのは、難しいのではないかな」
現在、両軍が相対するスペリオル湖と、その南のヒューロン湖との間は、河川で繋がれている。
そして、その西にスペシガンはある。
スペシガンを守るなら、湖上要塞は護衛なしでヒューロン湖まで行くことになるし、湖上要塞を守るなら、スペシガンはほぼ無防備の都市となる。
しかし、これまでの米艦隊の様子から、ここを守りきろうという意思は読み取れない以上、米艦隊は湖上要塞を守りながらヒューロン湖に撤退すると思われた。
「だったら、スペシガンはおいといて、全艦で要塞を襲ったらどうですかね」
黙考する中佐と大将を眺めていた近衛大佐は、珍しく作戦を提案する。
「まあ、それも考えましたが、そもそも、通常兵器で500万tの要塞は止められません」
「そう、なのか。ならば万事休す。諦めてスペシガンを制圧しよう」
近衛大佐は、あっさりと諦めを決意した。
湖上要塞は、その上の砲台などはいくらでも破壊できるが、その本体はどうあがいても、戦艦の主砲や対艦ミサイルごときでは破壊できない。
できるとしたら、戦術核ぐらいだろう。
「そうだ。大和、要塞の主機をうまく破壊するとかは、無理か?」
近衛大佐は、大和に、敵の主機を破壊できるか尋ねる。はっきりいって、これが最後の手段なのは否めない。
「敵の830mm特殊装甲を貫くには、50cm砲をもってしても弾着角87度以上が必要です」
「それって、可能か?」
「不可能です」
「ああ、はい」
大和が出した結論は、極至近距離でほぼ真上に打ち上げた砲弾を当てれば、なんとかなるというものだ。
しかし、そんなことは流石に不可能である。
「ならば、閣下、私は、近衛大佐の言う通り、スペシガン制圧に向かった方がよいと思います」
「そうだな。私も、同感だ。艦隊には、米艦隊を追わないよう伝えてくれ」
連合艦隊の方針は決定した。
そして、暫く時がたつとその時はやって来た。
「敵、スペシガンとの間から離れていきます」
「やはりか。全艦、進路を変えず、スペシガンへ向かえ」
米艦隊は、スペシガンより東に向かい始めた。要塞を守るため、河川に向かっているのだろう。
連合艦隊は、それは無視し、そのままスペシガンに直行する。
やがて、米軍による妨害がないままに、連合艦隊はスペシガンに到着する。
「スペシガンより、降伏するとのことです」
「結構。艦隊を着陸させよ」
スペシガンは、本当に何の抵抗もしてこない。連合艦隊が近づいた途端に、降伏を宣言したのである。連合艦隊は、寧ろ不気味なほどの静けさのなか、スペシガンに影を落とし、そこに降り立った。
それは、言うなれば、嵐の前の静けさというものなのだろう。
5000000tがどんくらいヤバいかというと、史実の戦艦大和80隻分くらいの重さです。




