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終末後記  作者: Takahiro
2-10_アメリカ連邦の抵抗
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ワシントンの闘いⅡ

さて、それからおよそ24時間が経過した。


しかし、都市を徹底して破壊する戦術を用いたにも関わらず、ワシントンは未だに陥落してはいなかった。


「防空壕か。これは、時間内に終わらせるのは無理そうだ」


防空壕をそこら中に建てるのはアメリカ連邦の十八番であり、その事実は帝国の将兵ならば誰でも知っていることなのだか、それで何か有効な対策を思い付くことはなかった。


結局、いくら火力で周囲を制圧しても、直接の占領の際には歩兵と戦車を送らねばならず、無論その際味方ごと敵を砲撃することは出来ない。結果、帝国軍は常に奇襲を食らい、白兵戦に近い戦闘を強いられている。


考え得る対応策としては毒ガスでも使えば勝てるだろうが、そのような残虐な行いを帝国軍は許さない。まあ歴史上残虐で有名な米軍に対してならいいじゃないかという声もあるが。


「米艦隊、旧カナダ-アメリカ国境を通過しました」


「予想通りか」


「若干遅いですが」


グリーンランドとニューヨークを結ぶ線上で考えれば、米艦隊とニューヨークの現在の距離は800km。それに対してワシントンからニューヨークへの距離は400km程度だ。


つまり、今からニューヨークへ向かえば、10時間程度は早く到着し、事前に高射砲などを破壊することが出来る。


「どうしようか…想定よりワシントンの制圧が進んでいないからな…」


実のところ、帝国軍としては、ワシントンをあらかた制圧した後ルーズベルト皇帝にアメリカ連邦への降伏を促す演説をしてもらうつもりだったのだが、それに使えそうな建物は未だ占領出来ていない。


また、それでショボい建物で演説をしても、それはそれで逆効果だろう。


「やはり、ワシントンは一旦放置で米艦隊の殲滅に向かうか」


「ですが、ワシントンを先に落とした方が後々に楽になると思うんですけど」


雨宮中佐は言う。確かに、先に首都を落としてしまえば、ニューヨークでの抵抗が幾分か弱くなることは予想される。


「それもそうだが、飛行艦隊同士の戦いよりは地上のレジスタンス制圧の方が楽だろう」


「そうですかね…?」


「ああ。レジスタンスごときなら、面倒な奴等は砲撃すれば黙るが、飛行戦艦は砲撃してもなかなか黙らないだろう?」


「ですが、レジスタンスに防空壕を使われる可能性は?」


確かに、防空壕の厄介さは現在進行形で帝国東方軍の誰もが見に染みて感じている。そこかしこでレジスタンスが防空壕に立て籠り始めたら、それこそ悲惨なことになるだろう。


「いや、防空壕は全て占領しておけるだろう。その点に関しては心配は要らない」


防空壕のような固定目標は、事前に駐屯部隊を置いておけば奪取されることはないだろう。レジスタンスごときに正規軍と正面から戦える武器はないからだ。


まあそもそもレジスタンスの厄介さの本質はその神出鬼没さにあり、寧ろ防空壕を奪いに来てくれた方がありがたいくらいである。


「なるほど。確かに」


「ああ。それに、奴等は基本的に存在が違法だからな。どんな非人道的な対処も違法ではない」


「と、言うと…いや、聞かないでおきます」


無論、何の罪もない民間人に危害を加えるのは絶対的犯罪である。しかし、占領軍に対し反抗する者、民間人の振りをした軍人は単なる犯罪者である為、それ相応に処断することも許されている。


つまり、いざとなれば捕らえたレジスタンス全員を生き埋めにでもすれば良い。よって、伊藤中将はレジスタンスについて対して問題視はしていない。


敵の飛行艦隊のみが脅威なのである。


「では、ワシントンには地上部隊を残し、ニューヨークへと侵攻することとする」


そしてニューヨークに到着した。


「航空艦隊、全機出撃し、敵のあらゆる砲台を破壊せよ」


今のニューヨークに敵の航空艦隊は存在しない。制空権は完全に帝国軍のものである。地上の対空ミサイルもさしたる脅威とはなり得ず、若干の損害は出たが、十分に無視出来る範疇に収まった。


「全高射砲の破壊、完了しました」


「素晴らしい。我が航空艦隊の前には高射砲など無力だな」


結局、都市の防衛装置は飛行艦隊と組み合わせってこそ真価を発揮するもので、それ単体ではほぼ無力なのである。


「では、ニューヨーク上空へ行こうか」


「まさかニューヨークを囮にするおつもりですか?」


男らしくないが、ニューヨークの上空に居座れば、確かに米艦隊は手出し出来なくなるだろう。自分の手で都市を破壊することになるからだ。


「いや、ただ少しやりたいことかあってな」


「は、はあ…」


()()()()を呼んでくれ」


艦隊決戦は勿論都市の外で行う予定である。だが、伊藤中将はその前にちょっとした悪巧みを思い付いた。

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