表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末後記  作者: Takahiro
1-3_五大湖攻防戦
59/720

嫌がらせ作戦Ⅱ

両軍が戦端を開いてからおよそ2時間が経った。


「戦局は、膠着そのものだな」


チャールズ元帥は呟く。未だに、米艦隊は20ノットで後退中である。湖上要塞も、未だにその高射砲を使ってはいない。


また、両軍ともに前面の戦艦隊が砲火を続けているが、せいぜい威嚇にしかなっておらず、戦局は膠着に陥っている。


「はい。ですが、作戦の目的からすれば、現状維持が最善でしょう」


ハーバー中将は、あくまで冷静に、状況を観察する。


膠着状態とはいえ、米軍は、十八番の対艦ミサイル攻撃を続けており、僅かずつながらも敵に被害を蓄積させている。しかし、その蓄積も決定的な打撃とは言い難い。現状では、一隻たりとも戦列からは外れてはいない。


そんな時、ついに、膠着を破る知らせが届いた。


「ニミッツ大将より入電。日本艦隊攻撃において、高射砲の使用を許可されたし、とのことです」


高射砲を使用するには、もちろん敵に近づかなければならない。即ちこれは、突撃の許可を求める電信ということだ。


これまで、ニミッツ大将は、チャールズ元帥にとっては厄介な男であったが、意外にも、元帥に行動の許可は取るようだ。事前に一応の許可はしていたチャールズ元帥としては、少し驚いているのだ。


「案外、ニミッツ大将もいい奴なのかもな。まったく、政府が絡むと、問題ばかり起こるからな」


チャールズ元帥は、呆れたような独り言を発する。そして、命令を下す。


「攻撃を許可する。湖上要塞は、ニミッツ大将の指揮の下、日本艦隊を攻撃せよ」


アイオワから、その電信が届くとともに、5つの湖上要塞が徐々に後退スピードを緩めていく。湖上要塞は元の横陣を維持したまま、日本艦隊に近づく。


湖上と上空の動きが、見事に段々にずれていった。


しかし、湖上要塞の突然の動きにも、日本艦隊は確実に対応していく。その艦砲は湖上要塞に向けられ、その周囲に砲撃が集中していく。


さて、舞台は、その湖上要塞に移る。


「大将閣下、第三フロート高射砲、被弾しました」


案の定、日本艦隊の砲弾は、湖上要塞の一つに当たった。命中した部分からは、煙が上がっている。しかし、湖上要塞は普通の船である。そう簡単には沈まない。そして、その巨大さ故に、砲弾如きでは揺らがないのだ。


「そろそろ、分散しようか。プランDを実行だ」


ニミッツ大将は、次の指示をする。


そのプランDとは、5つのフロートで半円形の鶴翼の陣を作り、中心に日本艦隊に砲火を浴びせるものだ。


湖上要塞は、一斉に南北方向に散開し始める。日本艦隊は砲撃を続けているが、作戦に支障はない。


「よーし。全高射砲、撃て!」


その数瞬後、湖上要塞の数十の超える高射砲が一斉に砲弾を打ち上げた。すでに、日本艦隊の攻撃でやられた高射砲も幾つかあるが、それを引いても、十分な数が確保されていた。


前方と左右から、砲弾が日本艦隊を襲う。


「命中、17です」


「上々、と言ったところだな」


命中率はおよそ10%である。悪くはない値だろう。しかし、大半の砲弾は、日本艦の装甲に阻まれ、そのまま落下してきている。


下から打ち上げた砲弾の威力が弱いのは、物理の常識だ。なまじ、砲弾が重すぎるが故に、高射砲には向いていない。先人達は何を思ってこれを造ったのかと、疑問に思わざるを得ないものだ。弾かれた弾を除いた命中弾は、4、5発程度である。


その後も、高射砲は火を吹き続けた。その度、僅かの弾が、日本艦隊に損害を与えていく。


しかし、ついに敵も行動を起こした。


「敵、減速します」


敵からしたら、真下にいる湖上要塞は、さぞ攻撃しにくいだろう。まさに、灯台下暗しを地で行く状態だ。


故に、敵は、少し距離をとろうとしているようだ。


「もう1発撃ったら、こちらも後退だ。あまり、艦隊から離れないようにしよう」


ニミッツ大将は、撤退を指示した。


このまま日本艦隊を追えないこともないが、艦隊から無闇に離れれば、万が一を考えると危険と言わざるを得ない。また、このままでは、日本艦隊の的にされるだけである。


湖上要塞と日本艦隊は、互いに離れるように移動していく。


やがて、湖上要塞、米艦隊、日本艦隊の位置関係は、振り出しに戻るのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ