表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末後記  作者: Takahiro
2-9_アフリカ統一戦争
589/720

アンタナナリボの戦いⅡ

「それでは、私はそろそろ失礼します」


モントゴメリー大将はそう告げる。


「どこ行くんだ?」


「今回は私も前線に行こうと思います。ここが最後の正念場ですので」


「そうか。頼んだぞ」


今回はモントゴメリー大将が前線で直接指揮を行う。その旗艦は戦艦マダガスカル。この艦が沈んだ時は、恐らくアフリカ連邦共和国が終わる時だろう。


「敵軍、アンタナナリボより100km」


「そろそろだな。全艦、覚悟を決めて臨め」


さてこの艦隊はある工夫をこらしてある。即ち、全ての艦がワイヤーで繋がれているのである。とにかく一秒でも長く時間を稼ぐ為の策だ。


そして現在はアンタナナリボから10km程度に布陣している。ちょうど艦隊の射程と高射砲の射程が一致するくらいの距離である。つまり、艦隊と高射砲が同時に砲撃を開始出来るのだ。


「敵艦、まもなく射程に入ります」


「全艦、砲撃用意」


そして最後の戦いが始まる。


「撃ち方始め!」


それと同時に敵艦隊も発砲、戦闘は開始された。


砲弾の数は向こうの方が多いが、こちらの方が火薬の量は多い。火力では勝っている。


「敵巡洋艦2、撃沈!」


「我が方の巡洋艦1、航行不能!」


「ワイヤーで支えろ!また、全艦、そのまま前進せよ!」


まずワイヤー作戦は上手く機能している。本来ならば落ちていく艦を無理矢理空中に繋ぎ止めることには成功している。


そしてモントゴメリー大将は前進を命じた。普通の砲撃戦ならそんな命令はしないが、そもそもこの艦隊の目的は敵艦隊の殲滅ではない。敵を前進させないことだ。


「駆逐艦1被弾!」


「支えられるか?」


「問題ありません」


当然ながら敵は砲撃を集中してくる。だが、ワイヤー作戦によって未だ一隻も沈んではいない。ある意味ゾンビのような状態だが。


また、こちらの高射砲が攻撃の手を休めることはない。モントゴメリー大将の艦隊が撃たれている間は、敵艦隊も撃たれ続けているのである。


「戦艦2、撃沈!」


「素晴らしい。このまま敵を押し留めるぞ」


まだ敵は高射砲を射程に入れられていない。一方的な攻撃が成立している。ここでこのまま耐え抜けば、勝てるのだ。


「敵、前進し始めました!」


「クソッ、見抜いたか」


作戦は恐らく見抜かれた。敵艦隊はこちらの艦隊を意に介せず進み始める。


「ここで進ませてはならない!このまま進み、我々が壁となる!」


後は物理的に壁になってやるまで。


しかし被害は加わって巡洋艦2と駆逐艦1。


「閣下、ワイヤーで支えきれません!」


「限界か。ここを切り落とせ」


「了解」


一部の艦を切り捨てればまだ耐えられる。まだまだ艦隊は健在だ。


そして敵も被害をどんどん増やしている。既に戦艦4隻、巡洋艦13隻、駆逐艦10隻が沈んだ。殆ど一個艦隊に相当する損害を与えた。しかし敵も退く気はないらしい。


「このまま進め!最後の一隻になるまで我々はここにある!」


「閣下!敵航空艦隊が出撃しました!数は500!」


「ここで来るか…対空戦闘用意!」


先の特攻作戦のお陰でこちらの戦闘攻撃機は使いきってしまった。後は艦隊の防空システムで耐えるしかないが、それも貧弱と言わざるを得ない。


「駆逐艦2、航行不能!」


「片方は切り捨て、片方は浮かべよ!」


敵の攻撃は激しさを増す。双方の距離は10kmを切り。対空戦闘などおぼつかず、殆ど撃たれるままなのだ。


「閣下、アンタナナリボより航空艦隊です!」


「何?」


モントゴメリー大将はそんな命令はしていない。だが、アンタナナリボに残る70機程度の航空艦隊(艦隊とすら言えないが)が飛び立ったらしい。


「まあいい。対空戦闘に参加するならしてもら…」


「閣下!アンタナナリボより入電!『我ら特別攻撃を敢行す』とのこと!」


「何だと!?まさか…」


そして、艦隊の上空を戦闘攻撃機が掠めていったのは僅かに数秒後。そしてそれから十秒も経たないうちに、彼らは自爆した。


「敵空母4、撃沈!」


「これが狙いか…よく、やってくれた」


空母がなくなったということは、今上空にある戦闘攻撃機が着陸出来なくなるということだ。これは効くに違いない。


だが、それを見届けた瞬間、戦艦マダガスカルの艦橋は大きく揺れ、その光は消えた。そして瞬時に非常電源に切り替わる。


「マダガスカル、主機停止!」


「指揮機能は維持出来るか!?」


「可能です!またワイヤーによって艦を支えることも可能です!」


「よし!戦闘続行!」


最早砲塔を動かす必要はない。戦艦はただその巨躯を生かして壁になれば良いのだ。しかし、ワイヤー作戦を用いてもなお、既に半分の艦が脱落してしまっている。時間はもう僅かしか残されていない。


敵軍が退くかこちらが全滅するか、どちらが先になるのか。ここまで来て出来ることと言えば、前者が先になることを祈るしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ