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終末後記  作者: Takahiro
2-9_アフリカ統一戦争
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カルタゴⅡ

「ほうほう。あんた、旧文明の遺産か?」


「え?い、いや…」


パイク博士はいとも簡単に大和の正体を見抜いてしまった。東條少将はどこか畏敬の念すら覚え始めた。


「まあいい。さてカルタゴの状態について説明しましょうか。いや、それよりもカルタゴのスペックについて説明すべきでしょうか?」


「取り敢えず、少将閣下もいることですし、カルタゴのスペックからでいいんじゃないですかね?」


近衛大佐は言う。まあ確かに、カルタゴの状態を説明されても東條少将は大して理解も出来ない訳で、妥当な選択と言えるだろう。


「了解です。ええまず、カルタゴの武装から説明しましょう。皆さんは3Dの構造図があるようですが、まずは甲板をご覧くださいな」


なお、パイク博士は紙の資料で問題ないようだ。


カルタゴは他の如何なる飛行艦、水上艦にも類似していない。まず上から見た形は殆ど正方形である。そしてその対角線上に滑走路があり、その左右に砲塔や艦橋が並んでいる。見たところ艦橋は2つあるようだ。


「まず積んである武器からです。滑走路の横にあるのが主ですが、まず主砲たる64cm砲を36門、副砲たる28cm砲を86門、8cm対空電磁加速砲を842門、対空対艦兼用ミサイルランチャーを240機、搭載しています」


「副砲や対空砲に比べて、主砲が比較的少ないですね」


「ええ。カルタゴの基本的な設計思想は、防御に特化しています。まあこれが都市の上空に来れば、誰でも降伏したくなるでしょう」


「なるほど。カルタゴは戦術兵器ではなく戦略兵器であると」


「流石は東條少将。その通りです」


カルタゴの攻撃力は、そこまで高くはない。主砲の数にして、通常の飛行戦艦4隻分である。まあ大口径砲なだけにそれよりは強力だが、それでも一個艦隊未満であるのは自明だ。


つまり、カルタゴに求められる任務は敵艦隊の殲滅ではない。寧ろそれを圧倒的な防御力で無視し、敵の都市を急襲することを本懐とする。敵都市上空まで進めれば、その制圧は容易であろう。


「滑走路がありますが、艦載機は何機です?」


神崎中佐は言う。まあこんなにも存在を主張してくる滑走路を無視する訳にはいかない。


「そう焦りなさんな。まず艦載機の積載能力ですが、甲板に雨ざらしかつ格納庫も全て使った場合、戦闘攻撃機およそ800機を同時に運ぶことが可能です」


「800ですか。それは凄い」


それはだいたい3個艦隊分の積載量である。こっちは十分過ぎる量だ。


「ただ、滑走路を滑走路として使いたい場合は、幾分か減りますがね」


「滑走路として?」


「ええ。カルタゴはあまりにもデカイもので、普通の旅客機の離着陸も出来るのですよ」


「なるほど。そういうことですか」


普通の飛行空母は一部の軍用機の離着陸しか出来ない。まず戦闘攻撃機は基本的に垂直離着陸をするし、それが出来ない機体でも、かなりの短距離で離着陸が可能なように設計されている。


よって、民間機のようなデカブツを飛行空母の上に止めるのは不可能なのだ。しかしカルタゴは違う。


最低限の長さとは言え、一般的な空港の滑走路程度の長さがある。ただそれを使いたい時は、当然ながら滑走路の上に戦闘攻撃機を置いておく訳にはいかない。そういうことだ。


「その他に、艦内には大きな格納庫があり、戦車180両程度なら運搬出来ます。また、兵士はおおよそ30000名が収用出来ます」


「兵士というのは、地上戦要員のみで30000ということですか?」


「ええ。艦橋の人間や機関士なんかは除いた人数です」


「地上戦への備えは十分であると」


旧文明の基準にして2個師団の兵力。一つの都市を占領するにはこれまた十分過ぎる兵力である。


「後は、装甲について話しましょうかね。カルタゴの装甲は、甲板で180cm、舷側で130cm、船底で90cmです。また主砲塔の装甲は250cmに達します。これを貫ける砲は存在しません」


だいたい東條少将の背丈より少し低いくらいの厚さの装甲板によって覆われていると考えれば、その破壊はほぼ不可能と解るだろう。


「あと、艦橋についてですが、2つあるうちの右側が艦の制御、左側が艦隊の制御のための艦橋となっています」


「なるほど。ですが、その左側の艦橋を使うことはなさそうです」


「カルタゴの艦橋は、従来の戦艦とは比較にならない高度な処理能力を持っておりますが」


「こちらには大和がいるので」


「しかしどちらの処理能力が上かは解りませんな」


カルタゴのAIも大和のAIも共に旧文明の遺産である。大和が文明崩壊以後に造られたものと比べて秀でていることは明らかだったが、カルタゴと比べてどうかはなるほど不明だ。


「大和、実際のところどうなんだ?」


「カルタゴのAIと接触してみないことには何とも言えませんね」


「それもそうか」


「なら、接触しに行きましょうか」


パイク博士は言う。


「いいんですか?」


「ええ。もちろんですよ」


という訳で、一行は早速席を立ち、パイク博士を先頭に歩き出した。

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