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終末後記  作者: Takahiro
2-9_アフリカ統一戦争
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外交交渉Ⅱ

第二の舞台はインドシナ連邦のシンガポールである。


アフリカ連邦共和国側の代表は陸軍中将リッベントロップ。大日本帝国側の代表は参謀総長山本中将であった。


「まず最初に申し上げておきます。直接の軍事的な支援は不可能であると」


「おや、それを最初に言ってしまうのですか」


まあこれを受け入れたら交渉は終了なのだが、リッベントロップ中将としては引き下がる訳にはいかない。


「しかし以前、欧州合衆国に艦隊を送っていたではありませんか?ならば我々にも艦隊を送れるのでは?」


「いえ。あのときはまだ余裕がありましたが、帝国は現在、アメリカ連邦攻略の最終段階に移っておりまして、そのような余裕はありません」


この方向性で交渉を進めるのは無理なようだ。


「アラブ帝国が参戦?」


「はい。アラブ帝国はそのような意思を()()()()()そうです」


本当についさっき届いた報。シャルル外務大臣が引き出した言葉だ。まあ実はアラブ帝国が断言した訳ではないのだが、そんなものは解釈次第でどうとでもなる。


「なるほど。アラブ帝国が参戦したならば考えない余地もない、こう言っておきましょう」


「ほう。覚えておきましょう」


まあ十中八九無理な話だ。アラブ帝国はそもそもやる気がないし、仮に参戦したとしても、それから考え出していては、到底間に合いはしない。


「我々から提案できることがあります」


「提案、ですか」


「はい。アフリカ連邦共和国政府の亡命ならば、受け入れられます。その準備は整っていると言ってもいいものです」


「その話を持ちかけてくるとは思っていましたよ」


なるほど亡命というのは最も現実的な選択肢ではある。将来的に捲土重来も出来るかもしれない。少なくともその可能性はゼロではない。


「ですが、残念ながら、その可能性はないと言えるでしょう」


()()()、そうなのですか。それはとても不幸なことだ」


「確かに。否定は出来ません」


山本中将もリッベントロップ中将も、アフリカ連邦共和国の惨状を共有している。例えアガトクレス大統領が望んでも、亡命というのは叶わないのだ。


両者とも政治的な妥協は出来ないが、二人の人間として同情し合うことは出来た。


「では、一応はこの結果を持ち帰りましょう」


「ええ。ではまたお会いしましょう」


大日本帝国との交渉は、実質的には何の進展もないままに終わった。


第三の舞台はグリーンランドのヌークである。アフリカ連邦共和国側の代表はヌジョマ前欧州合衆国大使、欧州合衆国側の代表はアデナウアー大統領である。


「何度も言ったでしょうに。今や我が国に他国を助けるなど叶わない」


「それは承知しております。しかしそこを何とかと。我々もまた瀕死の病人であるのです」


欧州合衆国の場合は、自国の利益云々などではなく、本当に不可能なのである。確かに、かつてヨーロッパ全域を国土とした国がグリーンランドしか領有していないとなれば、無理もない。


「アメリカへの亡命、閣下はそれをお考えですよね?」


「ほう。どうしてそれを知っているのだ?」


「申し訳ありませんが、国家機密に関わりますので」


「ははっ。そうか」


ヌジョマ大使、アフリカ連邦共和国情報部は知っている。アデナウアー大統領が最後の望みをかけて立てた最終プラン。ヨーロッパ国が干渉出来ない土地に逃げる為に、アメリカに亡命するというものだ。


はっきり言って狂った計画だが、アデナウアー大統領は本気らしい。


「その亡命先に、我が国を選んではもらえないでしょうか」


「ほう。そう来るか」


アメリカに亡命するのもアフリカに亡命するのも、狂い具合は大して変わらないだろう。


「だがアフリカは既にナチどもの影響下だ。我々が進める場所の候補にはなり得ない」


「しかし、敵国に亡命しようとするよりは、幾分マトモな提案なのではないでしょうか?」


「ほう。確かにそう言われればそう思えなくもないな」


「でしたら…」


ヌジョマ大使は交渉成功の兆しを見た。アデナウアー大統領がこのような態度を取るなど滅多にないからだ。


「だが、人に助けを求めないと生きていけないような国と、世界一、二の国力を誇る国、君ならどちらの元に駆け込みたいかね?」


「くっ、それは後者でしょうね」


「ああ。勿論君やアフリカ連邦共和国に恨みがある訳ではない。アガトクレス大統領とは仲良くやっていたしな。だがこれは戦争だ。友情など紙切れより軽い。諦めてくれ」


結局、欧州合衆国がアフリカ連邦共和国の要請に応じることはなかった。


さて、まあ予想は出来たことだが、アラブ帝国も大日本帝国も欧州合衆国もアフリカ連邦共和国を見捨てる格好となった。


そしてアガトクレス大統領はようやく覚悟を決めた。

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