リヤドにてⅩⅡ
サブストーリーです。
「よって、このような混乱を招いてしまったアラブ連合は一度解体し、新たな、より強力な共同体を造り上げねばならない!リヤド市民、及び全てのアラブ人に、私はこの是非を問う!」
サッダーム首相は演説をこう締めくくった。それも連合王宮のど真ん中での演説をだ。
その横には、サウジアラビア宰相となったファイサル公爵と名目上の国王アリー、イランの新元首(貴族議会の議長)となったメフメト侯爵が並んでいた。
シリア、サウジアラビア、イランが並べば、これに対抗出来る者は中東には最早残っていない。
さて、サッダーム首相が全国民に演説してまでも叶えたいこと。それはアラブ連合の完全な統一、アラブ国家の誕生、そして自らがその元首となることであった。
彼による情報操作は著しく、殆どのアラブ人はアラブ連合の限界を認識した筈だ。よって、サッダーム首相の提言が承認されることは明らかだった。
「ユースフ元帥、投票を妨害するものは悉く捕らえよ」
「はっ。何人たりとも逃がしません」
「頼んだ」
「しかし、我々もここまで来たのですね。閣下の野望も、もう手の届くところまで」
「ああ。それをここで邪魔される訳にはいかないな」
そして行われた国民投票。全ての投票所に多数の軍人が立ち会うという異様な雰囲気で行われた。もっとも、その甲斐か、投票へのテロ行為などはついに起こらなかった。
「10%開票で、支持率83%か。勝ったな」
そして彼と彼の計画は、圧倒的な支持率の元、承認された。
「アラブ人諸君!私はこの結果を非常に喜ばしく思う!前置きなど飛ばし、ここに宣言しよう!今日よりアラブ連合は、新たな統一国家、アラブ帝国として生まれ変わる!そして私はそのスルタンとなり、帝国に平和と繁栄をもたらそう!」
連合王宮という名は捨て、新たに「帝国皇宮」となったその場所で、彼は宣言した。
サッダーム首相は今や、スルタン・サッダームとしてアラブ帝国の独裁者となると宣言したのだ。全ての貴族、王はスルタンの臣下となり、彼があらゆる意味での最高権力者となった。
民衆が、軍が、貴族が、彼にスルタンの位に就けと言ったのだ。
「かのナポレオン3世も、こうも上手くことを運べはしなかっただろうな」
「ええ。閣下こそ、世界史に名を残すべき御仁であるのです」
彼は君主となったのだ。アラブ帝国は全て彼の意思のままに動く。しかしスルタンが何を目指しているのかは、まだ誰も知らなかった。
僕の君主趣味が爆発してますね。




